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元JAL客室乗務員バフェットかおるが、50代からでも始められる高配当株投資をわかりやすく解説しています。

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武田薬品は「たこ足配当」なのか|減配リスクとトランプ薬価引き下げの影響を数字で確かめました

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1億円への道
この記事は約18分で読めます。
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こんにちは、バフェットかおるです。

武田薬品について、「たこ足配当ではないのか」「減配した瞬間に大暴落しないか」というご質問をいくつもいただきました。あわせて、トランプ大統領の薬価引き下げの影響、中外製薬との時価総額の差、NTTの株式併合の話まで届いたので、この記事で一つずつ数字を見ていきます。

先に結論を書きます。私が調べた範囲では、武田の配当はいまの現金の出入りで見るかぎり払える範囲に収まっていました。営業キャッシュフロー1兆円超に対して配当は3,119億円、およそ3割です。だから私は保有を続けていますが、減配リスクがゼロだとは考えていません。

※本記事は私個人の考えと調べたことの紹介であり、特定の銘柄・商品の購入を推奨するものではありません。武田薬品について書いている部分も、私の保有状況の紹介であって、購入をおすすめするものではありません。当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けていません。数字は記事作成時点で公表されていたもので、今後変わります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

配当の中身そのもの(配当利回り、新薬のパイプライン、PBRなど)は「たこ足配当じゃないの?」武田薬品4502を保有中の方へ。数字で徹底解説に分けて書いているので、配当の持続性だけを知りたいときはそちらが早いと思います。この記事は、いただいた質問に一つずつ答える形で進めます。

この記事の内容は、YouTubeの動画でもお話ししています。

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  1. この記事で確かめたこと
  2. 質問1:日本初の画期的な新薬が出る会社の株が、じりじり下がっています
    1. じりじり下がるときの流れ
    2. 期待で上がったあと、思うように進まなかった会社の例
    3. 私が見ている3つのこと
  3. 武田のM&Aは「他社で止まった開発を拾って仕上げる」形でした
    1. シャイアー買収(2019年)
    2. マーベリック・セラピューティクス買収(2020年)
    3. 事業の買収でポートフォリオを強くしてきた
    4. なぜ武田にできるのか
  4. 質問2:トランプ大統領の薬価引き下げで、武田はどうなるのか
    1. 正確には「一律20%」ではなく最恵国待遇(MFN)という政策です
    2. 米国の薬価を高くしていたのはPBMという中間業者でした
    3. 政策の本丸は、PBMを飛び越えて直接売ることでした
    4. 製薬会社に約束されている3つの見返り
    5. 武田への影響を数字で見ると
    6. それでも残るリスクと、法的な不確かさ
  5. 質問3:減配した瞬間に大暴落しないでしょうか
  6. NTTの株式併合の案内は、会社の提案ではなく株主提案でした
    1. 株式併合とは何か
  7. 売上1位の武田が、時価総額では中外製薬に離されている理由
    1. 売上では武田が1位、中外は5位
    2. それでも時価総額で中外が1位になる理由
  8. ROEで見るか、ROICで見るか
  9. 格付けは、どこを見ると上がるのか
    1. 格付けが上がる条件
    2. 格付けと機関投資家のお金
  10. まとめ:私が武田を持ち続けている理由と、持ち方
  11. あわせて読みたい関連記事
  12. 1社に賭けないための、細かい買い方【PR】

この記事で確かめたこと

  • 新薬の期待で上がった会社の株が、そのあとじりじり下がるのはなぜか
  • 武田のM&Aが「他社で止まった開発を拾って仕上げる」形になっていること
  • トランプ大統領の薬価引き下げで、本当に削られるのは誰か
  • 減配したらどうなるのか、いまの現金でどこまで払えるのか
  • NTTの株式併合の案内は何だったのか、武田と関係があるのか
  • 売上1位の武田が、時価総額では中外製薬に大きく離されている理由
  • ROEとROIC、格付けをどう見ているか

