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私の母は1980年、福岡市の油山にある100坪の土地を880万円で買いました。1坪あたり8万8,000円です。それから44年後の2024年、母はその土地を、お金を受け取って売るのではなく、お金を払って引き取ってもらう形で手放しました。この記事では、母の実話をもとに、不動産が「負動産」になる仕組みと、相続放棄(原則3か月)と相続税の申告(原則10か月)の違い、相続土地国庫帰属制度の費用(審査手数料1筆1万4,000円、負担金は基本20万円)まで、50代の私が調べたことを数字で整理します。
筆者は金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けておらず、個別の銘柄や特定の金融商品、特定の証券会社の利用を推奨するものではありません。本記事の数字は2026年11月6日時点のものです(銀座の地価は2026年地価公示)。投資の判断はご自身でお願いいたします。
母が1980年に買った油山の100坪と「地下鉄が通る」という話
私はJALで約30年間、客室乗務員として働き、48歳から本格的に投資を学び始めました。投資を学ぶほど思い出すのが、母のこの土地のことです。
母は若い頃から働き、お金を一生懸命貯めてきた人です。何も考えずにお金を使っていたわけではありません。老後を安心して送りたい、家族のためにも財産を残したい。そんな思いがあったのだと思います。
1980年(昭和55年)当時、福岡では不動産会社の営業担当者が一軒一軒、自宅を訪ねて土地を勧めていたそうです。母のところにも営業の人が来ました。紹介されたのは、福岡市内にある緑豊かな山、油山の100坪の土地です。値段は880万円でした。
営業の人からは「将来この地域に地下鉄が通るので、土地の価値が上がる」と説明されたそうです。
ここで当時の背景を見ておきます。福岡市では実際に地下鉄の工事が進んでいて、初めて開業したのは1981年7月26日(室見から天神までの区間)です。母が土地を買った1980年は、まさに開業の直前でした。「これから福岡に地下鉄が走る」というのは、本当のニュースだったのです。
けれども、福岡市に地下鉄ができることと、母が買う山の土地に地下鉄が通ることは、まったく別の話でした。地下鉄の建設という本当の話と、その土地が値上がりするという期待が、結び付けられて説明されていたわけです。
母がどのような資料を示されたのか、今となってはすべてを確かめることはできません。わかっているのは、期待していた地下鉄も開発も実現せず、家も建てられないような山の土地のままだったこと、そして当時の販売会社が今では見当たらないことです。
今のようにスマホで土地の相場を調べたり、役所の情報をすぐに確認したりできる時代ではありませんでした。不動産会社の人から「将来値上がりする」と言われたら、その説明を信じてしまうのは自然なことだったと思います。私は、当時の母がどんな気持ちで契約したのかを、ときどき考えます。
私はこの経験に、原野商法の問題が重なっていると考えています。原野商法とは、値上がりの見込みが乏しい山林や原野を「将来高く売れる」などと勧誘して販売する商法のことです。そしてこの問題の本当の怖さは、お金を払った瞬間だけでなく、そのあと何十年も続くことにあります。
880万円は高かったのか|1坪8万8,000円と銀座の公示地価
母は100坪の土地を880万円で買いました。880万円を100坪で割ると、1坪8万8,000円です。
この数字が高いのか安いのかは、数字だけでは判断できません。土地の値段は、場所によってまったく違うからです。
たとえば東京の銀座です。国土交通省が公表した2026年の地価公示では、銀座4丁目の山野楽器銀座本店の地点が1平方メートルあたり6,710万円でした。1坪(約3.3平方メートル)に換算すると、およそ2億2,180万円になります。
| 場所 | 時点 | 1坪あたりの価格 |
|---|---|---|
| 福岡市・油山の山林(母が購入) | 1980年の購入価格 | 8万8,000円(880万円÷100坪) |
| 銀座4丁目(山野楽器銀座本店の地点) | 2026年地価公示 | 約2億2,180万円(1平方メートル6,710万円) |
銀座の土地が高いのには理由があります。多くの人が集まり、たくさんの会社やお店が商売をしていて、交通の便が良い。土地を使いたい人がたくさんいる、つまり大きな需要があるのです。
では、母が買った油山の100坪はどうでしょうか。同じ福岡市内でも、山林と駅前の住宅地ではまったく違います。道路があるのか。水道や電気を引けるのか。法律上、家を建てられるのか。実際に買いたい人がいるのか。
