結論からお伝えします。私が2社の有価証券報告書、合計222ページを読んで確かめたのは「半導体」でも「AI」でもありません。株価が戻らなくても、配当は増え続けることがある——その事実です。
私は今、日本株86銘柄を16以上の業種に分けて保有し、年間およそ570万円の配当を受け取っています。48歳から本格的に始めて、ここまで来ました。特別な才能があったわけではなく、やったことは一つだけです。株価を見るのをやめて、会社の価値を見る。
この記事では、上組(かみぐみ)とアイチコーポレーションという地味な2社の有報を読んで見えたこと、私の4つの判断基準に当てはめた結果、そして正直に申し上げるリスクまでをまとめます。50代60代から高配当株で老後のお金をつくりたい方に向けた内容です。
なぜ株価ではなく「会社の価値」を見るのか
株価は、人の感情で動きます。怖くなったら売られて下がり、強気になったら買われて上がる。毎日、上がった下がったと騒がしいものです。
でも、会社の価値はそんなに動きません。港で荷物を運ぶ仕事も、電柱を立てる仕事も、今日も明日も続いています。稼ぐ力のある会社は、株価が下がった日も配当を払い続けます。
このやり方は派手ではありません。でも、老後のためのお金づくりにはこれがいちばん向いていると私は思っています。値動きに心をすり減らさなくていい。売り時を当てなくていい。持っているだけで、配当という形で暮らしのお金が入ってくるからです。
そこで私は、2社の有価証券報告書を企業サイトからダウンロードして読みました。上組が123ページ、アイチコーポレーションが99ページ、合わせて222ページです。
1社目:上組(かみぐみ)── 16年で配当12倍の港湾物流
上組は神戸の港湾物流の会社です。船から荷物を降ろし、倉庫に入れて、運ぶ。それが本業です。
配当は16年で12倍になった
2010年3月期の1株配当は17円。それが2026年3月期には205円。16年で12倍です。増え方も、2022年3月期+46%、2025年3月期+30%、2026年3月期は+57.7%と加速していました。
一つ正確にお伝えします。上組は2017年10月に2株を1株にする株式併合をしています。ここで挙げた過去の配当は、すべて併合後の基準に揃えた換算値であり、当時の株主が実際に受け取った金額そのものではありません。比べ方を揃えるための数字です。
ところが今期は「増配率ゼロ」
2027年3月期の会社予想配当は205円。前の期とまったく同じで、増配率はゼロです。
理由は業績予想に表れています。営業収益3,050億円で増収ですが、純利益は減益予想。しかも配当性向はすでに70%の目安に届いています。ここから先は、配り方を厚くする余地ではなく、稼ぐ力だけが頼りになります。これが上組のいまの立ち位置です。
手が止まった数字:投資キャッシュフロー▲606億円
有報のキャッシュ・フロー計算書で、私の手が止まった数字があります。投資キャッシュフローがマイナス606億円。前の期はマイナス75億円でしたから、約8倍です。
内訳は有報にきちんと書いてありました。
| 項目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 定期預金の純増 | 200億円 | 社内の預け替え |
| 連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得 | 193.9億円 | インドの港湾会社の買収 |
| 関係会社株式の取得 | 192.6億円 | — |
| 設備投資 | 146.7億円 | — |
インドのムンドラ港でコンテナ事業を営む SAURASHTRA FREIGHT を買収し、連結子会社にしています。国内でも日本ポート産業を完全子会社化しました(元々70%保有していた会社の追加取得で約5億円)。
この期に長期借入を300億円実行し、同時に自社株買い130億円、配当172億円も払っています。自己資本比率は5年前の84.2%から73.5%まで低下しました。借入だけが理由ではありません。株主還元に302億円を使い、総資産も1割近く増えた。攻めと還元を同時にやった結果です。
有報に「半導体」は一行も出てこない
いま、政府の成長戦略でAI・半導体分野に官民合わせて2040年度までに100兆円規模という試算が示されています。あくまで官民合計・2040年度まで・試算段階の数字です。
上組の有報に、その話は一行も出てきません。この会社は国のお金を待たずに、借金してでも自分でインドの港を取りに行っている。私はそちらのほうが信用できると思いました。これは私の感想です。
2社目:アイチコーポレーション ── 高所作業車で国内シェア約7割
アイチコーポレーション(証券コード6345)は埼玉県上尾市の会社です。高所作業車——電柱の工事で作業員をカゴに乗せて持ち上げる、あの車をつくっています。トラックに載せるタイプの高所作業車で国内シェア約7割。ほかに、電柱を立てる穴を掘る穴掘建柱車も手がけます。
地味です。でも、電気を使わない生活はありません。
7年で配当2.73倍、7期連続増配
2019年3月期の配当22円が、2026年3月期は60円。7年で2.73倍、7期連続増配です。今期予想は65円で、8期連続の見込みとなっています。
財務も堅い会社です。自己資本比率81.2%、流動比率360%、四季報ベースで有利子負債ゼロ。前期には128億円規模の自社株買いを公開買付で実施しました。発行済株式の13.41%にあたります。上組の130億円と金額は近いのですが、アイチは借金せずにやっているという違いがあります。
最新の数字も補足しておきます。前期のアイチは営業キャッシュフローが98億円から8億円へ激減しました。売掛金の増加など入金タイミングが主な要因です。だから、きれいごとは言いません。高配当株は無傷ではありません。減ることも、止まることもあります。
19年間、株価は戻っていない。それでも配当は3倍超