質問1:日本初の画期的な新薬が出る会社の株が、じりじり下がっています

これは製薬の会社でよく起きることだと私は理解しています。新薬の発売への期待が先に株価に織り込まれ、そのあとは「本当に売れるのか」「利益がどこまで伸びるのか」を見られて、期待が弱まるとじりじり下がっていく、という流れです。

「日本初」「画期的」という言葉は強いのですが、株価は将来の利益を先に買います。だから期待が高すぎると、逆に失望されやすいのだと受け止めています。製薬業界では特許切れや薬価改定で既存の薬の収益が削られることもあり、新薬が1本出ても会社全体の利益を押し上げるまでに時間がかかることは珍しくありません。

じりじり下がるときの流れ

  • 発売前に期待で上がる
  • 承認や発売が近づくと材料出尽くしになる
  • 発売後の売れ方が期待に届かないと、下げが続く

期待で上がったあと、思うように進まなかった会社の例

過去に新薬やパイプラインへの期待で注目された会社としては、エーザイ(開発戦略の変更が重しになった局面がありました)、サンバイオ(承認期待で急騰したあと承認の遅れで大きく崩れた代表例)、住友ファーマ(期待で上がった時期のあと業績面で失速)、小野薬品工業、塩野義製薬、協和キリン、参天製薬、田辺三菱製薬などがあります。武田も、新薬期待よりも買収後の負担や減損・償却の重さを意識されやすい会社です。

思うように進まなかった理由は、承認が遅れる、発売後の立ち上がりが弱い、競合薬に負ける、薬価や保険収載で利益率が削られる、のどれかに集まります。売上が立つ前に将来の利益を織り込むので、少しの遅れでも下げが大きくなりやすいのだと思います。

私が見ている3つのこと

期待で上がったのか、実力で上がったのかを分けるために、私は次の3つを見ています。

  • 株価が上がる前に、承認・申請・治験結果があったか
  • その薬が会社全体の売上の何割を担う見込みだったか
  • 発売後に販売数量や採算が伸びたか、材料出尽くしになったか

新薬の期待で上がることは本当にありますが、そのあと期待が外れて下がることもかなり多い。だから私は、何に期待して上がったのかを確かめてから考えることにしています。

武田のM&Aは「他社で止まった開発を拾って仕上げる」形でした

「うまくいかなかった会社を買収して実績を取り込んでいる」という見方をいただきましたが、調べてみるとこれは武田のM&A戦略の中心にあるものでした。膨大なデータと開発力を持っているので、他社のパイプラインを評価して必要な部分を取り込めるのだと理解しています。

シャイアー買収(2019年)

いちばん大きい例です。希少疾患の領域で高い技術力を持っていたシャイアーを取り込み、事業の土台を強くしました。日本企業による海外企業の買収としては今でも記録的な大きさで、武田を世界規模の会社に押し上げた買収です。

マーベリック・セラピューティクス買収(2020年)

がん治療の領域で技術力を持つ米国の会社です。2017年から技術協力をしていたので、武田は早い段階からパイプラインを評価できていました。この買収で、他社では中途半端になっていた有望なプロジェクトを自社のものにしています。

事業の買収でポートフォリオを強くしてきた

米国の製薬会社から事業を買い取り、得た製品を自社の製造・販売の網に組み込んでいます。ほかの会社で行き詰まったプロジェクトや中途半端なパイプラインを拾い上げ、自社の力で仕上げていく。これが武田のやり方だと私は受け止めました。

なぜ武田にできるのか

  • 資金力:シャイアー買収で世界最大級の規模になり、その後の資金繰りと債務管理で信用力を高めています
  • 開発力とデータ力:臨床開発にデータサイエンスを入れ、意思決定を速くしています

質問2:トランプ大統領の薬価引き下げで、武田はどうなるのか

「アメリカの大手製薬会社の新薬の価格が20%も引き下げさせられた」というニュースについてのご質問でした。ここは順番に見ていきます。

正確には「一律20%」ではなく最恵国待遇(MFN)という政策です

トランプ大統領が打ち出したのは最恵国待遇(MFN)という薬価政策で、2025年5月12日に、米国内の処方薬価格を他の先進国と同水準まで引き下げることを目的とした大統領令が出ています。一律20%という決まった数字ではなく、他の先進国で売られている一番安い値段に合わせる、という考え方です。

