※本記事にはプロモーション(PR)が含まれます。
こんにちは、バフェットかおるです。
先に結論を書きます。私はジャックス(8584)を口座に持ち続けますが、この決算を読んだ時点では追加で買い増すのを見送りました。配当利回りとPBRは私の基準をクリアしているのに、配当を払い続ける力のほうに黄信号が灯っていたからです。
2026年3月期は増収減益でした。そして来期(2027年3月期)予想が経常利益110億円、前期比45.7%減という重い数字でした。来期予想の純利益100億円に対して年間200円の配当を維持すると、配当性向は89.5%になります。
この記事は、2026年3月期の決算短信と四季報、30年分のチャートを自分で読んで、私がどう受け止めてどう決めたかの記録です。私の投資はウォーレン・バフェットのやり方を真似しているつもりで、決算は自分で読む、わからないものは買わない、と決めています。数字は2026年5月時点のものです。
※本記事は私個人の考えと調べたことの紹介であり、特定の銘柄・商品の購入を推奨するものではありません。当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けていません。数字は2026年5月時点のもので、その後変わります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
2026年3月期の通期実績 ── 増収減益での着地
着地は会社計画どおりでした。営業収益1,923億円(前期比0.7%増)、経常利益202.58億円(同21.4%減)、純利益153.14億円(同17.8%減)。増収減益という構図は変わりませんでした。
1株あたり利益は前期536円から当期380円へと大きく下がっています。ここで私が引っかかったのが、低下幅です。純利益の減少は17.8%なのに、EPSは29%も落ちています。
これは2つの要因が重なった結果でした。ひとつは純利益そのものの減少、もうひとつは増資による発行済株式数の増加です。EPSは純利益を株式数で割って出すので、利益が減ったうえに分母が増えたことで、低下幅が純利益の減少率より大きくなりました。主因は後述する増資による株式数増加ですが、利益減少も合わせて効いています。
私が良いと受け止めた4つの点
重い話の前に、素直に良かったところから並べます。
- 海外事業の損失が縮小:海外セグメント損失は前期36.30億円から当期24.65億円へと約12億円改善しました。インドネシアの不振は続いていますが、ベトナムの四輪需要拡大やカンボジアの営業エリア拡大が効き、不採算債権の取り扱いを停止する「量から質への転換」が止血の方向に働いています。
- 国内事業の取扱高は底堅い:クレジット事業は住宅リフォーム・産業用ソーラー・オートローンが伸び、ファイナンス事業(投資用マンション保証・銀行個人ローン保証)も堅調でした。連結取扱高は5兆8,285億円(前期比2.2%増)です。
- 財務体質はむしろ強化:自己資本比率は前期6.5%から当期7.9%へ改善しました。増資で資本が465億円増えたためです。営業キャッシュフローも前期の△451億円から当期+231億円へ黒字転換しました。
- 配当の下支えはある:次期も年間200円維持の予想です。中期計画では配当政策の基本方針として、DOE3.0%または配当性向40%のいずれか高い方、かつ1株200円以上の安定還元を掲げています。
私が重いと受け止めた4つの材料
1. 来期予想が45.7%減益
これが今回いちばん重い材料でした。来期予想は経常利益110億円(前期比45.7%減)、純利益100億円(同34.7%減)。営業利益も46.1%減です。当期も21%減益だったのに、来期はさらにそこから半減に近い落ち込みになります。
2. 中期経営計画の早期見直し
会社は中期経営計画を、わずか1年で見直しました。短信には、インドネシアにおける業績回復の遅れなどが中期経営計画の2年目以降の見通しに影響を与えたことから、計画の一部見直しを行ったと書かれています。
これは計画の取り下げではなく、一部見直しです。ただ、従来の中期計画では2027年度に経常利益310億円という目標が掲げられていました。来期予想が経常利益110億円ですから、計画とのギャップは極めて大きく、従来目標の達成は相当に難しい状況になった、と私は受け止めています。
3. 金融費用の急増という構造的な逆風
損益計算書を細かく見ると、金融費用は前期250.44億円から当期315.54億円へと65億円増えています。内訳は借入金利息が213億円から258億円、コマーシャルペーパー利息が13億円から28億円です。
