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航空機の脱出について、よく聞く「90秒ルール」は、航空会社の運航の決まりではなく、航空機の設計と審査の基準です。アメリカの連邦規則14 CFR 25.803に、座席数が44を超える旅客機は模擬の緊急状態で90秒以内に脱出できることを実証しなければならないと書かれています。この記事では、その条文と試験条件、それに各社が配っている安全のしおりで誰でも読める内容だけを整理しました。前の版に入っていた出どころのわからない数字は、すべて外しています。
筆者は金融商品取引業のうち投資助言・代理業の登録を受けておらず、個別の銘柄や特定の金融商品、特定の証券会社の利用を推奨するものではありません。本記事の数字は2026年10月時点のものです。筆者は元日本航空の客室乗務員ですが、本記事は在職中に社内で知った運用や手順ではなく、公表されている法令・規則、各社の安全のしおり、公的機関の資料で確認できる範囲だけで書いています。実際の緊急時の行動は、そのときの乗務員の指示に従ってください。
「90秒ルール」の根拠になっている条文
90秒という数字の出どころは、アメリカの連邦規則にあります。14 CFR 25.803(emergency evacuation)の(c)項に、次の内容が定められています。
- 対象は「座席数が44を超える旅客機」(運航規則で必要とされる乗務員の数を含めて数えます)
- 模擬の緊急状態のもとで、機内から地上へ90秒以内に脱出できることを実証すること
- 試験の基準は、同じPart 25の付録J(Appendix J)に定められた条件を用いること
日本でも、型式証明の審査基準である耐空性審査要領に、同じ趣旨の脱出実証の規定が置かれています。
ここで押さえておきたいのは、これが航空機を設計し、審査するときの基準だということです。「どの事故でも90秒で全員が外に出られる」という意味ではありません。前の版では、この区別がはっきり書かれていませんでした。
付録Jが決めている試験の条件
90秒という数字だけが知られていますが、どういう条件で測るのかまで決められています。付録Jに定められている条件のうち、公表されている文面で確認できたものを挙げます。
- 参加する人のうち、40%以上が女性であること
- 参加する人のうち、35%以上が50歳を超えていること
- 乳児の代わりには人形を使うこと
- 非常照明が点く前の機外の明るさは0.3フートキャンドル以下。試験中に明るくなってよいのは非常照明によるぶんだけ
- 機内の照明は、非常照明だけで行うこと
- 全員が座席ベルトを締めた状態から始めること
- 通路には手荷物を置いた状態にすること
- 参加者に事前の練習をさせないこと
私がこの条件を読んで意外だったのは、年齢や性別の割合まで決めてあるところでした。若くて身軽な人ばかりで測ってもしかたがない、ということだと思います。暗いなかで、通路に荷物が転がっている状態から始める、という条件も、実際の事故を想定したものに見えました。
それでも、これは条件を決めて行う実証試験です。自分が乗る便でそのまま再現されるものではありません。
安全のしおりに書かれていること
座席の前に差してある安全のしおりは、各社が公表している資料です。社内の決まりではなく、誰でも手に取って読めます。内容は会社や機種で違いますが、共通して載っているのは次のような項目です。
- 自分の座席から見た非常口の位置(しおりには機内の図が載っています)
- 座席ベルトの締め方と外し方。金具を持ち上げて外す形で、車のベルトとは違います
- 衝撃に備える姿勢の取り方
- 酸素マスクが下りてきたときの使い方
- 救命胴衣の着け方。多くの会社のしおりには、ふくらませるのは機外に出てから、と書かれています。機内でふくらませると通路を通れなくなるためです
- 脱出スライドを使うときの注意。かかとの高い靴は脱ぐよう書かれているものが多いです
- 荷物を持たずに脱出すること
煙が出ている場面について、低い姿勢を取るよう書かれているしおりもあります。ただ、書き方は会社ごとに違いますので、自分が乗る便のしおりを見るのが確かです。
荷物を持たずに出る、という一点について
2024年1月2日、羽田空港のC滑走路で、新千歳発羽田行きの日本航空516便と、海上保安庁の航空機JA722Aが衝突する事故が起きました。内閣府の『交通安全白書』(令和6年版)には、日本航空機側は乗員と乗客379名のうち16名が負傷等、海上保安庁機側は乗員6名のうち5名が死亡と記されています。運輸安全委員会による調査が行われているとも書かれています。
この事故について、原因や対応の評価を私が書くことはしません。調査の結果が出るのを待つべきところです。ここで触れたのは、379名という人数が公的な資料に記録されている、という事実だけです。
そのうえで、安全のしおりに「荷物を持たずに」と書かれている理由については、しおり自身が通路と出口をふさがないためと説明しています。私はこの一行を、乗るたびに読み直すようにしました。
前の版から外した数字と記述
この記事には以前、次のような数字や記述が入っていました。出どころを確かめられなかったので、書き直すのではなく外しました。
- 「成田空港での実証訓練データ」として載っていた表。非常口までの歩数を確認すると脱出時間が平均23秒短くなる、靴を履いているとガラス片による負傷率が58%下がる、乗務員の声掛けでパニック発生率が72%下がる、という3つの数字です。いずれも出どころを確認できませんでした
- 事故に遭う確率として挙げられていた「毎日乗っても666年に1回」「自動車事故で死亡する確率は1万分の1」「宝くじ1等は1億分の1」という比較
- 「生存率を確実に高める」という言い方。確実と書ける根拠を持っていません
- 90秒ルールの始まりを特定の年とした記述。条文は確認できましたが、定められた経緯と年は確認できませんでした
- 客室乗務員の訓練内容として挙げられていた項目。私が在職中に知ったことを書く立場ではないため外し、公表されている安全のしおりの話に置き換えました
- 乗務員の権限についての記述。公表資料で確かめられませんでした
数字が消えると記事は地味になりますが、確かめられない数字を残すほうがよくないと考えました。
私が自分の席でしていること
ここから先は、何かを勧める話ではなく、私がそうしている、というだけの話です。
- 座ったら安全のしおりを実際に出して開きます。読んだつもりになっていることが多かったので、手に取る習慣にしました
- 自分の席から一番近い非常口まで、座席の列が何列あるかを数えます。暗くても数えられるようにしておきたいからです
- 離着陸のあいだは靴を履いたままにしています
- 座席ベルトは、座っているあいだはゆるめでも締めたままにしています
- 安全のビデオは、何度も見たものでも最後まで見ます
どれも大した手間ではありませんでした。手順が先に決まっていて、しおりを開けば自分で確かめられる、というのが航空機のいいところだと思っています。
事故の話と投資の話は分けておきます
最後にひとつだけ書いておきたいことがあります。航空機の事故を、投資の判断の材料にはしません。亡くなった方や負傷された方がおられる出来事を、株価や会社の見通しの話に結びつけるのは、私はしたくないと思っています。
この記事で書いたのは、公表されている条文としおりを自分で読んでみたら何が書いてあったか、というところまでです。
参考にした資料
- 14 CFR 25.803(emergency evacuation)および同Part 25 付録J
- 耐空性審査要領(型式証明の審査基準)
- 内閣府『交通安全白書』令和6年版
- 各航空会社が機内で配布している安全のしおり
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飛行機では、手順が先に決まっていて、しおりを開けば自分で確かめられます。お金のことも同じようにしたくて、私は資料を自分で開いて確かめるようにしました。そのとき使っている口座を参考までに書いておきます。
私が実際に使っているのは次の2つです。どちらも1株(単元未満株)から買えるので、いきなり大きな金額を動かす必要はありません。
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