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結論から書きます。JAL(日本航空)の2024年3月期の決算では、利益剰余金が3,069億円、自己資本比率が34.3%、ROEが11.1%でした。人に使えるお金そのものはある会社だと私は見ています。ただ、人員不足が実際に解消されたかどうかは、決算書の数字だけではわかりません。この記事では、2025年3月に私がこの記事を書いた時点でわかっていたことと、その後2026年3月期までに公表されたことを分けて整理します。
筆者は金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けておらず、個別の銘柄や特定の金融商品、特定の証券会社の利用を推奨するものではありません。本記事は2026年10月時点のものです。数字は公表資料で確認できたものだけを載せ、確認できなかったものは本文でそう書いています。
この記事を書き直した理由
この記事はもともと、社長個人に向けて「こうしてほしい」と呼びかける形で書いていました。公表された発言を引用したものではなく、私の希望を会社の方針のように並べてしまっていたので、書き直しました。
私が一人の投資家として書けるのは、公表資料で確認できることと、それを見て私がどう考えたか、この2つだけだと考えています。会社の中の人がどうすべきかを私が決める立場にはありません。
JALの2024年3月期の決算(当時の数字)
当時、私が確かめた数字を並べます。出どころは有価証券報告書をもとにした開示データです。
| 売上収益 | 約1.65兆円 |
| 営業利益 | 1,409億円 |
| 当期純利益 | 955億円 |
| 利益剰余金(内部留保) | 3,069億円 |
| 自己資本比率 | 34.3% |
| ROE | 11.1% |
コロナ禍のあいだに大きく傷んだ財務が、ここまで戻っていました。自己資本比率34.3%は、設備にお金がかかる航空会社としては低い水準ではないと私は受け取りました。
なお、当時の下書きには営業キャッシュフロー363億円、有利子負債1,884億円、配当性向34.3%という数字も書いていました。この3つは公表資料と照らして確かめられなかったので、今回は外しました。配当性向については、自己資本比率とまったく同じ数値が入っていたので、書き写しのときに取り違えたのだと思います。
その後、2026年3月期はどうなったか
この記事を最初に書いたのは2025年3月でした。それから1年半が経ち、2026年3月期の決算が出ています。
| 売上収益 | 2兆125億円(前期比+9.1%) |
| 営業利益 | 2,073億円 |
| 当期純利益 | 1,376億円 |
2024年3月期の1.65兆円から2兆円台に乗り、営業利益も1,409億円から2,073億円に増えています。需要の回復が売上に表れた2年だったと私は見ています。
ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。売上と利益が増えたことは、人員不足が解消したことを意味しません。人手が足りないまま便を飛ばせば、売上は増えても現場の負担は重くなります。決算書を見ているだけでは、そこは見えません。私はそこを混ぜないように気をつけています。
もう一つ気をつけているのは、利益剰余金を「いつでも使えるお金」と読み違えないことです。利益剰余金はこれまでの利益の積み上がりを示す会計上の数字で、同じ額の現金が金庫にあるという意味ではありません。航空会社の場合、その多くは機体や設備に形を変えています。「3,069億円あるのだから使えるはずだ」という当時の私の書き方は、少し乱暴でした。
公表されている社長の発言
当時の記事では、私が社長に言ってほしいことを勝手に書いていました。実際に公表されている発言を確かめ直したので、そこだけを書きます。
鳥取三津子社長の年頭所感は、2025年1月9日にトラベルボイス(観光産業ニュース)に掲載されています。そこでは「航空会社の根幹であります安全運航に努めてまいる所存です」として安全運航を中心に述べ、「最高のチームワークを作ることに心を尽くしてまいります」と結んでいます。2024年に国内外で起きた安全上の事案について、公衆に心配をかけたことと自社の関わりを重く受け止めるとも述べています。
この年頭所感では、採用計画や人員数、待遇についての言及はありません。人員不足にどう対応するかという具体的な方針は、この文書からは読み取れませんでした。私が探した範囲では、社長個人の名前で人員計画を語った公表文書は見つかっていません。
鳥取氏は2024年に社長に就任し、2026年6月時点の役員一覧でも代表取締役社長です。
パイロット不足について、公表資料で確認できたこと