日銀の利上げで調達金利が上がっているのが直撃しています。信販・ファイナンス業はお金を借りて貸す事業なので、金利上昇局面は構造的な逆風です。これは一過性ではなく、しばらく続く問題だと思います。
4. 増資による1株価値の希薄化
当期、第三者割当方式で約998万株の新株を発行し、発行済株式数が3,508万株から4,506万株へと28%増えました。資本は厚くなりましたが、1株あたりの価値は薄まりました。1株純資産は前期7,142円から当期6,625円へ低下しています。
配当性向も35.4%から52.6%へ上昇しました。利益が減るなかで配当を維持しているので、還元の余力という点では以前より楽ではなくなっています。
会社が下がり続けている理由を4つに整理した
決算短信を読んだうえで、株価が下がっている理由を整理し直しました。
根本にあるのは「減益が止まらない」と市場が判断していることだと思います。当期21%減益、来期さらに46%減益(経常)という予想は、業績の底がまだ見えないというメッセージになります。しかもその原因が、当初は成長の柱だったはずの海外事業(インドネシア)の不振と、日銀利上げによる金融費用増という、どちらも短期では解決しにくい構造要因でした。
加えて、中期計画を1年で見直したことは、経営の先行き見通しの信頼性に関わります。再成長を掲げてスタートした計画が初年度で揺らいだのですから、市場が中期目標を額面どおり受け取らなくなるのは自然な反応だと思います。
そして増資でEPSとBPSが低下したことで、PBR0.62倍という「割安」の数字も、見かけほど割安ではない可能性が出てきます。来期予想EPS223円で株価4,120円前後だと、来期予想PERは約18倍まで跳ね上がります。減益を織り込んだ割安というより、利益が縮小して結果的に割高になりつつある水準、という見方もできます。
- 減益トレンドの加速と、底の見えなさ
- 中期計画の早期見直しによる、経営見通しへの不信
- 金利上昇という構造的な逆風
- 増資による1株価値の希薄化
この4つが重なっていました。日本市場全体の地合いではなく、ジャックス固有の問題だと私は受け止めています。
利益・配当・キャッシュフロー・財務を並べて見る
利益とEPS ── ピークアウトが鮮明
ここが私にはいちばん大事なところでした。利益の流れを並べると物語が見えます。
経常利益は2022年268億円、2023年318億円、2024年331億円とピークをつけ、そこから2025年258億円、2026年203億円、2027年予想110億円へと、3年連続で坂を下っています。EPSはもっと劇的で、2024年685円というピークから2027年予想223円へ、3年で3分の1になる見通しです。ROEも2024年10.32%から2027年予想3.37%へ急低下しています。
2022〜2024年の好業績はコロナ後の特需的な「山」で、今はその反動で「谷」に向かっている。これが今のジャックスの姿だと思います。
配当 ── 12年続いた増配が止まった
ジャックスは2012年の50円から2024年の220円まで連続増配してきた、立派な増配の会社でした。ところが2025年に220円から190円へ減配しています。2024年の220円には記念配当10円が含まれるので普通配当ベースでは210円から190円ですが、いずれにせよ12年続いた増配が止まり、減配に転じたのは重い事実です。
そして配当性向です。長年30%台前半で安定していたのが、2026年は52.6%へ急上昇しました。来期予想の200円を維持すると、純利益100億円に対して配当総額は約89.5億円、配当性向は89.5%(短信2ページに明記)になります。利益のほぼ全額を配当に回す計算で、持続可能な水準とは言いにくいと私は見ています。
キャッシュフロー ── 信販業の構造として読む
営業CFは2014年から2024年まで10年以上マイナスが続き、2025年は△452億円、2026年は+231億円です。一見すると恐ろしい数字ですが、これは信販業の構造でした。事業を拡大して貸付債権(割賦売掛金)が増えると、その分の資金が出ていくため営業CFはマイナスになり、財務CF(借入)で埋めます。
財務 ── 数少ない明るい材料
自己資本比率は2026年7.9%で、過去最高水準まで改善しました。有利子負債比率も648%へ低下しています。増資で資本を厚くした成果です。ただしBPSは2025年7,142円から2026年6,625円へ低下しています。会社全体の安全性は増したけれど、1株あたりの価値は薄まった、という二面性がありました。
