本業消失・巨額赤字からのV字回復
1億円への道
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まず大事な考え方をお伝えしておきます。配当性向が上がること自体は「危険信号」と捉えられがちですが、見方を変えれば「業績が一時的に落ちても、株主への約束(配当)を守り抜こうとする経営の覚悟」の表れでもあります。問題は「その間に立ち直る力(自己資本・技術・ブランド)が残っているか」です。これがある企業は、嵐が過ぎれば必ず戻ってきます。
本業消失・巨額赤字からのV字回復
1. 日立製作所(6501) 2009年3月期に7873億円という、当時の日本の製造業で過去最大の最終赤字を計上。株主資本比率は11.2%にまで低下し、経営は崖っぷちでした。誰もが「総合電機はもう終わり」と言いました。しかし不採算事業を売却し、社会インフラとDXに集中。2009年の製造業最大の赤字から驚異のV字回復を遂げ、時価総額で一時ソニーを抜いて国内トップクラスに。今や日本を代表する優良株です。
2. 富士フイルム(4901) 本業の写真フィルムが消滅するという、企業にとって最悪の事態を経験。2000年を境に写真フィルム市場が縮小し始め、当時写真関連で売上の6割・利益の3分の2を稼いでいたものが、年率20〜30%で急降下し、10年後には10分の1にまで縮小しました。ライバルの米コダックは倒産。しかし富士フイルムはフィルムで培った技術資産を、メディカル・化粧品・医薬品・電子材料に応用する戦略を選択し、事業転換に成功。今や売上3兆円の多角化企業です。
3. ソニーグループ(6758) かつて「テレビが売れない」「もう昔のソニーではない」と株主が大量に去った時代がありました。平井改革・吉田改革を経て、ゲーム・音楽・半導体・金融の複合企業として復活。今や日本を代表する高収益企業です。
これら3社に共通するのは、「最悪の時期にも事業の核(技術・ブランド・人材)を捨てなかった」ことです。アサンテのシロアリ防除、ジャックスの信販ノウハウも、まさにこの「核」にあたります。
危機を乗り越え配当を守り抜いた企業
長い歴史の中で業績の谷を経験しながら、財務の健全性を保ち回復してきた企業として、以下も挙げられます(各社の詳細な決算数値は動画化の際にIR資料で再確認することをおすすめします)。
- JT(2914)/ 5. キヤノン(7751)/ 6. ブリヂストン(5108)/ 7. 武田薬品工業(4502)/ 8. 三菱UFJ(8306)/ 9. 三井住友FG(8316)/ 10. オリックス(8591)/ 11. 第一生命HD(8750)/ 12. 東京海上HD(8766)/ 13. KDDI(9433)/ 14. NTT(9432)/ 15. キリンHD(2503)/ 16. 積水ハウス(1928)/ 17. 三井物産(8031)/ 18. 伊藤忠商事(8001)/ 19. 住友商事(8053)/ 20. J-POWER(9513)/ 21. 三菱HCキャピタル(8593)/ 22. JR九州(9142)/ 23. アマダ(6113)/ 24. 日本特殊陶業(5334)/ 25. MS&ADインシュアランスHD(8725)
※特に商社(三井物産・伊藤忠・住友商事)は、後で触れるバフェットの事例と重なる「オワコンと言われた業界」の代表格です。
【海外企業】
バフェットの「危機こそチャンス」
1. ゴールドマン・サックス(GS) リーマンショックのまさに渦中、2008年9月、誰もが金融株から逃げ出す中でバフェットが動きました。50億ドル(現在のレートで約4070億円)を出資し、優先株の配当として年5億ドルを受け取る条件でした。出資が発表された後もゴールドマンの株価は半減しましたが、11月末には持ち直し、その後は安定。最終的にこの出資から帳簿上の利益を含めて約37億ドルの利益を得ました。まさに「他人が恐れているときに貪欲であれ」です。
2. バンク・オブ・アメリカ(BAC)/ 3. ゼネラル・エレクトリック(GE) バンク・オブ・アメリカも初期の株価低迷期に優先株を引き受け、のちに株価が回復した段階でワラントを行使。GEも同様にバフェットにとって”値千金”のディールとなりました。
4. アップル(AAPL) 今でこそ世界最大企業ですが、1997年にジョブズがCEOに復帰した直後、赤字が続き資金も尽きかけ、本当にいつ倒産してもおかしくない状態でした。マイクロソフトが1億5000万ドル出資し、そのお金がなければあと10日ほどで倒産していたと言われます。デルの創業者は「もし自分がジョブズなら、アップルをたたんで株主に金を返す」と発言したほどでした。バフェットが大量保有を始めたのはずっと後、誰もが価値を認めた後ですが、それでも巨額の利益を生んでいます。
