※本記事にはプロモーション(PR)が含まれます。
結論から書きます。私は、村上世彰さんの投資先を追いかけるという投資をしませんでした。公表資料から分かるのは「ある日の時点で、どれだけ持っていたか」という記録だけで、私がそれを読む時点ではすでに売られている可能性があります。そのうえ村上さんには、会社に意見を言って経営を動かせる立場と、それを支える資金量があります。私にはどちらもありません。同じ会社に投資しても、同じ結果にはなりません。そう考えて、私は相乗りをやめ、かわりにこの話を「公表資料を自分で読む練習」として受け止めることにしました。この記事はもともと2025年3月に書いたもので、2026年10月に内容をあらためています。
筆者は金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けておらず、個別の銘柄や特定の金融商品、特定の証券会社の利用を推奨するものではありません。本記事は2026年10月時点のものです。当ブログで会社名を挙げるときは、公表資料の紹介か私の保有状況の紹介であり、いずれも推奨ではありません。
結論:私は「相乗り」をやめました
もとの記事には「最新ターゲット企業」という言葉を使っていました。読み返して、これは良くない書き方だったと思いました。「ターゲット企業」と並べると、読んだ人は「この会社を買えばいいのだな」と受け取ります。私はそのつもりで書いたわけではないのに、結果としてそう読める記事になっていました。
私が投資のやり方を学んでいる相手はウォーレン・バフェットで、良い会社を割安なときに買って長く持つ、決算は自分で読む、わからないものは買わない、という考え方を真似しています。この順番でいくと、他人の保有銘柄を写すという行動はどこにも入ってきません。自分で読んでいないのですから、わからないものを買うことになってしまいます。
だから私は、村上さんの動きを「買う会社を決める材料」としては使わないことにしました。そのうえで、この話から学べることはあると考えています。それは会社名ではなく、公表資料の読み方と、立場の違いの見極め方です。
村上世彰さんについて、公表されていること
村上世彰さんは、いわゆる「物言う株主(アクティビスト)」として知られる投資家です。会社が持っている現金や資産を活かしきれていないと考えたときに、株主として会社に意見を伝え、配当の増額や自社株買い、事業の見直しなどを求めてきました。
もう一つ、必ず押さえておきたい公表事実があります。いわゆる村上ファンド事件で、金融商品取引法(当時の証券取引法)違反に問われ、2011年6月6日に最高裁が上告を棄却して有罪が確定しています。評価が分かれる人物であることは、記事に書いておくべきだと考えました。手法そのものと、過去の事件は別の話として扱いますが、どちらも省略しません。
なお、村上さん本人のSNSアカウントを名乗る発信には、なりすましが多いと注意喚起されています。私も「本人の発言」として出回っている情報は、一次資料に当たるまで信じないようにしています。
大量保有報告書は「提出した日」の記録でしかない
投資家がある会社の株式を5%を超えて持つと、金融商品取引法にもとづいて大量保有報告書を提出する義務があります。提出は原則として5営業日以内で、その後に保有割合が1%以上動いたときは変更報告書を出します。提出された書類は金融庁のEDINETで誰でも読めます。
ここで大事なのは、報告書に書かれているのは「基準日時点でこうだった」という過去の記録だという点です。私がそれを読んでいる時点では、すでに売られていることもあります。変更報告書が出るまで数日のずれもあります。ですから私は、報告書を見て「今も持っている」と考えないようにしています。
| 読むときに私が確認する欄 | 何が分かるか |
|---|---|
| 提出日・基準日 | いつ時点の話なのか。ここを見ないと情報の鮮度が分からない |
| 保有目的 | 「純投資」なのか「経営陣への助言、重要提案行為等」なのか |
| 共同保有者 | 誰と一緒に持っているのか。個人名が並ぶこともある |
| 保有株券等の数・割合 | 前回からどちらに動いたのか |
| 取得資金 | 自己資金か借入か。立場の違いがここに出る |
保有会社の一覧を、この記事から外しました
もとの記事には、会社名と保有比率を並べた一覧が入っていました。今回のリライトで、この一覧は外しました。理由は二つあります。
一つめは、2026年10月時点の一次資料で、その数字が今も有効だと確かめられなかったことです。2025年3月の記事に載せた比率は、当時の報告書を写したものでした。その後に変更報告書が出ている可能性があり、私はそれを一件ずつ追いきれていません。確かめられない数字は書かない、というのが私の方針です。
二つめは、一覧の形にすると、どうしても「買うべき会社のリスト」に見えてしまうことです。もとの記事には「狙っていると言われています」「迫っていると言われています」という書き方がいくつもありました。誰が言っているのか示せない文は、今回すべて削りました。
歴史として記録に残っている事例だけ、参考に書いておきます。2000年代前半には、東京スタイル(現在のTSIホールディングス)への株主提案、阪神電気鉄道の株式取得、ニッポン放送の株式をめぐる一連の動きが大きく報じられました。もとの記事では「日本放送」と書いていましたが、これは「ニッポン放送」の誤りでした。訂正します。
EDINETで自分で確かめる手順
私が実際にやっている手順を書いておきます。難しいことはしていません。
まず金融庁のEDINETで、書類検索から会社名を入れます。次に書類種別で「大量保有報告書」と「変更報告書」をしぼります。提出日の新しいものから開いて、さきほどの表に挙げた欄を順に見ます。最後に、その会社自身が出している決算短信や有価証券報告書を並べて読みます。誰かが買っているという話よりも、会社がどれだけ稼いでいて、その稼ぎをどう使っているかのほうが、私には判断材料になります。