土地の価値は面積だけでは決まりません。100坪あるから価値があるのではなく、その100坪を使いたい人がいるかどうかで決まる。私はここがいちばん大切な点だと考えています。
ただし、銀座の価格は2026年、母の購入価格は1980年のものです。時点が46年違うので、単純に倍率を計算して「母の土地は何倍も割高だった」と判断することはできません。また、母の油山の土地の現在の正確な市場価格は、公的なデータから特定できていません。
だからこそ私は、土地を買うときには販売員の説明だけでなく、同じ地域で似た条件の土地が実際にいくらで取引されているのかを確かめたいと思っています。
100坪あっても家が建てられない土地がある
もうひとつ大切なのが、法律上の規制です。日本では、土地を持っていても、必ず好きなように家を建てられるわけではありません。
市街化調整区域・保安林・土砂災害警戒区域
- 市街化調整区域:市街化を抑えるため、原則として新たな建築などが制限される区域です。街をむやみに広げないための仕組みです。
- 保安林:水源の保全や土砂災害の防止などのために、森林の利用に規制がかかる土地です。
- 土砂災害警戒区域・特別警戒区域:土砂災害の危険がある場所で指定されることがあります。
母の油山の土地が、具体的にどの区域に指定されていたのかは、正確には確認できていません。確かめるには、実際の地番を調べて、市や県の地図と照らし合わせる必要があります。
それでも、この経験から私が学んだのは、土地の所有権と、自由に利用できる権利は同じではないということです。「100坪の土地です」と勧められたら、私はまず所在地を確かめ、何を建てられるのか、何に使えるのかを役所に確認するようにしています。
固定資産税がかからない土地は、お得なのか
母の土地について、もうひとつ不思議だったことがあります。固定資産税を払っていなかったのです。
税金がかからないなら得なのでは、と思うかもしれません。けれども、そうとは限りません。たとえば福岡市では、同じ区内で同じ人が持っている土地の固定資産税の課税標準額の合計が30万円未満なら、固定資産税は課税されません。これを免税点といいます。
母の土地がこの免税点によって課税されなかったのか、別の理由なのかは、資料を確かめないとわかりません。ただ、固定資産税がかからないことと、その土地に価値があることは別の問題です。税金がかからなくても、買いたい人がいなければ売ることはできませんし、持っていることによる負担がなくなるわけでもありません。
不動産が「負動産」になる理由
最近、「負動産」という言葉を目にすることが増えました。普通の不動産は、お金を生み出したり、売ってお金に換えたりできる財産です。けれども、使い道がなく、売ろうとしても買い手がつかず、そのうえ管理にお金がかかる。そんな不動産を、負担の「負」の字を使って負動産と呼ぶことがあります(売却や活用が難しく、維持や管理が負担になる不動産の俗称です)。
たとえば山の土地で木が伸びて倒木の危険が出てくれば、伐採や撤去が必要になることがあります。大雨で土砂が流れ出すおそれもあります。近隣から草木の管理を求められたり、害虫やスズメバチの巣への対応が必要になったりする場合もあります。
もちろん、自然災害が起きたからといって、必ず土地の所有者が賠償責任を負うわけではありません。原因や管理の状況によって、法的な責任は変わります。また、母の山でこうしたトラブルがすべて実際に起きたわけでもありません。
私が怖いと感じたのは、土地を使っていなくても、持っている限り管理の問題が残ることです。高齢になったとき、遠くの山まで見に行けるでしょうか。木が倒れていないか確かめられるでしょうか。自分で対応できなければ業者に頼むことになり、費用もかかります。
母は2024年、44年間持っていた土地を、費用を払って引き取ってもらいました。私は、母が元気なうちに土地の整理をつけてくれたことに、大きな意味があったと思っています。もし土地を持ったまま母が亡くなっていたら、今度は私たち子どもが、その土地をどうするか考えなければならなかったからです。
今も続く原野商法の二次被害|80代の方が20万円を失った事例
原野商法は昭和の時代に終わった話ではありません。国民生活センターには、今も相談が寄せられています。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 原野商法の二次被害に関する相談件数(2024年度) | 258件 |
| お金を支払った人の平均支払額(2024年度) | 約258万円 |
| 相談当事者に占める60代以上の割合(2014〜2024年度) | 約9割 |
(出典:政府広報の資料。2026年11月6日時点で確認できた数字です)
