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株は、買うときより売るときのほうが難しいと感じています。買うときは配当利回りや累進配当、自己資本比率を見て決められるのに、売るときは「30%上がったから利益を確定したほうがいいのか」「20%下がったから損切りしたほうがいいのか」と迷いやすいからです。
私が決めているのは、売るのは株価が動いたときではなく、理由が変わったとき、ということです。この記事では、ウォーレン・バフェットの考え方をもとにした私の5つの売却ルールと、株価が下がっていたKDDI・ノエビア・東ソーに当てはめて判定した結果を記録します。
※この記事は私の保有状況と考えの紹介であり、特定の会社の売買をすすめるものではありません。当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けていません。株価・指標は2026年8月21日時点のものです。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
売り時を決められないのは、株価だけを見ているから
株価は毎日動き、感情や雰囲気でも動きます。上がれば「もっと上がるかも」、下がれば「もっと下がるかも」「戻るかも」。株価を基準にしている限り、判断の軸がずっと揺れ続けます。
ウォーレン・バフェットは、株は紙切れではなく企業の一部を持っていることだ、という考え方を大事にしています。私はこの軸を、50代の高配当株投資に落とし込んで、次の5つのルールにしました。
ルール1:減配・無配。ただし「構造的か、一時的か」を見る
配当を受け取る私にとって、いちばんわかりやすいサインです。ただし、減配したらすぐ売る、ではありません。業界全体が縮んでいて利益が戻りにくいなら構造的な問題。災害や一時的な損失処理で今期だけ減配し、翌期には戻る見込みがあるなら一時的です。
私の基準は減配しないことなので、減配した時点でまず要注意に入れます。売るかどうかは、決算説明資料で会社自身がどう説明しているかを読んでから決めます。財務の安定した会社でも、リーマン・ショックのような大きな下落のときに一度だけ減配することはあるからです。
ルール2:投資した理由が崩れた
私にとって、いちばん大事なルールです。私は、配当利回り3%以上、PBR2倍以下、自己資本比率40%以上、流動比率200%以上、累進配当か、本業で稼げているかなどを確かめてから投資しています。
この「投資した理由」が崩れたら、売りを考えるサインです。株価が上がったか下がったかは関係ありません。理由がまだ生きているなら持ち、消えたなら売る。逆に言えば、なんとなく良さそうで買った株は、売り時もずっとわかりません。買うときに理由を言葉にしておくことが、売り時を決める理由にもなると考えています。
ルール3:大きな不祥事
粉飾決算、重大なデータの改ざん、経営陣ぐるみの不正。これは財務の数字に出てこない「企業の質」の問題で、数字が良くてもその数字自体が信用できなくなります。ウォーレン・バフェットは、評判を築くには20年かかるが壊すのは5分だ、という言葉を残しています。
ただし私は、一部の社員の不祥事と、経営そのものの不正は分けて考えています。会社の対応を見て、それでも信用できないなら手放すことを考えます。
ルール4:より良い乗り換え先がある
今の会社が悪いわけではないパターンです。たとえばA社を利回り3.8%で持っていて、同じくらい財務が健全なB社が相場の下落で利回り5%になったなら、乗り換えると同じお金で受け取る配当が増えます。ただし、売るときには利益に20.315%の税金がかかります。税金を払ってでも乗り換える価値があるかを確かめるようにしています。
ルール5:大きく値上がりした。「何%上がったか」より「配当何年分か」
高配当株が2倍、3倍になったとき、私は「何%上がったか」ではなく、「値上がり益は配当の何年分か」を見ます。1,000円で買って配当50円の株が3,000円になったら、値上がり益2,000円は配当40年分です。50代の私にとって、40年分の配当を今受け取れるなら、売却を真剣に考える理由になります。
そして必ず税引き後で考えます。100万円が300万円になった場合、含み益200万円に約40万6,300円の税金がかかり、利益の手取りは約159万円です。この159万円を今受け取るか、年5万円の配当と将来の増配を受け取り続けるか。正解はありませんが、「何%上がった」で決めるのとは、判断の中身が変わると思っています。
下がっていた3社に、5つのルールを当てはめた結果
KDDI(今年2回の不祥事)→ 持つ