この手順を踏むと、だいたい一社で一時間はかかります。時間はかかりますが、他人の一覧を写すより納得して持てるようになりました。
資金量と立場が違う。ここが個人投資家との決定的な差
村上さんの手法を個人が真似できない、といちばん強く感じるのはここです。誰の実績かを忘れると、話が全部おかしくなります。
| 5%超を保有する投資家 | 私のような個人投資家 | |
|---|---|---|
| 会社への働きかけ | 株主提案や面談で経営に意見を伝えられる | 議決権を行使し、株主総会で質問するところまで |
| 資金量 | 一社に数十億円規模を投じられる | 一社あたり数十万円から数百万円 |
| 調べる体制 | 専門のスタッフと弁護士がつく | 自分一人で決算書を読む |
| 時間の使い方 | 働きかけが実るまで数年を見込める | 生活費や年金までの期間と相談しながら |
| 開示義務 | 買っても売っても報告書で公になる | 義務はない |
この差があるので、同じ会社に同じ日に投資しても、結果はまったく別のものになります。向こうは「株価が動かなければ動かす」という選択肢を持っていますが、私にはそれがありません。待つしかないのです。だから私は、働きかけがあるかどうかに関係なく、会社そのものが育つかどうかで決めるようにしています。
もとの記事には「波に乗れば勝ちやすい」「早期に仕込む」「個人投資家も利益を得やすくなります」という書き方がありました。今回はすべて削りました。誰かの実績は、その人の資金量と立場があってはじめて成り立つもので、私が同じようにできる保証はどこにもありません。再現性は保証されません。
私に役に立ったのは、会社名ではなく「背景」でした
この話を追ってみて、私にとって残ったのは個別の会社名ではなく、日本の株式市場全体で何が起きていたかという背景でした。
2023年3月31日に、東京証券取引所がプライム市場とスタンダード市場の上場会社に対して、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を要請しました。株価が純資産を下回っている、つまりPBRが1倍を割っている会社に対して、現状を分析して改善の方針を開示するよう求める内容です。この要請そのものは公表されており、東証のサイトで誰でも読めます。
この要請のあと、配当を増やしたり自社株買いを発表したり、持ち合い株を手放したりする会社が増えました。私はこれを、特定の投資家の手柄というよりも、市場全体のルールが変わったことの結果だと受け止めています。ただ、ここは私の見方であり、外れることもあります。断定はできません。
この背景が分かってから、私の会社の見方は少し変わりました。現金をたくさん持っている会社を見たときに、以前は「安心だ」と思っていたのですが、今は「その現金を何に使うつもりなのか、会社自身が説明しているか」を見るようになりました。説明している会社は、決算説明資料に書いてあります。書いていない会社もあります。その差は、自分で読まないと分かりませんでした。
取り入れたこと、取り入れなかったこと
取り入れたのは三つです。一つめは、会社が持っている現金と、その使い道の説明をセットで見ること。二つめは、提出された書類には必ず基準日があるので、情報の鮮度を先に確認すること。三つめは、株主総会の議決権を面倒でも自分で行使することです。これは私にもできることでした。
取り入れなかったのは、保有割合の変化を追って売買のタイミングを合わせようとすることです。私には報告書が出るまでの時間差を埋める手段がなく、追いかけても後追いになるだけだと考えました。それに、売買の回数が増えるほど手数料と税金がかかります。長く持つという前提のほうが、私の生活には合っていました。
もう一つ取り入れなかったのは、「この会社はまだ上がる」という見通しを自分の判断の中心に置くことです。もとの記事の最後に「この流れは継続するでしょう」と書いていました。今読むと、根拠のない断定です。2025年3月の私はそう考えていた、という記録として残しますが、今は書きません。
まとめ:誰の実績かを忘れないようにしています
村上世彰さんの投資は、公表された資料から追うことができます。ただ、そこに書かれているのは提出時点の記録であって、今の保有状況ではありません。そして何より、あの手法は資金量と立場があってはじめて成り立つものです。私が同じ会社に投資しても、同じことは起きません。
私にできたのは、EDINETと決算資料を自分で開いて、会社の稼ぎと使い道を自分の言葉で説明できるようにすることでした。地味ですが、これなら50代の私にも続けられます。
最後にもう一度書いておきます。当ブログで会社名を挙げるときは、公表資料の紹介か私の保有状況の紹介であり、いずれも推奨ではありません。他人の実績は、その人のものです。再現性を保証するものではありません。投資の判断は、ご自身で資料を確かめたうえで決めてください。
私が受けた質問と、そのときの答え
「大量保有報告書が出た会社を買えばいいのですか」と聞かれたことがあります。私は買っていません、と答えました。報告書が公開される時点で株価はもう動いていることが多く、私が後から入っても先に入った人と同じ条件にはなりません。それに、報告書には売るときの予定は書かれていません。
「保有比率が上がり続けていたら、続けて上がるのではないですか」とも聞かれました。これも私には分かりません。保有比率が上がる理由は、会社を良くしたいからとは限らず、買い増しが止まる日もいつか来ます。その日は事前に公表されません。
「それでは何を見ればいいのですか」という質問には、会社の決算資料を自分で読むこと、と答えています。遠回りに聞こえますが、私にはこれしか思いつきませんでした。売上と利益が何年分どう動いたか、現金がどれだけあって何に使うと書いてあるか、配当をどういう方針で決めているか。この三つを自分の言葉で言えるようになった会社だけを持つようにしています。
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