私の基準と照合してみると
私が会社を見るときに使っている基準に当てはめると、こうなりました。
| 項目 | 私の基準 | ジャックス(2026年3月期確定) | 判定 |
|---|---|---|---|
| 配当利回り | 3.75%以上 | 約4.9%(株価4,120円・配当200円) | クリア |
| PBR | 2倍以下 | 約0.62倍 | クリア |
| 自己資本比率 | 50%以上 | 7.9% | 信販業のため適用除外 |
| 流動比率 | 200%以上 | 指標として機能しない | 適用除外 |
信販・ファイナンス業に自己資本比率50%の基準は構造的に当てはまりません。バランスシートの大半が割賦売掛金と有利子負債で占められるため、事業会社のような流動比率も機能しません。自己資本比率が一桁台なのは、この業種では構造的に正常です。
問題は、配当利回りとPBRという2つの数字がクリアに見えても、その裏側で減益が続き、配当性向が上がり、来期さらに利益が減るという事実があることでした。表面の利回りとPBRだけを見ると判断を誤りやすい会社になっている、というのが私の受け止めです。
私が真似したいウォーレン・バフェットのやり方は「割安かつ財務が健全で、配当を安定して払い続けられる会社を買う」でした。今のジャックスは、利回りとPBRはクリアしても、配当を安定して払い続けられるかという肝心のところに黄信号が灯っています。
追加投資をどう考えたか
慎重に見るべき最大の点は、減配の可能性が以前より明確に高まったことです。配当性向89.5%は利益のほぼ全額を配当に回す計算で、もし業績がさらに悪化すれば、2025年3月期に実際に減配した会社ですから、減配の現実味があります。高配当の会社として持つなら、配当が削られるかもしれないというリスクは正面から見ておきたいと思いました。
反対に、前向きに見る材料もあります。海外損失は縮小傾向にあり、三菱UFJ銀行との資本業務提携という後ろ盾があります。国内事業の取扱高は底堅い。来期で膿を出し切り、金利環境が落ち着けば再び利益が戻る、という筋書きに賭けるなら、悪材料が出尽くした今が仕込み場という見方も成り立ちます。実際、中期計画の見直しと弱い来期予想が決算で出たことで、当面の悪材料はおおむね開示された状態ではありました。
そのうえで私が決めたのは、2026年5月20日の決算説明会でインドネシア事業と中期計画見直しの中身を確認してから判断する、ということでした。循環する会社は谷の底で買えれば大きいですが、このときはまだ底が見えていませんでした。
30年チャートで見る、3つの時期
30年の月足チャートを見ると、ジャックスの株価は2,000円から6,000円のレンジを20年以上行ったり来たりしている、循環する会社だとわかります。2023〜2024年に約6,000円の天井をつけ、そこから下落トレンドに入りました。2026年5月時点では移動平均線も下向きで、典型的な下落局面の途中です。
2005〜2007年 ── 信販バブルと過払い金ショック
2005〜2006年にかけて株価は約6,400円まで急騰し、その後2008年にかけて約1,000円まで下げました。6分の1以下です。30年チャートでいちばん派手な山と谷でした。
急騰したのは、2000年代半ばに消費者金融・信販業界全体がブームだったからです。低金利で借入コストが安く、キャッシングが高い金利で稼げる商売と見なされ、業界全体に買いが集まりました。
そこから急落した理由が、私にはいちばん勉強になりました。2つの出来事が重なっています。
ひとつ目は過払い金問題です。2006年に最高裁判所がグレーゾーン金利(出資法と利息制限法の間の金利帯)について重要な判断を下し、消費者が要求すれば取り過ぎた利息を過去に遡って返還する義務があるという流れが確定しました。業界全体が巨額の返還リスクを抱え、信販の会社は総崩れになりました。
ふたつ目は貸金業法の改正(2006年成立・2010年完全施行)です。グレーゾーン金利が廃止され、上限金利が引き下げられ、総量規制(年収の3分の1までしか貸せない)が導入されました。キャッシングという儲かる商売の収益モデルそのものが、法律で作り替えられたわけです。
そして仕上げが2008年のリーマンショックでした。景気が冷え込み、貸し倒れが増え、とどめを刺されています。2008年3月期は経常利益△84億円、純利益△97.6億円の赤字決算で、ROEもROAも赤字。これが株価1,000円という大底につながりました。
| 指標 | 2008年3月期(暴落が完了した期) |