5. マイクロソフト(MSFT) 意外に思われるかもしれませんが、2014年にナデラがCEOに就任するまで、技術革新に追いつけず14年間にわたるほぼゼロ成長期が続いていました。ナデラ就任以来、株価はほぼ10倍にまで増加。「停滞している」と見放されていた巨人の復活劇です。
6. IBM 1993年、倒産の瀬戸際にあったIBMに、外部から初めてのトップとしてガースナーがCEOに就任。ハード企業からサービス・ソリューション企業へと変貌させ、復活させました。
その他の海外復活・優良企業
- P&G / 8. ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ) / 9. コカ・コーラ(KO) / 10. アメリカン・エキスプレス(AXP) / 11. マクドナルド(MCD) / 12. ディズニー(DIS) / 13. スターバックス(SBUX) / 14. ナイキ(NKE) / 15. インテル(INTC) / 16. ネットフリックス(NFLX) / 17. アメックス以外の金融としてJPモルガン(JPM) / 18. ファイザー(PFE) / 19. メルク(MRK) / 20. ユニリーバ(UL)
― 株価ではなく「立ち直る力」を見る投資 ―
「アサンテやジャックスを持っているけれど、株価も利益も下がってきて、ちょっと不安です」と。今日は、その不安にまっすぐ向き合う回にしたいと思います。
最初に、今日のスタンスをはっきりさせておきますね。今日お話しするのは、私が有価証券報告書や資料をもとに整理した「参考版」です。そして、私の意見の部分は「私はこう見ています」と、事実とはっきり分けてお話しします。最終的な投資の判断は、必ずご自身でなさってくださいね。
「配当性向が上がる」と、よく危険信号のように言われます。でも、見方を変えると、これは「業績が一時的に落ちても、株主への約束である配当を守り抜こうとする、経営の覚悟」の表れでもあるんです。本当に大事なのは、その間に「立ち直る力」――自己資本、技術、ブランド――が残っているかどうか。私はそう考えています。これが残っている会社は、嵐が過ぎれば、また戻ってくる可能性が高い。
今日のテーマは、ここに尽きます。「大切なのは、目先の株価や配当性向ではなく、その会社に『立ち直る力』があるかどうか」。
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第1章 ― アサンテは「本業」で稼げているのか
まず、アサンテから見ていきましょう。シロアリ防除を中心に、湿気対策や地震対策など、住まいのメンテナンスを手がけている会社ですね。
不安に思っている方は、「利益が減った」というニュースで心配されていると思います。確認できる事実をお伝えします。直近の2026年3月期のアサンテは、売上高は増えている一方で、営業利益・経常利益・純利益は、いずれも減益でした。さらに会社は、続く2027年3月期も、さらなる減益を見込むという見通しを示しています。利益のトレンドは、ここ最近は弱含みです。
では、商売そのものがダメになったのか。私はそうは見ていません。本業のシロアリ防除を中心に、湿気対策、地震対策と、お客さんからお金をいただく柱は、きちんと立っています。
利益が減った理由について、私の見方をお話しします。天候が不安定でシロアリの活動が読みにくかったこと、テレビCMやWEB広告など宣伝にお金をかけたこと、新しいシステムを導入する初期投資が先に出たこと。これらが重なった結果だと受け止めています。つまり「商売が傾いた」というより、「未来のためにお金を使った」面が大きいのではないか、と。
ただし、ここは念を押します。会社自身が、この先もしばらく減益を見込んでいます。ですから「もう底を打った」と楽観しすぎるのも違う。利益のトレンドが下向きである事実は、これからの決算で一緒に見守っていきましょう。
そのうえで財務です。確認できる事実として、アサンテの自己資本比率は68%台と、非常に高い水準です。借金に追われている会社では、まったくありません。
第2章 ― ジャックスと、三菱UFJ銀行の出資
次に、ジャックスです。信販・クレジットの会社ですね。
こちらも確認できる事実からお話しします。直近の中間決算、2025年9月の中間期のジャックスは、営業収益は増加しましたが、利益は減益でした。さらに、その前の通期決算からも減益の傾向が続いています。利益が伸び悩んでいる事実は、ここでもはっきりお伝えしておきます。