当時の記事には「2025年までに200〜300人のパイロット不足」「CAは2024年時点で1,000人規模の不足」「地方空港では500人以上の不足」という数字を書いていました。今回あらためて出どころを探しましたが、どれも確かめられませんでした。ですので、この3つの数字は本文から外します。業界全体として人手が足りないという話はよく聞きますが、人数まで言い切れる根拠を私は持っていません。
確認できたのは、養成の仕組みのほうです。JALグループは鹿児島大学と日本エアコミューター(JAC)とともに、地域密着型パイロット人財創出プログラムを続けています。この連携協力協定はJALが2020年10月15日に公表しました。
鹿児島大学が2025年2月12日に出した資料では、2020年に始まった第1期の5年間でSKYCAMP(操縦飛行体験プログラム)に39人の学生が参加し、4年間で7人がパイロット候補者に選ばれてライセンス取得の訓練に入ったとされています。第2期の5年間を継続することも決まっています。
その後、第1期の参加者から実際に副操縦士が出ました。2026年5月15日にJACが4人に副操縦士の発令を行い、そのうち2人がSKYCAMPの第1期生です。2人は2026年5月20日に、鹿児島と屋久島、鹿児島と奄美を結ぶ路線で副操縦士として初めて乗務しています。2020年の協定から約5年半で、学生が副操縦士の席に座るところまで来たことになります。
養成にかかる費用については、1人あたり2,000万円から3,000万円、あるいは1億5,000万円といった金額を当時書いていました。公表資料には金額が示されていないので、これも外します。
客室乗務員の離職について、元CAの私が考えていること
私は客室乗務員として働いていました。ここから先は公表された統計ではなく、私が現場で見てきたことです。そのつもりで読んでいただきたいと思います。
深夜や早朝の乗務、時差のある路線、連続した勤務が重なると、体の回復が追いつかなくなります。若いうちは乗り切れますが、年数を重ねるときつくなります。私の周りで辞めた人の理由は、仕事が嫌いになったからではなく、この働き方を何十年も続ける自分が想像できなかったから、という話が多かったと記憶しています。
もう一つは、先が見えにくいことです。客室乗務員として長く働いた経験が、その先のどんな仕事につながるのかがはっきりしないと、辞めるか残るかの判断がしにくくなります。産休や育休のあとに戻ってくる道筋も、当時の私にははっきり見えていませんでした。
これは私個人の記憶であり、会社の制度が今どうなっているかを示すものではありません。
地上職員とグランドハンドリングについて
空港で手荷物や貨物を扱い、機体を押し出す仕事をグランドハンドリングと呼びます。当時の記事には、成田空港で週152便の追加要請に対して101便しか受け入れられなかったという話を、Nikkei Asiaを出どころとして書いていました。今回この記事を探し直しましたが、原文に行き当たらなかったので、数字は外します。出どころを確かめられない数字を残しておきたくありませんでした。
私が確かめられる範囲で言えるのは、空港の地上業務は外部に委託されている部分が大きく、そこで人が足りなくなると便を増やせないという構造があるということです。これは航空会社の決算書には「売上が伸びなかった」という形でしか出てきません。だから私は、増便の計画が出たときに、その会社が地上側の人をどう確保するつもりなのかを決算説明資料で探すようにしています。
人への投資は決算のどこに表れるか
当時の私は、内部留保3,069億円のうち150億円を使えばこれだけのことができる、という計算を記事に書いていました。採用300人に60億円、給与引き上げに100億円、メンタルヘルスに10億円、といった内訳です。
この部分は今回すべて外しました。理由は2つあります。1つは、内訳の数字がそれぞれ合っていなかったことです。たとえば「CA150人」と書きながら掛け算は100人で計算していたり、「60億円」と書いた合計が内訳を足すと56億円になっていたりしました。もう1つは、こうした配分を決めるのは会社であって、私が外から割り振る話ではないからです。
その代わりに、人への投資が決算のどこに出るのかを書いておきます。給与を上げれば人件費が増え、営業利益が削られます。採用を増やせば、その人が一人前になるまでのあいだは費用だけが先に出ます。つまり人への投資は、短期的には利益を押し下げる形で決算に表れます。
私は、ここで利益が少し減ることを悪いニュースとは受け取っていません。ウォーレン・バフェットのやり方を真似して投資を続けてきて、私が一番こわいと思うようになったのは、人が辞め続けている会社です。安全を預かる仕事で人が足りなくなると、取り返しのつかないことが起きかねません。短期の利益を守るために人を減らした会社が、その後どうなったかを私は何度か見てきました。
飲酒に関する事案を、私は組織の話として見ています
当時の記事では、飲酒に関する事案への処分の重さを「1回目は停職3カ月、2回目は降格」といった形で私が勝手に決めて書いていました。これは会社の規定ではなく私の思いつきでしたし、特定の個人を罰する話を外から書くことでもないので、外しました。