|---|---|
| EPS(稼ぐ力) | 赤字のため算出不能 |
| ROE | 赤字 |
| 経常利益 | △84億円 |
| 純利益 | △97.6億円 |
| 自己資本比率 | 3.57% |
| PER・PBR | 赤字決算のためPERは算出不能/PBRは純資産前後 |
なお、流動比率は信販業のバランスシート構造上、この種の指標表には載りません。割賦売掛金と有利子負債が大半を占めるため、事業会社のような流動比率は機能しないからです。
2021〜2023年 ── コロナ後の特需と過去最高益
株価は2021年の約2,000円台から2023〜2024年に約6,000円へと、約3倍に上昇しました。2回目の大きな山です。
最大の理由は、業績が文句なしの絶好調だったことでした。経常利益は2021年165億円、2022年268億円、2023年318億円、2024年331億円と右肩上がりで、2024年3月期は純利益238億円という過去最高益を記録しています(四季報にも最高純益として記載があります)。
背景には追い風が重なっていました。コロナ禍が落ち着いて自動車販売が回復しオートローンが伸びたこと、住宅リフォーム・太陽光関連のショッピングクレジットが好調だったこと。さらに2006年の過払い金ショックから十数年が経ち、過払い金返還がほぼ一巡して過去の重荷が消えたこと。ジャックスは上限金利の引き下げにいち早く対応したため、過払い金返還請求問題の影響が比較的軽微だったという構造的な強みもありました。
2026年5月時点 ── ピークアウトの最中
決算発表(2026年5月15日)を受けて売られ、このとき株価は3,775円、当日は−280円(−6.91%)の急落でした。予想配当利回りは5.3%、実績PBRは0.58倍。数字だけ見れば「超割安・高配当」です。
3つの時期を並べて見えたこと
EPSの流れを一本の線で並べると、物語がはっきり見えます。2008年は赤字(暴落の底)、2021〜2024年は340円から685円へ右肩上がり(株価3倍)、そして2026年380円から2027年予想223円(坂を下る途中)。
ここから私が受け取った教訓は2つです。
ひとつ目。ジャックスは循環する会社だということ。30年で3,000円の谷と6,000円の山を何度も繰り返しています。三菱UFJ(8306)のような安定して増配を続ける会社とは性質が違います。なお、この株価変動はいわゆる景気循環というより、金利動向と信用コスト(貸し倒れ)に強く左右される性質のものだと私は理解しています。
ふたつ目。今のPBR0.57倍・利回り5.3%という数字は、2022〜2023年の「EPSが伸びていた時の割安」とは意味が違うということ。2022年はEPS528円が伸びていく途中の割安でしたが、今の0.57倍はEPSが685円から223円へ縮んでいく途中の安さです。同じ割安でも、片方は追い風参考、片方は向かい風参考。表面の利回りだけを見て飛びつくと、2007年に高値で買った人と同じことになりかねません。
ウォーレン・バフェットが危機のときに買った2つの事例
ここで、私がお手本にしているウォーレン・バフェットが、みんなが恐怖で売っている時に良い会社を割安で買った実例を、確実に確かめられる2つに絞って並べてみます。
リーマンショック後のゴールドマン・サックス(2008年9月)
2008年9月15日、米投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけに世界規模の金融危機が起きました。金融市場は大手投資銀行の連鎖破綻に怯え、銀行・証券が総崩れになりました。この時期、MSCI世界株指数のドローダウンは約60%に達しています。
2008年9月24日、ウォーレン・バフェットはバークシャー・ハサウェイを通じてゴールドマン・サックスに50億ドルの投資を行いました。大事なのはその条件です。配当利回り10%の優先株50億ドル分を引き受け、さらに1株115ドルで50億ドル分の普通株を買えるワラント(新株予約権)も得ています。
当時の金融セクターは、米銀全体のEPSが急減して赤字が続出し、ROEも軒並み低下してマイナス圏の会社が多い状況でした。ゴールドマンは投資銀行のなかでは傷が比較的浅かった、という位置づけです。
「永久保有」とされたウェルズ・ファーゴ
もうひとつは、ウェルズ・ファーゴです。投資銀行ではなく、預金を集めて企業融資や住宅ローンを行う伝統的な商業銀行で、ハイリスクな投資をせず、しっかり審査して担保を確保して融資する堅実な経営でした。ウォーレン・バフェットはこの会社を気に入り、唯一の永久保有の会社に認定していたと言われます。