ただ、本業の規模を示す「取扱高」――お客さんがジャックス経由で使ったお金の総額は、この中間期で増えています。海外事業は低迷していますが、会社はそこに手を入れる構造改革を進めています。利益が減った主な理由は、システムへの投資費用と、金利上昇による資金調達コストの増加です。これも確認できる事実です。
そして、今日ぜひお伝えしたいニュースがあります。少し経緯を整理しますね。
ジャックスは、もともと2008年から三菱UFJ銀行の持分法適用会社でした。出資比率は約2割です。そして2025年3月、三菱UFJ銀行が、ジャックスに約390億円を追加出資すると発表しました。第三者割当増資という形で、新しい株を引き受けるものです。その払い込みが完了したのが、2025年9月12日。これによって、三菱UFJ銀行グループの議決権ベースの出資比率は、約2割から約4割にまで引き上げられました。この一連の流れは、いずれも確認できる事実です。そして、この増資の効果もあって、ジャックスの自己資本比率は6.5%から7.6%へと改善しました。
私の見方を述べます。日本最大級の金融グループであるMUFGが、もともと2割を持っていたところから、さらに約390億円を入れて4割近くまで関与を深める。これは、その会社の将来性を一定程度評価したサインだと、私は受け止めています。後ろ盾が、もう一段強くなった、と言ってもいいと思います。
この「プロが、わざわざ大きなお金を出した」という話、実はこのあと出てくる主役、バフェットの話と、構図がよく似ているんです。それは後ほど。
ここで、ひとつ補足を。「自己資本比率7.6%って低くないですか?」と思われた方、とても鋭いです。でもこれは、信販や銀行など金融業に共通する特徴なんです。金融業は「お金を借りて、それをお客さんに貸して、その利ざやで稼ぐ」のが商売。だから借入が大きくなるのは当たり前で、製造業のアサンテ(68%台)と同じ物差しで比べてはいけない。ここは誤解されやすいので、おさえておいてください。
第3章 ― 歴史を振り返る ― 大きな危機から立ち直った会社
さて、ここからは歴史を振り返ります。「利益が減った」くらいで不安になる必要があるのか。もっと大きな困難から立ち直った会社を、見ていきましょう。
日立製作所
まず、日立製作所です。
確認できる事実です。リーマンショック直後の2009年3月期、日立は製造業として当時過去最大となる、7,873億円の最終赤字を計上しました。そして、前年は20%以上あった連結の自己資本比率が、「11.2%」へと急落しました。自己資本が吹き飛ぶ寸前、という状況です。
当時、市場では「重電や総合電機はもう沈没船だ」とまで言われ、株価も大きく売られました。会社を解散したときの価値とされるPBR1倍を、大きく割り込む水準まで沈んでいた、と言われています(このPBRの正確な数字は、私自身が一社一時点まで厳密に裏取りしたわけではないので、「1倍を大きく割り込むほど安く放置されていた」という事実レベルでお伝えします)。
ところが日立は、不採算な事業を売り、社会インフラとデジタル、いわゆるDXに集中する大改革を進めました。その後、業績は回復に向かい、今では日本を代表する優良企業のひとつとして語られるまでになりました。株価も、当時の安値の水準から、大きく上昇しています。
あのとき「沈没船だ」と恐怖で売った人と、立ち直る力を信じて持ち続けた人。その後、大きな差がついたのは事実です。
正直にお伝えすると、当時のPERやROE、流動比率といった細かい指標を一式そろえて、今のアサンテやジャックスときれいに並べて比較するところまでは、私も確認しきれていません。ですから、ここでは数字の一覧比較ではなく、「あれほど厳しい状況からでも立て直した会社がある」という、確かな事実をお伝えしたいんです。
富士フイルム
もう一社、富士フイルムです。
確認できる事実として、富士フイルムは、本業だった写真フィルム事業の縮小をきっかけに、医療・化粧品・医薬品・電子材料といった分野へ、事業の構造を大きく転換しました。世界最大手だったアメリカのコダックが、この変化に対応できず経営破綻するなかで、富士フイルムは別の道を切り開いて生き残ったんです。
なお、よく「写真関連で売上の6割・利益の3分の2を稼いでいた」「市場は10年後に10分の1まで縮んだ」という話が語られます。私も以前そう話していましたが、今回これを一次資料で厳密に確認することができませんでした。ですので今日は、その具体的な数字は使いません。「写真フィルムへの依存度が非常に高い時期から、事業構造の転換で大きく姿を変えた」という、確認できる事実だけをお伝えします。
ソニー(本業の苦境から)
