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「配当金が年30万円、月にすると25,000円ほど。これだけでは生活が変わるとは思えない」という質問をいただきました。この記事は、その年30万円が増配によって何年でどう変わるかを計算したものです。はじめにお断りしておくと、これは「こういう前提ならこうなる」という計算で、将来がこうなるという話ではありません。書き直す前の記事では、前提があいまいなまま数字が並んでいて、受取合計の計算も間違っていました。前提を全部書き出して、電卓で検算し直しています。
筆者は金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けておらず、個別の銘柄や特定の金融商品、特定の証券会社の利用を推奨するものではありません。本記事の数字は2026年10月時点のものです。配当課税の税率は国税庁が示す上場株式等の配当にかかる税率(20.315%)、年金額は2026年1月に公表された2026年度(令和8年度)の年金額にもとづいています。試算はすべて仮の数字を置いた単純計算で、実際の配当金額や増配を保証するものではありません。税金の具体的な取扱いは、税理士や税務署にご相談ください。
この試算の前提をはっきりさせます
数字を出す前に、何を仮定したかを書いておきます。ここが抜けていると、同じ「年30万円」でもまったく違う話になってしまいます。
- 元手は750万円。最初に一括で置いた場合として計算します
- 配当利回りは年4%。これは税引き前の利回りです
- 元本の追加投資はしません。配当金は使う前提で、再投資はしません
- 増配率は年3%と年5%の2通り。1年目の配当金を30万円として計算します
- 株価の値動き、為替、減配、売買手数料は考えません
- 税金は、課税口座の場合として20.315%で計算します。NISA口座なら配当金に日本の税金はかかりません
この前提のうちひとつでも変われば、答えは変わります。
750万円で年30万円は、利回り4%(税引き前)の計算です
まず元手と利回りの関係を確かめます。
750万円 × 4% = 30万円。これを12で割ると月25,000円です。タイトルの数字は、税引き前の利回り4%で計算したものだとはっきりしました。
書き直す前の本文には「1000万円を投資して、税引き後の配当利回りを3%とすると年間30万円」と書いてありました。1000万円 × 3% = 30万円なので計算自体は合っていますが、タイトルの750万円と本文の1000万円が食い違っていました。利回りの前提も、タイトルは税引き前4%、本文は税引き後3%で別のものでした。今回は750万円・税引き前4%にそろえています。
税金を引くと、月25,000円は月約19,900円になります
課税口座で受け取る場合、上場株式の配当金には20.315%の税金がかかります。
30万円 × (1 - 0.20315) = 23.9万円。月にすると約19,900円です。月25,000円という数字は税引き前のもので、手取りは2万円を少し下回ります。
逆に、手取りで年30万円にしたい場合は、税引き前で37.65万円が必要です。利回り4%で計算すると、元手は約941万円になります。「手取り月25,000円」を目指すなら、750万円では足りないということです。
ただし、NISA口座で持っている分の配当金には日本の税金がかかりません。NISAの非課税保有限度額は1,800万円ですから、750万円ならNISAの枠内に収まります。枠内で持てば、税引き前と手取りが同じになります。米国株の場合は現地で源泉徴収される分がありますので、そこは別に考える必要があります。
増配率3%と5%で、30年後の年間配当金はどうなるか
1年目の配当金を30万円として、毎年決まった率で増えていったらどうなるかを計算しました。税引き前の金額です。
| 経過年数 | 増配率3% | 増配率5% |
| 1年目 | 30.0万円(月25,000円) | 30.0万円(月25,000円) |
| 10年後 | 40.3万円(月約33,600円) | 48.9万円(月約40,700円) |
| 20年後 | 54.2万円(月約45,200円) | 79.6万円(月約66,300円) |
| 30年後 | 72.8万円(月約60,700円) | 129.7万円(月約108,000円) |
課税口座で税金を引いた手取りにすると、30年後は増配率3%で年58.0万円(月約48,400円)、増配率5%で年103.3万円(月約86,100円)です。
元手は750万円のまま、追加で入れていません。増配だけで、30年後の年間配当金が2.4倍から4.3倍になる、という計算です。
受取合計|元の記事の計算が間違っていました
ここが今回いちばん大きく直したところです。