KDDIでは今年、2つの大きなニュースがありました。2月に、子会社のビッグローブとその子会社で広告代理事業の架空取引が発覚し、特別調査委員会の報告では売上の過大計上は約2,461億円とされました。6月には、KDDIがほかのプロバイダーに提供しているメールシステムが不正アクセスを受け、最大1,422万件のメールアドレスとパスワードが漏えいした可能性があると発表されています。
私が最初に見たのは、本体の経営陣ぐるみの不正なのか、子会社で起きたことなのかです。架空取引は子会社の広告代理事業で起き、通信という本業で起きたことではありません。会社は特別調査委員会を置いて3月末に報告書を公表し、再発防止策を示し、役員の辞任や報酬の返上も出ています。隠し続けていたなら売却を考えますが、自ら公表し、調べ、責任を取った。私の中では「要注意、ただし売る理由には至らない」です。メールの件も、auやUQの本体のメールは別の仕組みで、原因は外部ソフトの未知の脆弱性でした。
配当は、2010年度の1株10.83円(株式分割を調整した値)から、2026年3月期は80円、来期予想は84円と、一度も減配していません。配当性向は45%前後で無理をしていません。自己資本比率は2019年3月期の57.1%から26.6%まで下がっていますが、この間に総資産は7.3兆円から19.1兆円に増えました。auじぶん銀行などの金融事業やローソンを連結したためで、銀行の預金は会計上「負債」に入ります。通信事業の財務が急に悪くなったわけではないと私は見ています。投資した理由は崩れていないので、持ち続けます。
ノエビアホールディングス(株価が下がっていた)→ 持つ
化粧品のノエビアホールディングスは、6月に4,200円まで下がり、7月末に5,000円近くまで戻して、この時点で4,875円でした。6月に耐えられずに売っていたら、いちばん安いところで手放していたことになります。
配当は2011年9月期の36円から2025年9月期は230円。14年間一度も減配していません。今期は230円据え置きの予想で、増配は止まりましたが減配ではありません。予想配当利回りは4.72%、自己資本比率は70.3%です。PBRは3.41倍と私の基準の2倍を超えていますが、利益のほとんどを配当で返しているために自己資本が積み上がりにくく、1株純資産が1,430円ほどにとどまっているためです。私はこれを悪い意味での割高とは見ていません。
いちばん注意しているのは配当性向で、ここ数年は96〜98%、2020年・2021年は100%を超えていました。利益が大きく落ちれば減配の可能性はあるので、要注意には入れています。それでも自己資本比率70%、利益剰余金441億円の会社が、1〜2年の利益のへこみで配当を切る必要はないと考えています。売る理由がないのに売るのは「下がったのが嫌だから」で、それは投資ではなく気分だと私は思っています。
東ソー(下がっている最中)→ 持つ
化学の東ソーは、6月16日に年初来高値3,086円をつけたあと、8月21日の終値は2,656円と、2か月で約14%下がりました。
配当は2010年3月期の12円から2025年3月期は100円。今期・来期も100円の予想で据え置きが続いていますが、一度も減配していません。2026年3月期は配当317億円に加えて250億円の自社株買いも行い、株主還元の姿勢は変わっていません。自己資本比率は2009年の20%から17年かけて59%まで上がり、利益剰余金は6,925億円です。
気になる点は2つあります。2026年3月期の配当性向は75.5%と、前の年の54.9%から上がりました。化学の市況が悪いためです。もう一つは有利子負債が増えていることで、これは次の決算で確かめます。それでも、1〜2年の市況悪化で配当100円を切る必要があるかというと、私はないと見ています。原料や製品の市況で利益が上下する会社なので、株価の上下も想定の範囲内です。
まとめ:売るのは、株価が動いたときではなく、理由が変わったとき
- 減配・無配(構造的か、一時的か)
- 投資した理由が崩れた
- 大きな不祥事(会社の対応まで見る)
- より良い乗り換え先がある(税引き後で比べる)
- 大きく値上がりした(配当何年分かで考える)
私はこれまで、損切りをしたことがありません。買うときに、配当利回り、PBR、自己資本比率、流動比率、減配の有無といった基準を通った会社しか買っていないので、株価が下がっても売る理由が出てこないからです。「大企業だから」は、私にとって投資の理由になりません。もちろん、理由が変わったら売ります。迷ったときは、全部売るか全部持つかではなく、半分だけ売るという選び方もあると思っています。
繰り返しになりますが、この記事は私の保有状況の紹介であり、ここに挙げた会社の売買をすすめるものではありません。
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