米国の患者は処方薬に他の先進国の3倍近い金額を払っていることも多いので、最終的には3分の1くらいまで下げるのが目標のイメージになります。

そして実際に動いたのは、強制というより個別交渉での合意でした。ファイザー、アストラゼネカ、イーライリリーなど14社が、値下げと引き換えに一定期間の関税免除を得る形で政権と合意しています。100%関税というムチと、関税免除というアメを組み合わせて各社に下げさせた、という構図です。専門家の分析では、企業側の負担は比較的軽く、メディケイド限定の割引や、もともと予定されていた国内投資の表明が中心だったと見られています。

米国の薬価を高くしていたのはPBMという中間業者でした

米国では、薬は製薬会社からPBM(薬剤給付管理業者)を通り、保険会社・薬局を経て患者に届きます。このPBMが価格をつり上げている、というのが問題の中心です。

たとえるなら、農家(製薬会社)が作った野菜が食卓に届くまでに大きな卸売業者が一社だけ間に立って、値段を全部決めている状態です。しかも大手はCVS Caremark、Express Scripts、OptumRxの3社で市場の約8割を握る寡占で、大手の健康保険会社と一体になっています。

仕組みはこうです。PBMは製薬会社に「うちのリストに載せたければリベート(裏の割引)を払え」と求め、リベートをたくさん払う薬ほど患者に届きやすくなる。だから製薬会社は定価をわざと高くして、裏でPBMにお金を渡すことになります。

米当局も問題視しています。FTC(米連邦取引委員会)の中間報告は、支配的なPBMが薬価を引き上げ、特にがん治療薬で患者に過剰請求する仕組みを明らかにしました。FTCは3大PBMのリベート慣行が患者のコストをつり上げ市場を歪めているとして提訴すると発表しています。米国研究製薬工業協会のCEOも2025年7月に同じ主張をしていました。「薬価引き下げで打撃を受けるのは中間業者だ」という見方は、ここを指しているのだと私は理解しました。

政策の本丸は、PBMを飛び越えて直接売ることでした

報道では薬価20%引き下げが目立ちますが、実際に作られているのは、PBMを通さず製薬会社が患者に直接売る仕組みです。それが「TrumpRx」という直接販売のサイトで、2026年2月5日に開設されました。当初は2026年1月の予定が少し遅れたものの、すでに稼働しています。

値下げの幅は、公表されている範囲でこうなっていました。

会社・薬 直接販売での価格
ファイザー 多くの医薬品を最大85%、平均50%割引いた価格で提供
ノボの肥満症薬ウゴービ・糖尿病薬オゼンピック 199ドル(約3万1000円)で直接提供
イーライリリーの肥満症薬ゼップバウンド 開始用量299ドル(自社直販サイトより50ドル安い)
肥満症薬の最低用量 両社とも月額149ドルと報じられています

平均5割引き、最大85%引きが目安です。

製薬会社に約束されている3つの見返り

値下げさせられただけなら製薬会社は損しかしませんが、見返りがセットになっていました。

  • 関税の3年間免除。輸入医薬品への新たな関税が用意されている中で、合意した会社の製品は3年間その適用を猶予されます。医薬品関税は最終的に250%まで上げるとも言われていたので、大きな意味があります
  • 保険適用の拡大。米政府はイーライリリーのゼップバウンドとノボのウゴービを、高齢者向け公的保険メディケアの適用対象に新規追加します。値下げの分を販売数量で取り返せる形です
  • 中抜きが消える分、痛みが小さい。5割引き・85%引きが成立するのはPBMの中間マージンを削ったからで、製薬会社の手取り(出荷価格)が半分になるわけではありません