書き直す前の記事には「20年間の配当金の合計は約863万円」(増配率3%)、「20年間の配当金合計は約1170万円」(増配率5%)と書いてありました。これを検算したところ、どちらも合いませんでした。
| 期間と増配率 | 元の記事 | 正しい計算 |
| 20年・増配率3% | 約863万円 | 806.1万円 |
| 20年・増配率5% | 約1,170万円 | 992.0万円 |
1年目を30万円として20年目までを足し上げた金額です。増配率3%なら806万円、5%なら992万円。元の記事はどちらも多く書いていました。5%のほうは178万円も違います。
30年に伸ばすと、増配率3%で1,427.3万円、増配率5%で1,993.2万円になります。課税口座で税金を引くと、それぞれ1,137.3万円と1,588.3万円です。
比較のために、増配がまったくなかった場合も出しておきます。年30万円が30年続けば900万円、税引き後で717.2万円です。増配があるかないかで、30年では500万円から1,000万円以上の差が出る計算になります。
増配は保証されていません
ここまでの計算は、増配率3%や5%が30年間ずっと続いたらどうなるか、というものです。そうなる保証はまったくありません。
実際に起きることとして、次のようなことがあります。
- 業績が悪くなれば配当は減ります(減配)。無配になることもあります
- 増配を続けてきた会社でも、ある年に止まることがあります。「連続増配」は過去の記録で、将来の約束ではありません
- 株価が下がれば、元手750万円の評価額そのものが減ります。配当が出ていても元本は目減りします
- 物価が上がれば、同じ金額でも買えるものは減ります。30年後の月6万円が今の月6万円と同じ価値とは限りません
書き直す前の記事には、増配を続けている会社の例として具体的な会社名が挙がっていました。特定の会社を挙げると推奨のように読めてしまうので、削りました。どの会社が増配を続けるかは、私にも分かりません。
年金と並べてみる(2026年度の金額)
年30万円という金額の大きさを見るために、公的年金と並べてみます。
2026年度(令和8年度)の国民年金(老齢基礎年金)の満額は、月70,608円です。年額にすると847,296円、約84.7万円になります。2026年1月に公表されたもので、前年度から1.9%の引き上げです。
年30万円の配当金は、この満額の約35%にあたります。年金の代わりになる金額ではありません。ただ、30年後に増配率3%で年72.8万円まで育っていれば、国民年金の満額に近い金額になります。増配率5%なら年129.7万円で、満額を超えます。
書き直す前の記事には「2024年の国民年金(満額)は年間約80万円(月6.7万円)」と書いてありました。年金額は毎年度改定されるので、2026年度の金額に直しています。
元の記事から削った表現
数字以外にも直したところがあります。
- タイトルの「人生を変えるのか」:変わるかどうかは人によって違うので、試算であることが分かる形に変更
- 「老後資産になることも」:断定を避けて削除
- 「公立なら1000万円、私立理系なら2700万円かかるといわれます」:出どころを確かめられないため削除
- 「毎月5万円の追加収入が目安とされる」:出どころを確かめられないため削除
- 「金の鶏が毎年卵を産んでくれる」:実態をぼかす表現なので削除
- 増配を続けている会社の具体名、高配当ETFの具体名:推奨と読まれるため削除
- 「20年間で863万円から1170万円の配当金が手に入る」:検算して806万円と992万円に修正
私はこの数字をどう受け取ったか
私自身は、配当金が増えていく形を選んで投資してきました。計算してみて改めて思ったのは、年30万円という金額が小さく見えるのは、受け取る期間を数えていないからだということでした。1年だけ見れば30万円ですが、30年持てば合計で900万円から2,000万円の幅になります。元手の750万円はそのまま残っている計算です。
とはいえ、それは「30年持てたら」という話です。私はウォーレン・バフェットのやり方を真似して、良い会社を割安なときに買って長く持つ、決算は自分で見る、わからないものは買わない、という3つを自分のルールにしています。買ったら売らないと決めたのは、途中で売ってしまうとこの計算が成り立たないからでもあります。
ただ、30年持ち続けられるかどうかは性格や生活の事情によります。途中でお金が必要になることもあります。私のやり方が合う方もいれば、合わない方もいると思います。
この記事でお伝えしたいのは、「年30万円は意味がない」と決める前に、前提を書き出して自分の数字で計算してみると見え方が変わる、ということです。利回りも増配率も税金も、人によって違います。私の前提をそのまま信じるのではなく、ご自身の数字で置き換えてみてください。
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