そして、ソニーです。ソニーも、かつて「テレビが売れない」「もう昔のソニーではない」と言われ、株主が大量に去った時代がありました。その後、平井改革・吉田改革を経て、ゲーム・音楽・半導体・金融を組み合わせた会社として復活しました。今では日本を代表する高収益企業のひとつです。(このソニーについては、第6章でもう一段、踏み込んだ話をします。)
この日立・富士フイルム・ソニーの3社に、私は共通点を感じています。それは、最悪の時期にも、事業の核――技術・ブランド・人材を、捨てなかったことです。
そして、ここが大事なんですが、アサンテのシロアリ防除のノウハウ、ジャックスの信販のノウハウも、まさにこの「核」にあたると、私は思っています。本業が大きく縮むような困難からでも、この核さえ残っていれば、道は開ける。私はそう受け止めています。
第4章 ― バフェットが「恐怖の中で動いた」日
ここからは、投資家としての姿勢の、最高のお手本です。視聴者のみなさんが、一番ワクワクするところかもしれません。
確認できる事実をお話しします。2008年の金融危機のさなか、ウォーレン・バフェットは、ゴールドマン・サックスに50億ドルの優先株投資をしました。当時は、信用市場がほぼ凍りつき、世界中の金融機関が非常に厳しい状況に追い込まれていた時期です。
当時の投資銀行は、危ない経営をしていました。市場から借りたお金で、自己資本の何倍もの資産を抱え込む、いわゆる「高レバレッジ経営」です。市場が止まった途端、資金繰りが行き詰まる危うさがありました。生き残っていた最大手のゴールドマンでさえ、安全とは言えなかった。誰もが金融株から逃げ出していた、まさにその時に、バフェットは逆に動いたんです。
すごいのは、ここからです。バフェットが「出資する」と発表した後ですら、市場のパニックは収まらず、ゴールドマンの株価はさらに半減したと言われています。当時、金融株を買うことは「落ちてくるナイフを掴む」――つまり、自分から大火傷をしに行くような行為だと見られていました。PERやPBRといった指標すら、意味をなさないパニック相場だったんですね。
そして、この投資について、よく「最終的に約37億ドルの利益を得た」と語られます。これは広く知られた数字ですが、私自身が厳密に裏取りできたわけではありません。ですので、ここでは金額を断定せず、「結果として大きな利益につながったと言われている」という言い方にとどめておきます。
大事なのは、金額そのものよりも、姿勢です。バフェットは「株価が下がったから」買ったのではありません。「この会社には、立ち直る力――ブランドと人材と事業の本質がある」と見抜いたから、みんなが恐怖で投げ売っている時に、あえて買ったんです。
そして、思い出してください。第2章でお話しした、ジャックスに三菱UFJ銀行が出資を深めた話。私には、この構図が重なって見えます。プロは、目先の不安ではなく、その会社の本質を見て、お金を出す。そういうことだと、私は思うんです。
第5章 ― 「商社はオワコン」と言われた時代
もうひとつ、バフェットの慧眼を示す例をお話しします。商社です。
2010年代の半ば、商社は「オワコンだ」「資源価格次第のギャンブルだ」と、それはもう散々に言われていました。
確認できる事実です。2015年から2016年にかけての資源価格の大暴落で、商社は市場から見放されました。2016年3月期、三井物産は創業以来初となる834億円の最終赤字に転落。住友商事も2014年度に732億円の最終赤字を出しています。三菱商事も、この時期に赤字に転落しました。「資源に依存したビジネスモデルはもう限界だ」と言われ、各社の株価は、解散価値とされるPBR1倍を大きく割り込む、極端に安い水準で放置されていました。
そんな、誰もが見放した「絶望期」のあとに、バフェットは動きました。2020年、日本の5大商社――伊藤忠・丸紅・三菱商事・三井物産・住友商事への出資を公表したんです。みんなが「商社は古い」と言っていた、まさにその時にです。
その後、商社の評価は大きく変わっていきました。各社は株主還元を強化し、自社株買いや増配を進めています。
なお、5大商社それぞれの当時のPERやPBR、ROEといった指標を、横並びの一覧表にするには、各社の当時のIR資料を一つひとつ確認する必要があります。今日はそこまでそろえていませんので、数字の一覧ではなく、「苦戦の時期から、評価が大きく変わった」という事実だけをお伝えします。
私自身、ポートフォリオに伊藤忠・三井物産・住友商事を持っています。「オワコンと言われた時代を生き抜いてきた商社」を、私自身も応援し続けてきました。
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