2023年に国民生活センターが紹介した事例があります。80代の方が、数十年前に「宅地造成される」と勧められて山林を買いました。ところが、いつまでたっても宅地にはなりませんでした。高齢になり、子どもや孫に迷惑をかけたくない、何とか売りたいと思っていたところへ、仲介業者から電話がありました。土地を180万円で売るので、手数料20万円を先に払ってほしいという話です。20万円を払ったあと、業者とは連絡が取れなくなってしまいました。
神奈川県が公表した相談事例では、70代の方が「約1,250万円で土地を買いたい人がいる」という話を信じて、税金対策費用などとして約490万円を支払いました。けれども、約束された売却代金は振り込まれず、契約書を見直すと、別の土地を約1,740万円で買ったことになっていたそうです。
売れない土地を持っていた人が、最後にもう一度お金を失ってしまう。過去のトラブルに遭った人が再び別のトラブルに遭うことを二次被害といいます。相続人に迷惑をかけたくないという気持ちにつけ込まれてしまうのが、とてもつらいところです。
なお、母が2024年に費用を払って土地を手放したことが、こうした二次被害だったと言っているわけではありません。正当な処分費用が必要になる契約もあります。私が大切だと思うのは、「処分費用です」と言われたときにも、その内訳や契約内容、相手方をしっかり確かめることです。
負動産は相続で子どもに残る|相続放棄の3か月と相続税の10か月
もし親が、使い道のない土地を持ったまま亡くなったらどうなるのでしょうか。その土地も、原則として相続財産になります。相続するのは預貯金や株式のような財産だけではなく、管理が難しい土地や、借金などの負担が含まれる場合もあります。
ここでよく混同されるのが、相続放棄と相続税の申告という、2つの期限です。
| 手続き | 期限(原則) | ポイント |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 自分が相続人になったことを知ったときから3か月以内(家庭裁判所) | 相続する権利と義務を原則すべて引き継がない。売れない土地だけを放棄して預貯金だけ受け取ることは原則できない。期間内に判断できない場合は伸長の申立てができる |
| 相続税の申告・納付 | 亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内 | 相続放棄とは別の制度。財産の額や法定相続人の数、控除によっては相続税がかからない。納付資金が足りない場合、一定の条件で延納や物納の制度もある |
3か月と10か月は、同じ話ではありません。私は、自分が何を相続するのか、どれくらいの負担があるのかを早めに知っておくことが大切だと考え、家族が元気なうちに、どこにどんな土地を持っているのかを一緒に調べておくようにしています。亡くなったあとに、初めて知らない山林が出てくる。そうした事態は避けたいと思っています。
売れない土地は国に返せる? 相続土地国庫帰属制度は母の土地には使えなかった
売れない土地を国に引き取ってもらう制度もあります。2023年4月に始まった「相続土地国庫帰属制度」です。相続した土地を、一定の条件を満たせば国に引き渡せる制度で、すでに施行されている現行の制度です。
たとえば親から山林を相続したけれど、自分は遠くに住んでいて使う予定がなく、管理も難しい。そうした人が、条件を満たせば国に土地を引き渡せる場合があります。
ただし、どんな土地でも国が無条件で引き取ってくれるわけではありません。建物がある土地、境界がはっきりしない土地、管理に過大な費用がかかる崖地などは、引き取ってもらえない場合があります。費用もかかります。
| 費用 | 金額 |
|---|---|
| 審査手数料(申請時) | 土地1筆につき1万4,000円 |
| 負担金(承認された場合) | 基本は20万円。森林などは面積によって金額が変わる |
そして、ここが母の話につながります。母はこの土地を相続したのではなく、自分で買いました。本人が売買で取得した土地は、この制度を原則として利用できません。もし相続した土地だったなら、条件次第で検討できたかもしれません。買った人なら誰でも不要な土地を国に返せる、という制度ではないのです。だからこそ、買う前の判断がとても大切だと私は感じました。
相続や制度の使い方は、家族の状況や土地の条件によって大きく変わります。具体的な判断は、税理士や税務署、司法書士、法務局などの専門家や窓口に相談してください。
母の経験から、私が土地を買う前に確かめたいこと
もし不動産会社から「この土地は将来値上がりします」「今買えば、子どもにも財産を残せます」と言われたら、私は次のことを確かめたいと思っています。
- その土地は、どこにあるのか(登記簿の住所や地番は何か)
- 実際に現地まで行けるのか、道路に接しているのか
