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「持株会の株が集中投資になると聞いて不安になりました。私はほとんど持株会で投資していて、今は株価も上がっています。でも、自分もそこで働いています。大手で上場もしているし大丈夫だと思っていたのですが、働く力も、お金も、人とのつながりも、全部一社に集中しています」。こんなご質問をいただきました。
この方は、30年前の私とほとんど同じです。私は日本航空で約30年働き、現役の社員として2010年の経営破綻を経験しました。結論から書くと、その不安は正しいと思います。ただ、「持株会をやめる」かどうかではなく、老後の資産の何割を勤務先1社に置くのかを考えることが大事だと、私は考えています。
※この記事は私の経験と考えの紹介であり、特定の会社への投資や持株会への加入・退会をすすめるものではありません。当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けていません。内容は2026年8月時点のものです。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
持株会とは:会社が用意する、自社株の積み立て
持株会は、会社が用意してくれる「自社株専用の積み立て」のようなものです。毎月のお給料から決めた金額が天引きされ、みんなのお金をまとめて自社株を買い、自分の持ち分として積み上がっていきます。100株を買うお金がなくても、毎月1万円などの定額で少しずつ買えるのが特徴です。
最大の得は「奨励金」
会社によっては、持株会で自社株を買うと、会社がお金を足してくれます。これが奨励金です。たとえば奨励金が10%なら、1万円を出すと1万1,000円分の株が買えます。年12万円なら13万2,000円分、10年で120万円なら132万円分です(株価の変動や税金を考えない単純な例です)。買った瞬間に10%の補助がつくのは、自分で証券会社から買う場合にはない強みです。奨励金の割合や上限は、会社ごとに大きく違います。
いちばん怖いのは、勤務先1社への集中
自分の会社の業績が悪くなると、株価が下がり、ボーナスが減り、給料も減るかもしれない。最悪の場合はリストラや倒産で、退職するころには持株会の資産まで大きく減っている。こうしたことが同時に起こり得ます。
たとえば金融資産2,000万円のうち1,000万円が勤務先の株で、その株価が70%下がれば、それだけで700万円の含み損です。同じときに会社の経営も悪くなっていれば、家計へのダメージは二重になります。
奨励金だけで判断しないことも大切だと思っています。奨励金10%で1万1,000円分を買っても、株価が50%下がれば5,500円です。「奨励金10%なら10%もうかる」わけではありません。
JALの破綻で、私が見たこと
JALは2010年に会社更生法を申請し、旧JAL株は100%減資で、文字どおり紙切れになりました。持株会で何十年も積み立ててきた先輩たちの自社株も、ゼロになりました。給料やボーナスは大きく下がり、企業年金も減らされ、早期退職や人員削減で、同僚が次々と会社を去っていきました。
そして「JALの社員」という看板にも、それまでの意味がなくなりました。そのとき手元に残るのはお金だけです。そのお金まで同じ会社の株に偏っていたら、老後の土台は一本足になってしまいます。
破綻しなくても、株主が大きく損をすることはある
持株会の怖さは、倒産した会社だけの話ではありません。大手で上場していても、不正会計や事故、業績の悪化で株価が長く低迷し、上場廃止になったり、株価が数分の1になったりした例はいくつもあります。会社は残っても、株主は大きく損をする。「大手だから大丈夫」「上場しているから大丈夫」は、私の経験からも成り立たないと思っています。
一方で、2012年からのアベノミクス相場では、日経平均が数倍になり、持株会を長く続けた社員の資産が大きく増えた会社もあります。持株会は、会社が育てば大きな味方になる制度でもあります。だからこそ、良いか悪いかではなく、どれだけの割合を置くかが問題だと私は考えています。
持株会と付き合うために、私が考える2つの問い
- 老後の資産全体の何%を、勤務先1社に置いていいか:給料や退職金、企業年金もすでに同じ会社から受け取っていることを考えると、私は株まで大きく偏らせないほうがいいと考えています
- もし自分がこの会社に勤めていなかったとしても、この株をこの値段で買いたいか:会社への愛着と、投資としての判断を分けて考えるための問いです
持株会を続けながら、一定の額になったら少しずつ引き出して、ほかの会社や広く分散したインデックスファンドに移す、という考え方もあると思います。
まとめ:お金だけでなく、生き方も分散する
作家の橘玲さんは『幸福の「資本」論』で、人の幸せを支える資本として、金融資本(お金)、人的資本(働いて稼ぐ力)、社会資本(人とのつながり)の3つを挙げています。会社人生を送ってきた人は、働く力も、人とのつながりも、そしてお金も、全部が会社の中にあることが多い。定年の日、その2つが一日で消え、残るのはお金だけです。
私が退職後に発信を始め、デパ地下でパートをし、占い師としても活動しているのは、看板と収入と人とのつながりを、一つの会社の外に複数持っておきたいからです。持株会は、会社を支える良い制度です。そのうえで、自分の資産だけは会社の外にも置いておく。持株会の話は、お金の分散だけでなく、生き方の分散の話でもあると思っています。
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