金融危機で多くの銀行が倒れそうになるなか、ウェルズ・ファーゴは普段から慎重な経営をしていた分、他の銀行より体力を温存していました。当時の姿は、総資産の約半分が貸出金、調達の約7割が預金、約2割が借入金という典型的なリテール銀行のバランスシートで、自己資本比率は約10%、PBRは1.0倍前後でした。2009年に減配はしましたが、以降は増配を続けています。
私がここで学んだのは、投資銀行(ゴールドマンやモルガン・スタンレーなど)は金融危機のたびに業績が大きく悪化する事業である一方、商業銀行は預金者の資金で融資を行うという違いです。ウォーレン・バフェットは「危機に弱い投資銀行」と「危機に強い堅実な商業銀行」をはっきり区別していました。
2つの事例から見える「型」
私が読み取った型は3つでした。
- みんなが恐怖で投げ売っている時に動く:ゴールドマンへの投資はリーマン破綻のわずか9日後でした。2008年10月のニューヨーク・タイムズ寄稿では「Buy American. I Am.」と呼びかけ、市場全体が金融システム崩壊の恐怖に震えるなかで、割安な会社を仕込む機会だと主張しています。
- 悪材料が一時的か、構造的かを見極める:ウェルズ・ファーゴでは、危機に弱い投資銀行と危機に強い商業銀行を明確に区別しました。
- 潤沢な現金を持っているから動ける:リーマンショック時、バークシャーが持っていた現金は312億ドルでした。好条件を提示されてすぐ応じられたのは、待機資金があったからです。現金を持っておくことの大切さを、私はここから教わりました。
私が見た、この事例とジャックスの違い
ここは正直に書きます。見逃してはいけない違いがありました。
バフェットが買った2社は、いずれも業界トップ級か最も堅実な経営の会社でした。さらに彼は普通株を市場で買ったのではなく、配当10%の優先株と割安なワラントという、個人投資家にはまず手に入らない条件を引き出しています。これは「危機の時に買う」というより「危機の時に最強の会社から特別な条件を引き出す」取引でした。
一方のジャックスは、信販業界で三菱UFJニコス・オリコと並ぶ存在ではありますが業界1位ではありません。そして悪材料(海外与信の悪化・金利上昇・中期計画の早期見直し)が一時的なのか構造的なのか、この時点ではまだ見極めきれていませんでした。来期は配当性向89.5%という水準でもあります。同じ型をそのまま当てはめられる場面ではない、と私は考えました。
JALの倒産と重ねて考えたこと
ここから先は、私自身の話が混じります。私は元JALの国際線客室乗務員でした。だから業績の悪い会社を持ち続けることについては、人よりも怖さを知っているつもりです。
2010年1月19日という日
2010年1月19日、日本航空は会社更生法の適用を申請しました。負債総額は約2兆3,200億円。当時、日本の製造業や流通業を含めても戦後最大規模の企業倒産でした。
更生手続きにおいて、株式は100%減資されました。JAL株を持っていた株主の資産は、紙くずになりました。これが、私が繰り返しお伝えしている「1社に集中させることの怖さ」の原点です。
倒産の背景にあった3つの慢性的な課題
破綻は突発的な経営判断の失敗ではありませんでした。背後には長年積み重なった、産業構造・組織文化・財務体質の慢性的な課題がありました。
- 高コスト体質:平均給与水準は他産業の大企業を大きく上回り、退職給付債務は2009年度末で約3,300億円に達していました。国営時代の名残が、民営化後も企業文化として残り続けていました。
- 不採算路線を切れない構造:JAL自身が設置した第三者機関であるコンプライアンス調査委員会の報告書にも、政治との距離の問題が記されています。
- 重い財務体質:借入金・社債・リース・退職給付債務が重くのしかかり、実質的な債務超過に陥っていました。
「誰も何もしない」の正体
私が現場でいちばん痛感したのは、「誰も何もしない」ということでした。最後は国が何とかしてくれる、という空気です。半官半民の国策会社という生い立ちが、経営陣からも社員からも当事者意識を奪っていた、と私は受け止めています。これがモラルハザードと呼ばれるものだったのだと、後になって知りました。
倒産の引き金をどう見るか
引き金については、2つの見方があります。
ひとつは、長年の政官民の癒着が破綻の根本原因であり、政権交代で政治との距離にメスが入ったからこそ、ようやく抜本的な改革が可能になったという見方です。会社更生法は、会社財産の管理処分権や事業の遂行権を旧経営陣から奪い、裁判所が選任した更生管財人に全権を与えます。これにより、政治家、官僚、労働組合、銀行といった強力な利害関係者の過剰な介入を排除し、透明性の高い形で事業構造改革を実行できるようになりました。