つまり、製薬会社いじめのように見えて、本丸はPBMを外すことだった、というのが私の受け止めです。痛み分けに近い取引の形になっていました。

武田への影響を数字で見ると

  • トランプ大統領が薬価引き下げを求めた製薬大手17社への書簡に、日本の製薬会社は含まれていませんでした。武田は直接の標的リストに入っていません
  • 武田は2025年5月、今後5年で約300億ドルを米国に投資すると表明しています。米国で作って米国で売る分には、輸入関税がかかりにくくなります
  • 武田の米国売上は2兆1,648億円で全体の48.0%。仮に米国の一部の製品で薬価が下がっても、影響を受けるのは48%のうちのさらに一部です。残り52%は欧州・日本・新興国で、MFNの直接の対象外です

ここから私が受け止めたのは、会社が傾くような話ではない、というところまでです。さらに、トランプ政権は諸外国に薬価の引き上げを促して国内外の均衡を目指しているとも見られていて、日本など他国の薬価が上がれば武田の収益にはプラスに働く可能性もあります。PBM改革で中間マージンが縮めば、長期的には製薬会社が正当な対価を受け取りやすくなる方向の話にもなります。

それでも残るリスクと、法的な不確かさ

「新薬の先行きに悪い」という心配には、一理あるデータもありました。MFNを入れると米国の価格が他の先進国の最低価格と同水準になるため、製薬会社が価格の低い国での新薬の発売を控える可能性が指摘されています。これは業界全体の長期のリスクで、武田も無縁ではありません。

実施の状況は、個別合意で段階的に進行中です。2025年12月までに欧米の製薬9社が、メディケイドへのMFN価格提供や新薬のMFN価格保証などで政権と合意し、見返りに3年間の関税免除を得ています。法律で一律に強制されているわけではありません。

「あとで違法になって還付されるのか」というご質問もありました。米国政府が強制的に国内の薬価を引き下げるには法改正が必要とみられ、実現可能性は不透明とされています。実際、トランプ大統領は1期目の2020年にも同様のMFN大統領令に署名しましたが、2021年に連邦裁判所が発効を止め、その後バイデン前政権が撤回した前例があります。一方で、今回のように企業との自主的な合意で進んでいる部分は契約なので、違法だから還付、という形にはなりにくい構造です。関税のほうは裁判で違法判断が出れば還付の論点が出てきますが、薬価の合意とは別の話だと私は整理しました。

質問3:減配した瞬間に大暴落しないでしょうか

武田は累進配当(毎年増やすか、少なくとも維持する)を宣言している会社です。だから、これを破って減配すれば「累進配当を守れなかった会社」として失望売りが出て、株価が大きく下げるリスクは確かにあると思います。

ただ現金で見ると、営業キャッシュフロー1兆円超に対して配当は3,119億円、およそ3割です。減配しなくても払える余裕は、いまのところ十分にあると私は受け止めました。減配リスクはゼロではないけれど、足元の現金は厚い。このバランスで見るようにしています。

無形資産の償却が減れば信用(格付け)が上がり、機関投資家が買いやすくなる、という流れも期待はできます。ただ株価が2倍3倍になるかどうかは新薬の成功という別の条件が必要で、そこは私にはわかりません。

NTTの株式併合の案内は、会社の提案ではなく株主提案でした

「NTTの株主総会の案内に株式併合の件が載っていた」というご質問です。調べたところ、NTTの第41回定時株主総会(2026年6月18日開催)の決議事項のうち、第5号議案「株式併合の件」は会社提案ではなく、一人の株主から出された株主提案でした。

株主総会の案内には、会社が決めたことと株主が提案したことの両方が載りますが、性質はまったく違います。

  • 会社提案(第1〜3号議案):取締役の選任など、会社が実行したいこと
  • 株主提案(第4〜15号議案):個人株主が出した提案。NTTのような大企業では、ほぼ毎回否決されます
  • NTTの公式の株主総会ページの議案リストを見ても、会社側の議案に株式併合は見当たりませんでした

NTTの株は1株150円前後の100株単位で、1万5千円ほどで買えます。2023年に1株を25株に分割したからで、会社側が正反対の株式併合をする動機は、まず考えにくいと思います。