- 家を建てられるのか、水道や電気などの設備はあるのか
- 周辺では、似た条件の土地がいくらで売買されているのか
- 10年後に売るとしたら、誰が買ってくれるのか
営業担当者が親切だった、パンフレットが立派だった、「絶対に値上がりする」と説明された。私は、それだけでは購入を決めないことにしています。
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、実際の取引価格や公示地価などを調べられます。建築の規制は、自治体の都市計画情報で確かめられます。必要であれば、不動産会社とは別の専門家に相談することもできます。母の若い頃に比べて、私たちが手にできる情報はずっと多くなりました。販売している人の話だけでなく、別の資料から確かめる。それが母の経験から私が受け取ったことです。
私は48歳から、お金について学び直しました
母は一生懸命働いてお金を貯めてきましたが、土地や金融商品の仕組みを学ぶ機会は十分にはありませんでした。実は母は、この土地だけでなく、老後のための金融商品でも大きな損失を経験しています。その経験から私が老後のお金で「やらない」と決めたことは、別の記事にまとめました。
私は48歳から本を読んで勉強し、ウォーレン・バフェット、チャーリー・マンガー、チャールズ・エリス、山崎元さんなど、さまざまな方の考え方を学んできました。そして金融商品を買う前に、自分が何に投資するのか、どこにリスクがあるのか、費用はいくらかを調べるようになりました。
私自身は、低コストのインデックス投資を長期の資産形成の土台と考え、今は日本の高配当株を通じて、企業にも投資しています。もちろん株式投資にも元本割れのリスクがあり、株価が下がれば資産は減ります。上場している株式でも、希望する値段で売れる保証はありません。
それでも、売るまでに長い時間がかかる不動産と、取引所で売買できる株式や投資信託とでは、換金のしやすさ(流動性)が違います。何を持つかだけでなく、必要なときに現金にできるかどうかも、私は大切にしています。
まとめ:母の880万円は、私にとってただのお金ではありません
母が1980年に買った土地は、100坪で880万円(1坪8万8,000円)でした。地下鉄が通って値上がりすると期待して買った土地は、44年間持ち続けても思っていたような財産にはならず、2024年、母はお金を払ってその土地を手放しました。
- 土地の価値は面積ではなく、使いたい人がいるかどうかで決まる
- 所有権があっても、市街化調整区域や保安林などの規制で自由に使えない土地がある
- 固定資産税がかからないことと、価値があることは別の問題
- 原野商法の二次被害は今も続き、2024年度の相談は258件、平均支払額は約258万円
- 相続放棄は原則3か月、相続税の申告は原則10か月で、別の制度
- 相続土地国庫帰属制度は、自分で買った土地には原則使えない
880万円という数字を見ると、私が思い浮かべるのはお金のことだけではありません。その880万円を貯めるために、母が働いてきた時間です。一生懸命働いて、貯めて、将来のために買った土地でした。
私は、母の人生を失敗だったとは思っていません。母が一生懸命働いてきたことも、私たち家族を支えてきたことも、失敗ではないからです。そして母は、元気なうちに自分の手で土地の整理をつけてくれました。私は、母の経験をただの悲しい思い出で終わらせず、これからの判断に生かしたいと思っています。
母の若い頃にはなかった情報を、今の私たちは手にできます。土地の価格も、法律上の規制も調べられ、困ったときに相談できる公的な窓口もあります。過去の判断は変えられなくても、これからの判断は変えられる。50代の私は、学び直すのに遅すぎることはないと考えています。
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母の土地の経験から、私が自分で調べて比べるために使っている証券口座【PR】
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母の土地の件から、私は販売する人に任せきりにせず、商品の中身や手数料を自分で調べて比べるようにしています。口座を作ったからといってすぐに何かを買う必要はないと考えていて、私自身は比べたうえで納得したものだけを少しずつ買っています。
私が実際に使っているのは次の2つです。どちらも1株(単元未満株)から買えるので、いきなり大きな金額を動かす必要はありません。
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それでは、またお会いしましょう。バフェットかおるでした。


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