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老後のために貯めた3,000万円を、同じ条件で運用して、毎年同じ120万円を使う。10年間の値上がり率と値下がり率も、並ぶ順番が違うだけでまったく同じ。それでも10年後に残るお金には、約1,300万円の差がつきました。
差を生んだのは、取り崩しを始めた直後に大きな下落が来たかどうかです。私は、暴落の日を当てることはできないと考えています。だからこそ、暴落した年に生活費のために売りすぎなくて済む準備を、退職前のうちに整えておくことにしました。この記事では、その仕組みを計算で確かめ、私が先に決めておく3つの準備をまとめます。
※この記事は私自身の考えと計算の記録であり、特定の金融商品への投資をすすめるものではありません。当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けていません。文中の計算は仕組みを説明するための架空の例で、税金・手数料・物価の変化は考えていません。内容は2026年10月時点のものです。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
積み立てる時期と、取り崩す時期では、下落の意味が変わる
働いている間は、お給料で生活費をまかない、残ったお金で積み立てます。株価が下がっても、当面使わないお金なら売らずに待つことができます。
退職したあとは事情が変わります。年金だけでは生活費が足りず、投資信託を売って不足分を補うとしたら、株価が下がっている年にも売らなければなりません。食費も、電気代も、病院代も、相場に合わせて止めることはできないからです。この「下がっているときにも引き出す」ことが、老後の運用を難しくしていると私は考えています。
同じ3,000万円・同じ値動きでも、10年後に約1,300万円の差
AさんとBさんが、どちらも3,000万円で運用を始めたとします。使う10年分の年間リターンは同じで、並ぶ順番だけが逆です。
- Aさん:−30%、−15%、0%、5%、8%、10%、12%、15%、20%、25%(最初に大きく下がる)
- Bさん:25%、20%、15%、12%、10%、8%、5%、0%、−15%、−30%(最後に大きく下がる)
途中で一切引き出さなければ、10年後はどちらも約4,302万円です。道のりは違っても、掛け算の順番が入れ替わるだけなので、最後の金額は同じになります。
ところが、毎年の値動きを反映したあと、年末に120万円ずつ引き出すと結果が分かれました。
| 引き出しなし | 毎年120万円を引き出す | |
|---|---|---|
| Aさん(最初に下落) | 約4,302万円 | 約2,058万円 |
| Bさん(最後に下落) | 約4,302万円 | 約3,358万円 |
どちらも10年間で使ったお金は合計1,200万円です。使いすぎたから差がついたわけではありません。値動きの順番によるこの影響は「リターンの順序リスク」と呼ばれます。私が覚えておきたいのは、取り崩しを始めた直後の大きな下落は、その後の資産に長く響くことがある、という一点です。
なお、これは仕組みを見るための架空の数字で、実際の相場がこの順番で動くという予測ではありません。
あとで上がっても取り戻しにくい理由
投資信託を1口1万円で持っていたとします。120万円を用意するには120口を売れば足ります。ところが1口7,000円に下がっていたら、同じ120万円のために約171口を売ることになります。
安いときほど、同じ生活費のために多くの口数を手放す。売った分は、そのあと値上がりしても戻ってきません。取り崩しながら運用することの難しさは、ここにあると私は理解しています。
逆に「最後に下がるなら安心」という話でもありません。長生きすれば、その先もお金は必要だからです。
S&P500やオルカンでも、この仕組みは同じ
S&P500は米国の株式、オルカンは日本を含む世界の株式に広く投資する投資信託です。私自身、投資はS&P500の投資信託から始めました。低いコストで広く分散できる仕組みだと考えています。
ただ、どちらも株式の投資信託です。世界に分散していても、世界中の株が一緒に大きく下がる年はあります。外国の資産なので、円高・円安の影響も受けます。「何年持てば必ず元に戻る」と約束された商品ではありません。だから私は、良い投資先を選ぶことと、老後のお金を全部そこに入れることは、別の話として考えています。
準備1:年金で足りない金額を、月いくらで知る
最初に確かめるのは、「老後に◯千万円必要」という一般論ではなく、自分の家計の不足額です。
たとえば毎月の生活費が25万円で、年金などの手取りが20万円なら、不足は月5万円、年間60万円です。この不足額の3年分なら180万円、5年分なら300万円になります。ここでの3年分・5年分は計算の例で、その期間に株価が回復する保証があるわけでも、誰にでも合う金額でもありません。年金を受け取り始める前は不足額が違いますし、住まいの修繕や医療・介護のような大きな支出も別に考える必要があります。
生活費の全額ではなく、年金などを引いた差額から考える。私はここを出発点にしています。
準備2:近いうちに使うお金を、株式から分けておく
近いうちに使う生活費まで、すべて株式で運用する必要はないと私は考えています。預金などで備えを持っておけば、暴落した年に株式を売る量を減らせる場合があります。
ただ、現金があれば何年でも安心、ということでもありません。株価の回復に何年かかるかはわかりませんし、物価が上がれば現金で買えるものは減っていきます。持ちすぎれば、長く増やす機会を逃すこともあります。現金と運用資産の割合は、年金・支出・資産額によって人それぞれだと思います。
先ほどの計算は、3,000万円をすべて同じ値動きで運用した場合です。現金と分けて持てば、結果も変わります。
準備3:下がった年に、取り崩す金額を調整できるようにする
相場が大きく下がった年は、予定していた旅行や大きな買い物を少し先に延ばせないか。固定費に見直せるところはないか。体に無理のない範囲で、少し働く選択肢もあるかもしれません。先ほどの例で、月5万円の不足に対して月3万円の収入があれば、資産から取り崩すのは月2万円で済みます。
ただし、必要な医療や食事を我慢したり、体調を崩してまで働いたりする話ではありません。削ってよい支出と守る支出を、元気なうちに分けておく。現金が減ってきたらどうするか、どの支出を調整するか、資産配分をいつ見直すか。値下がりで怖くなったその日に決めるより、先に決めておくほうが落ち着いて判断できると、私は思っています。
まとめ:暴落の時期は選べないが、その年の暮らし方は先に決められる
私が退職前に確かめておきたいのは、次の3つです。
- 年金などの手取り収入はいくらか
- 生活費との差はいくらか
- その差を、何から、何年間補うのか
S&P500やオルカンを選んだあとも、この準備は必要だと考えています。積み立てを続けることと、退職金を含むすべてのお金を株式に入れることは、同じではないからです。何を買うかと同じくらい、いつ、いくら使うのかを、私は自分の家計で決めておくことにしました。
繰り返しになりますが、この記事の計算は架空の例で、特定の商品や配分をすすめるものではありません。資産の持ち方はご自身の状況に合わせてご判断ください。
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