そのうえで、私が投資家として見ているのはこういうところです。航空会社でアルコールに関する事案が起きると、国の監査や業務改善の指示につながり、運航にも信用にも影響します。これは一人の不注意で終わる話ではなく、検査の仕組みがどうなっているか、申告しやすい空気があるか、疲れが溜まったまま乗務する状態が続いていないか、という組織の側の問題として扱われます。
ですので、私が決算説明資料や有価証券報告書で探すのは、処分の内容ではなく、安全に関する体制について会社が何を書いているかです。自己申告だけに頼らない検査の仕組みがあるか、休息時間の基準をどう置いているか。そこに具体的な記述があるかどうかを見ています。記述がないこと自体が、私にとっては一つの情報です。
なお、鳥取社長の2025年1月9日の年頭所感でも、述べられていたのは安全運航とチームワークでした。安全を前に置いた言い方をしていることは確認できましたが、それが現場でどう実行されているかは、外からは見えません。
私が気にしているのは、この費用を会社が「我慢して払うもの」と考えているか、「先に払っておくもの」と考えているかの違いです。前者だと、少し業績が悪くなったときに真っ先に削られます。後者なら続きます。決算説明資料の言葉の選び方に、その違いはいくらか表れると私は感じています。
投資家として私が確かめている3つのこと
航空会社を見るときに、私が決算のたびに確かめているのは次の3つです。どれも公表資料で確かめられることだけにしています。
1つめは、人件費が売上に対してどう動いているかです。売上が増えているのに人件費の比率が下がり続けている会社は、人を増やさないまま便を増やしている可能性があります。私はそれを「効率が良い」とは受け取らないようにしています。
2つめは、安全に関する記述の分量と中身です。有価証券報告書の事業等のリスクに、安全運航や人材確保がどう書かれているか。前の年と比べて書き方が変わっていないかを見ます。
3つめは、養成の仕組みが続いているかです。鹿児島大学との取り組みのように、5年、10年かかる仕組みを続けられているかどうか。第1期から副操縦士が出て、第2期も続くと決まったことは、私にとっては確認できる前進でした。
私はこの3つを見て、自分が持ち続けるかどうかを決めています。上がりますとも下がりますとも言えません。私はこう見ている、というだけの話です。
2025年3月時点の見方と、いまの見方の違い
当時の私は「JALは短期利益重視から人材重視の経営へシフトするべきである」と書いて記事を終えていました。言いたかったことは今も変わっていませんが、言い方を変えます。
私が当時考えていたのは、財務が戻ったのだから次は人にお金が回るはずだ、ということでした。その見通しが当たったかどうかは、1年半経った今でもはっきり言えません。売上と利益は確かに増えました。鹿児島大学との養成プログラムは第2期に入り、第1期生が副操縦士になりました。ここは確認できます。一方で、客室乗務員や地上職員の人数や離職率がどうなったかを示す公表資料は、私が探した範囲では見つかりませんでした。
わからないものはわからないと書いておく。これはウォーレン・バフェットのやり方を真似していて一番身についたことだと思っています。わからないまま大きく買うことはしません。
この記事に書いたのは私の保有状況と考え方の紹介であり、推奨ではありません。航空会社は燃料費と為替と需要に大きく動かされる業種で、私自身も中心には置いていません。
この業種を私が中心に置かない理由
航空会社は、燃料費と為替と需要という、どれも自分では決められないものに利益が左右されます。原油が上がれば費用が増え、円安になれば海外での費用が膨らみ、感染症や災害で人が動かなくなれば売上が消えます。2020年から2022年にかけて、航空会社の決算がどうなったかを私は見ていました。
私が長く持ちたいと思うのは、景気が悪いときでも売上がそれほど減らない会社です。電気やガス、通信、生活に必要なものを扱う会社がそれにあたります。航空会社はそこには入りません。ですので私の中では、勉強として決算を追う会社であって、資産の中心に置く会社ではありません。
元客室乗務員として思い入れはあります。ただ、思い入れで会社を選ぶと、都合の悪い数字を見なくなります。私はそれを一度やって失敗したので、好きな会社ほど厳しく数字を見るようにしています。
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この記事で並べた数字は、どれも証券口座の中から見られる決算資料で確かめたものです。人件費の比率や安全に関する記述を自分の目で追えるようにしておくと、ニュースの見出しに引っぱられにくくなると私は感じています。
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それでは、またお会いしましょう。バフェットかおるでした。

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