もうひとつは、当時の航空行政当局者の見方です。元航空局長は、自民党政権下でもJALは再建に動いていた(路線縮小・人員削減計画の提出、デルタ航空との提携交渉開始など)が、民主党政権が有識者会議を解散させ、用意されていた再建策を否定した結果、会社更生法という法的整理に至ったと述べています。つまり、破綻させずに済んだ可能性もあったという見方です。
どちらが正しいと断定することは、私にはできません。ただ、法的整理という強い手段でなければ政治・労組・銀行のしがらみを断ち切れなかった、という事実は重いと感じています。
倒産が「血を流す改革」を可能にした
皮肉なことに、倒産という最悪の事態が、長年できなかった改革を一気に可能にしました。
会社更生法の適用により、JALは人員、機材、路線を大幅に削減し、金融機関には87.5%の債権放棄を求め、株式も100%減資が実施されました。従業員数は約1万6,000人の削減(グループ全体で約3割)、国内外合わせて49路線を廃止、約5,200億円の債務免除を受けています。2010年3月期に1,337億円の営業赤字だったJALは、2012年3月期に2,049億円の営業黒字を計上しました。
ただ、忘れたくないことがあります。このV字回復の裏で、100%減資により株主は資産を失い、約1万6,000人が職を失いました。会社は生き残っても、株主と働く人は戻ってきません。
JALとジャックスは何が違うのか
稼ぐ力の違い
最大の違いを先に書きます。JALは破綻直前、稼ぐ力そのものが消えていました。ジャックスは今、稼ぐ力が減っているけれど、まだ消えてはいません。この「ゼロかプラスか」の差は、見た目以上に大きいと私は思っています。
JALは2010年3月期に1,337億円の営業赤字で、構造そのものが赤字を生む状態でした。ジャックスは減益が続いているとはいえ黒字を保ち、国内の本業は底堅く、特定の逆風(海外与信と金利)で利益が削られている状態です。
リスクの種類の違い
ジャックスで私が想定しているリスクは、減配と株価下落です。これは、保有している株がゼロになるリスクとは段違いに軽いものです。
財務の安全性についても違いがあります。JALは破綻直前、2008年度末の自己資本比率10.0%で、実質的な債務超過に陥っていました。ジャックスは2026年3月期で自己資本比率7.9%と過去最高水準まで改善し、増資で資本を465億円積み増しています。
数字だけ見ると「JALの10%よりジャックスの7.9%のほうが低いではないか」と思えますが、JAL(事業会社)とジャックス(信販業)ではバランスシートの性質が違うため、単純には比べられません。JALの問題は数字の低さそのものより実質債務超過だったこと、ジャックスはそこには陥っていないことが、本質的な違いだと受け止めています。
加えて、ジャックスには三菱UFJ銀行との資本業務提携という後ろ盾があります。JALにも「国がついている」という後ろ盾があったではないか、と思われるかもしれません。でも、ここに見逃せない違いがありました。JALの国の支援は、不採算路線を維持させる代わりの支援であり、むしろ赤字を生む構造の一部でした。ジャックスのMUFGとの関係は、資金調達や信用面で事業を支える提携です。同じ後ろ盾でも、性質が逆だと思います。
組織の違い
JALで私がいちばん痛感した「誰も何もしない」という点でも、ジャックスは構造的に違います。民間企業として競争のなかにあり、決算のたびに市場の評価にさらされています。
実際、ジャックスは前期に220円から190円と減配を実行し、不採算の海外債権の取り扱いを停止し、中期計画を1年で見直しました。どれも喜ばしいニュースではありませんが、裏を返せば経営が現実を直視して手を打っている証拠です。赤字を垂れ流しながら誰も何もしない状態とは違います。
一枚の表で並べると
| 観点 | JAL(破綻直前) | ジャックス(2026年5月時点) |
|---|---|---|
| 稼ぐ力(利益) | 営業赤字・純損失。ROEマイナス | 黒字維持。ROE5.16%→来期予想3.37% |
| 稼ぐ力の質 | 構造そのものが赤字を生む | 国内の本業は底堅い。特定の逆風で減益 |
| 最大リスク | 倒産=株式100%減資(実際に発生) | 減配・株価下落(ゼロにはなりにくい) |
| 財務 | 実質債務超過 | 債務超過ではない。自己資本は過去最高水準 |