株式併合とは何か

  • 株式分割:1株を25株に増やす。1株の値段が下がって買いやすくなる(NTTが2023年にやったこと)
  • 株式併合:複数の株を1株にまとめる。1株の値段が上がる。株数は減りますが1株あたりの価値が上がるので、資産額そのものは変わりません

仮に実行された場合の損得を並べると、メリットは株価の見栄えが上がる、株主管理のコストが下がるといったところ。デメリットは、最低投資金額が上がって買いにくくなる、端数が出て強制的に現金精算され、NISAの非課税枠から外れてしまう恐れがある、といったところです。少額から買えることを売りにしてきた株での併合は、個人にとってはデメリットのほうが目立つと思います。

そして、この件と武田薬品には直接の関係がありません。NTTと武田は別の会社で、NTTの株主提案が武田の経営や株価に影響することはありません。累進配当・高配当の代表格として並べて見ていると、片方で株主に不利かもしれない動きがあると、もう片方も心配になる。その連想はよくわかりますが、武田に株式併合の予定はありません。

売上1位の武田が、時価総額では中外製薬に離されている理由

「中外製薬が1位、武田が2位」というご質問もいただきました。最新のデータでは武田は2位ではなく3位でした。

2025年5月7日時点の時価総額は、1位が中外製薬14兆1900億円、2位が第一三共6兆9300億円、3位が武田薬品6兆8800億円。中外は第一三共と武田のほぼ2倍で、日本企業全体でも11位です。

中外がここまで強くなったきっかけは、肥満症の飲み薬でした。2025年4月、イーライリリーが中外から2018年に開発・販売権を取得した「オルフォルグリプロン」という飲むタイプの肥満・糖尿病薬の臨床試験データを発表し、それを受けて中外の株価が10%以上急騰しています。注射薬と違い、中外が化学合成で作り出した飲み薬で、その創薬力が高く評価されている、ということだと理解しました。

売上では武田が1位、中外は5位

売上高で見ると順位は逆になります。2026年版の国内製薬売上ランキングでは、1位が武田薬品で約4.5兆円、2位が大塚HD、中外は5位で約1.17兆円です。

それでも時価総額で中外が1位になる理由

数字を並べると、差がどこにあるのかがはっきりします。

項目 武田薬品 中外製薬
売上高 約4.5兆円(国内1位) 約1.17兆円(国内5位)
営業利益 中外を大きく下回る 5,988億円(業界1位)
営業利益率 約16% 47.6%(国内トップ)
時価総額 6兆8800億円(3位) 14兆1900億円(1位)

時価総額は株価×株式数で、投資家が会社の価値をどう見ているかを表します。投資家が見ているのは売上の大きさではなく、利益の質と効率なのだと思います。中外は売上が小さくても、売上のほぼ半分が営業利益になるほど効率が良く、利益の額でも1位です。9期連続の増益で、ロシュとのアライアンスを土台に高収益のがん薬を主力にした少数精鋭のやり方でした。

一方の武田は、売上は大きいけれど利益率が低い。シャイアー買収に約6.2兆円を投じ、買収時の会計処理で在庫評価や特許の償却が約1.8兆円分、利益を押し下げました。この償却の負担が利益率を下げています。

売上の巨人だけれど利益効率は低い会社が武田、売上は小さくても利益効率が別格なのが中外。だから売上5位の中外が時価総額で1位になれるのだと整理しました。

裏返して言えば、売上1位なのに会社の値段は3位という状態でもあります。私はここを「安く放置されている部分がある」と受け止めて持っていますが、これは私の見方で、正しいかどうかは先になってみないとわかりません。

ROEで見るか、ROICで見るか

武田のようにM&A後の無形資産の償却が大きい会社では、そこを外して見る投資家がかなり多いようです。会社自身もコア営業利益や調整後の利益を公表しています。

  • ROE(自己資本利益率):当期純利益 ÷ 自己資本。株主が出したお金がどれだけ効率よく増えたかを表します。借金を増やしたり自社株買いをしたりすると見かけ上上がりやすく、資本構成の影響を受けます
  • ROIC(投下資本利益率):税引後営業利益 ÷ 投下資本。本業の稼ぐ力に近く、負債の増減や自己資本の薄まりでブレにくいのが特徴です