アイチの株価を長期で見てください。2007年に高値1,750円をつけ、現在は1,423円。19年経って、まだ戻っていません。
では同じ2007年を起点に、配当はどうなったか。起点を揃えるのがフェアなので揃えます。2008年3月期の配当総額15.9億円を今の株数の感覚に直すと、1株あたりおよそ20円に相当します。それが今期予想65円です。
| 2007年頃 | 現在 | 倍率 |
|---|---|---|
| 株価 1,750円 | 株価 1,423円 | まだマイナス |
| 配当 約20円 | 配当 65円(今期予想) | 約3.2倍 |
高値で買った人の株価は19年間一度も戻っていない。それでも配当は、途中で半分に減らされながら、3倍を超えました。株価と配当は、別の生き物です。
株価がこの先戻るかは誰にもわかりません。戻らないかもしれません。それははっきりリスクとして申し上げます。でも配当は、会社が稼いでいるかぎり毎年入ってきます。
私の4つの判断基準に当てはめてみる
私が銘柄を見るときの基準は4つです。配当利回り3.75%以上、PBR2倍以下、自己資本比率50%以上、流動比率200%以上。ほかにも細かい前提条件がありますが、まずはこの4つです。
| 基準 | 上組 | アイチコーポレーション |
|---|---|---|
| 株価 | 4,985円 | 1,423円 |
| 配当利回り(3.75%以上) | 4.11% ○ | 4.57%(会社予想65円)/実績60円なら4.2% ○ |
| PBR(2倍以下) | 約1.2倍 ○ | 1.22倍 ○ |
| 自己資本比率(50%以上) | 73.5% ○ | 81.2% ○ |
| 流動比率(200%以上) | 235% ○ | 360% ○ |
※株価・利回りは執筆時点の終値ベースです。
ただし「4つ通ったから買うべき」ではありません。これは私が自分のお金で判断するときの物差しに当てはめたら、こうなったという事実の確認です。推奨ではありません。
正直に申し上げるリスク
上組のリスク
今期は減益予想で、配当性向は74%まで上がる見通しです。配り方を厚くする余地はもうありません。借入300億円もあります。
アイチコーポレーションのリスク
有報の2026年3月末時点で、伊藤忠商事27.28%、豊田自動織機21.41%。2社で48.7%を保有しています。しかも伊藤忠は今年4月、最大で議決権6%強の追加取得を発表しました。市場に出回る株はさらに少なくなりうる。値動きが軽くなる、資本政策が大株主次第になる、という面があります。
共通するリスク:配当方針は業績連動
配当方針は、上組が「配当性向70%目安・安定的かつ持続的な増額を追求」、アイチが「配当性向60%以上を基準」。どちらも業績と連動する設計です。業績が崩れれば減配はありえます。アイチは実際に、過去に一度減配しています。
まとめ:株価が戻らなくても、配当は増えることがある
大事なことは一つです。株価が戻らなくても、配当は増えることがある。ただし、無傷ではない。アイチの19年が、その両方を証明しています。
種銭は労働、成長は企業、老後は配当。私はこれを変えるつもりはありません。
よくある質問
有価証券報告書は初心者でも読めますか?
全部読む必要はありません。私が必ず見るのは、配当の推移、キャッシュ・フロー計算書、自己資本比率、大株主の状況、配当方針の5か所です。企業のIRサイトからPDFで無料ダウンロードできます。
「半導体」「AI」のような成長テーマは狙わないのですか?
私は老後のお金を配当でつくることを目的にしているので、テーマの盛り上がりよりも、稼ぐ力と配当を出し続ける姿勢を見ます。国の政策待ちではなく、自分で稼ぎに行っている会社のほうを私は信用します。
配当性向70%は高すぎませんか?
高い部類です。配当性向が上限に近づくと、これ以上「配り方」で増配する余地はなくなり、増配は業績の伸び次第になります。上組はまさにその局面にあります。買う前に必ず確認したい数字です。
株価が19年戻らない会社を持ち続けて大丈夫ですか?
売却益を狙うなら向きません。配当を目的にするなら、株価より「配当を払い続ける力があるか」を見ます。ただし減配リスクは常にあるため、私は1銘柄に賭けず86銘柄・16業種以上に分散しています。
関連記事
高配当株を買う準備をするなら
有報を読んで納得できる会社を見つけても、買う場所がなければ始まりません。単元未満株の取り扱いや手数料は証券会社ごとに差があります。
まだ証券口座をお持ちでない方は、「どこで口座を作るか」が将来の資産額を大きく左右します。 数ある証券会社の中でも、圧倒的な支持を集めているのがSBI証券と楽天証券です。 動画の概要欄に、公式のリンクを載せていますのでそこから申し込みができます。 SBI証券 は、日本の個別株や米国株をやるなら手数料も安くて最強です。 楽天証券は、画面が見やすくて初心者に優しいですし、楽天ポイントで投資ができるのも嬉しいです。 私はYouTubeで毎日夜9時からライブ配信をしています。 この動画が役にたったよという人はチャンネル登録といいねボタンをよろしくお願いします。※本記事は筆者が公表資料(有価証券報告書・決算短信等)を読んで考えたことをまとめた記録であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。筆者は投資助言業の登録を受けていません。筆者は本記事で取り上げた2社の株式を保有しているため、保有者の立場からの内容である点をご了承ください。記載した株価・配当・財務数値は執筆時点のものであり、最新の情報は各社IRおよび証券会社の公式サイトで必ずご確認ください。配当は業績や方針により減配・無配となる可能性があり、株価下落により元本を割り込む可能性があります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。なお本記事にはアフィリエイト(PR)リンクが含まれる場合があります。


コメント