| 後ろ盾 | 国(赤字構造の一部) | MUFG(事業を支える提携) |
| 組織 | 誰も動かない状態 | 民間企業。減配・計画見直しなど現実に手を打つ |
私がどう判断したか
正直に書きます。JALとジャックスは「業績が悪い会社」という表面は似て見えますが、中身はまったく違うものでした。JALは稼ぐ力がゼロになり、構造が傷み、誰も動かず、倒産しました。ジャックスは稼ぐ力が減ってはいるものの黒字を保ち、本業の幹は生きていて、経営は現実に手を打っています。
ですので「ジャックスを持ち続けるのは、JAL株を持ち続けたのと同じことでは」という不安は、私のなかでは消えました。リスクの種類が段違いです。
ただ、ここもフェアに書きます。JALの教訓の本質は「倒産するかどうか」ではなく「数字の危険信号を見て見ぬふりをしない」ことでした。ジャックスは倒産の心配は小さいですが、減益トレンド・配当性向89.5%・中期計画の早期見直しという危険信号は確かに出ています。
だから私は、持っている分は売らずに配当を受け取りながら、買い増しは見送り、決算説明会と次の四半期決算で、この危険信号が一時的なのか構造的なのかを見極め続けることにしました。これは私の保有状況と考えの紹介であり、どなたかに買う・売るをおすすめするものではありません。
まとめ
- 2026年3月期は営業収益1,923億円(0.7%増)、経常利益202.58億円(21.4%減)の増収減益
- 来期予想は経常利益110億円(45.7%減)。配当200円を維持すると配当性向89.5%になる
- 海外損失の縮小、国内取扱高の底堅さ、自己資本比率7.9%への改善は良い材料
- 金融費用65億円増と増資による希薄化は、短期では解けない逆風
- 30年チャートでは循環する会社。今の割安は「EPSが縮む途中の安さ」
- 私は保有は続け、買い増しは決算説明会の内容を確認してから判断することにした
あわせて読みたい関連記事
- ジャックスの配当金を全公開|359株・投資130万円と、IRに聞いた配当方針【2026年9月時点】
- ジャックスがリーマンショックでどんな打撃を受け、どう立て直したか
- ウォーレンバフェットが好む割安で放置されている銘柄「ジャックス」「サンゲツ」
📌 無料でお配りしているもの
高配当株で資産づくりを始めるなら、まずこの2つの無料ツールが近道です。
- ✅ 【完全無料公開】高配当株・銘柄選びチェックリスト ― 失敗しない銘柄選びの基準を1枚に整理しました。
- 📊 【無料配布】高配当株ポートフォリオ管理シート ― 保有株と配当金を「見える化」して、資産づくりを継続できます。
50代から始めても、60代、70代で「あの時始めてよかった」と思える日が来ると、私は思っています。私は、買ったら売らないと決めました。配当金を信じて持ち続ける、というやり方です。
私はYouTubeもやっています。毎日夜9時からライブ配信をしていますので、よろしければ遊びに来てください。チャンネル登録はこちらから → https://www.youtube.com/@buffettkaoru
決算説明資料を読んでから1株だけ買ってみるために【PR】
※このセクションには広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。当ブログ経由でお申し込みいただいても、あなたの費用が増えることはありません。
ジャックスのように判断を保留した会社は、私はまず1株だけ持って、送られてくる資料と次の決算を読むようにしています。いきなりまとまった金額を入れずにこういう付き合い方ができるのは、次の2つがどちらも単元未満株に対応しているからでした。
・SBI証券|単元未満株「S株」に対応。日本株も投資信託も1つの口座でまとめられます。
▶ SBI証券の公式サイトを見る
・楽天証券のNISA|NISA口座のページです。取扱商品や手数料、ポイントの条件を、ほかの会社と見比べたいときに。
▶ 楽天証券のNISAページを見る
※手数料・キャンペーンの内容や条件は変更されることがあります。必ず各社の公式サイトで最新の情報をご確認ください。当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けておらず、特定の証券会社・金融商品の利用を推奨するものではありません。口座開設および投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
それでは、またお会いしましょう。バフェットかおるでした。


コメント