武田はシャイアー買収のあと無形資産の償却が大きく、会計上の利益が圧迫されやすい会社です。ROEで見ると株主資本に対して利益が薄い会社に見えやすく、ROICで見ると買収した資産を使って本業でどれだけ回収できているかが見えやすくなります。

配当利回りだけで買っている人はROEの中身まで追わないこともあり、配当の持続性や増配の余地を気にする人は償却を除いた実力の利益をかなり意識します。同じ会社でも、どちらの数字で見るかで印象がかなり変わる会社だと思いました。私は、配当を出し続けられるかを知りたいので、償却を外した稼ぐ力とキャッシュフローを見るようにしています。

格付けは、どこを見ると上がるのか

格付けは、海外と日本の機関で水準がかなり違いました。Moody’sとS&Pでは投資適格の下のほうに位置づけられ、S&Pの評価はBBB+とされています。一方でJCRは2025年6月に武田の債券をAA-としており、見通しは安定的でした。

シャイアー買収前後の2019年に、格付機関は武田を格下げしています。買収資金による有利子負債の急増と、のれん・無形資産の膨張で財務リスクが上がったためです。その後は事業の安定化と負債管理が進み、少なくとも現在の水準は維持されています。

無形資産の償却は自然にゼロになるものではなく、対象の資産の償却が終わるまで続きます。武田の決算資料でも、2025年3月期に製品に係る無形資産償却費及び減損損失が6,432億円とされていて、まだ重い負担が残っています。

格付けが上がる条件

償却費が減るだけでは足りず、負債の削減、利益率の改善、キャッシュ創出の安定化が必要です。何年後に上がるとは言えませんが、今後数年で償却の負担が軽くなり、利益と負債の指標も改善すれば、2020年代後半に見直しの余地はあると思っています。

格付けと機関投資家のお金

「格付けが低いから機関投資家が投資できない」というより、投資はできるけれど投資ルール上の上限がある、という理解が近いようです。海外の年金や保険、債券ファンドは自社ルールで「BBB以上」「A以上」などを求めることが多く、武田はその範囲に入るので投資できる機関は多い。もっと高い格付けしか買えない保守的な資金は、武田を選びません。

格付けが1段階でも上がって条件が緩めば、買える機関の数は増えるので、資金が入る余地はあります。ただ、それが何円になるのかは公開データだけでは言えません。ファンドの運用ルールと市場環境によるからです。

まとめ:私が武田を持ち続けている理由と、持ち方

いただいた質問を数字で追ってみて、私が確かめられたのは次のところまででした。

  • 営業キャッシュフロー1兆円超に対して配当は3,119億円(約3割)。いまの現金で払えている
  • トランプ大統領の薬価政策で削られるのは主にPBMという中間業者で、武田は標的の17社に入っておらず、米国売上比率は48.0%
  • 利益率が低いのはシャイアー買収の償却が重いからで、そこを外すと見え方が変わる
  • NTTの株式併合の件は株主提案で、武田とは関係がない

そのうえで、減配のリスクがゼロだとは考えていません。累進配当を破れば大きく売られる会社です。だから私は、この1社に賭けるのではなく、複数の業種に分けて持つ形にしています。ウォーレン・バフェットのやり方を私なりに真似して、決算は自分で見て、わからないものは買わない。それだけを守っています。

繰り返しになりますが、ここに書いたのは私の保有状況の紹介であって、購入をおすすめするものではありません。

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武田のような1社に寄りかからないために、私は持つ会社の数を増やす代わりに、1社あたりの金額を小さくしています。それができているのは、どちらの口座も1株(単元未満株)から買えるからでした。

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それでは、またお会いしましょう。バフェットかおるでした。

⚠️ 【投資免責事項】
当ブログで紹介している投資情報はあくまでも参考情報であり、特定の銘柄・投資商品の購入・売却を推奨するものではありません。投資にはリスクが伴います。投資はご自身の判断と責任のもとで行ってください。

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