先に結論を書きます。「老後2000万円」と同じ計算を最新のデータでやり直すと、必要額は約1500万円まで減っています。ただ、減った理由は生活が楽になったからではありませんでした。65歳を過ぎても働く人が増え、物価高の中で支出を我慢しているから、数字の上で縮んで見えている、と私は受け止めています。
しかも、この1500万円は現金のままでは目減りします。仮にインフレ率2%が30年続けば、今の1500万円分の生活費には約2700万円が必要になる計算です。
だから私は「貯めて取り崩す」ではなく、「入り続けるお金の流れ」を作る方を選びました。この記事では、2000万円という数字の正体、1500万円に減った理由、そして私がしていることを順番に書きます。数字はすべて記事作成時点のものです。
※本記事は私個人の考えと調べたことの紹介であり、特定の銘柄・商品の購入を推奨するものではありません。当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けていません。数字は記事作成時点のもので変わります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
この記事の内容は、YouTubeの動画でもお話ししています。
「老後2000万円」という数字の正体
計算式は、驚くほど単純でした。
毎月の赤字額 × 360カ月(30年)= 老後に必要な額
総務省の家計調査で、65歳以上の夫婦・無職世帯の「年金などの収入」から「生活費」を引くと、毎月いくら足りないかが出ます。それを30年分掛けただけです。2017年の調査では月の不足がおよそ5.5万円で、5.5万円×360カ月=約2,000万円。金融庁の報告書がこの計算を載せて、日本中が騒ぎになりました。私も不安になった一人です。
ここで気づいたことがあります。この計算は、ある1年の平均的な家計を切り取っただけのものです。元になる年が変われば、答えも毎年変わります。
同じ計算を毎年やると、答えはこれだけ動く
※これは総務省の家計調査をもとに、私が同じ計算式で計算し直した数字です。国が「老後◯◯万円」と発表しているわけではありません。
| 元になる年 | 同じ式での必要額 |
|---|---|
| 2015年 | 約2,270万円 |
| 2017年 | 約1,970万円(「2000万円問題」の根拠年) |
| 2019年 | 約1,200万円 |
| 2020年 | 黒字(月+1,111円)=必要額マイナス約40万円 |
| 2025年 | 約1,500万円 |
2020年は「老後資金は要らない、むしろ余る」という答えが出た年です。もちろん、そんなわけはありません。コロナの年で、給付金で収入が一時的に増え、外出自粛で支出が消えた。それだけのことです。
このグラフが教えてくれるのは、「老後◯◯万円」はその年の事情でいくらでも動く数字だということです。2000万円は不動の真理ではありませんし、1500万円も来年には変わります。生活水準も価値観も人それぞれです。数字が一人歩きして、私は振り回されました。
なお、ここで扱っている数字は夫婦・無職世帯の平均です。おひとりの方、賃貸にお住まいの方は前提が変わりますので、考え方として読んでいただければと思います。
なぜ1500万円まで減ったのか
2017年の約2000万円が、2025年には約1500万円。月の赤字が5.5万円から4.2万円に縮んだ、という家計調査の結果から出た数字です。
差はたった1.3万円ですが、それが360倍されるので、必要額は約480万円も変わります。この式は、良くも悪くも増幅装置です。
理由1:収入が増えた(年金ではなく、働いているから)
大きいのは、65歳を過ぎても働く人が増えたことです。働くシニアの給料が家計に入って、収支を支えている。働きたくて働いている方もいます。でも、働かないと生活できない方も多いと思います。
私の周りには、がんや脳梗塞の闘病中でも働いている人がいます。JALにいたころも、抗がん剤で髪が抜け、ウィッグをつけて乗務していた同僚がいました。私のように働きたくて働ける人はいいのですが、そうでない場合、心も体もきついはずです。
理由2:支出を抑えた(我慢している)
この物価高の中で支出が増えていないということは、みんなが自力で節約しているということです。使わない、我慢する、という選択です。
「1500万円に減った」と聞くと明るいニュースに聞こえます。でも中身は、「70歳になっても働いて、物価高の中で我慢しているから帳尻が合っている」という話に見えます。数字は改善しているのに、生活の実感は苦しくなっている。このねじれが、私が一番書きたかったことです。
インフレ2%が30年続くと、1500万円は約2700万円
仮に、この先インフレ率2%が30年続くとします。あくまで仮の話です。2%は日銀が目標にしている数字であって、将来の保証ではありません。
その場合、物の値段は1.02の30乗で約1.81倍になります。今の感覚の1,500万円分の生活費は、30年後には約2,700万円払わないと買えない計算です。報道によっては、2000万円を起点に「将来は老後4000万円問題になる」と言われることもあります。起点の取り方で数字は変わりますが、言っていることは同じだと思います。
銀行に1,500万円を置いておいても、1,500万円という数字は減りません。でも、その1,500万円で買えるものが年々減っていく。これがインフレの怖さだと私は受け止めています。
50代・60代の私がしていること
ここからは、おすすめではなく私の記録です。
私自身、数字に振り回された経験があります。JALの客室乗務員だったころ、会社が倒産して、無職になる不安を抱えました。多くの方から叱られ、毎日謝罪と感謝を続けました。「大丈夫」と信じていた会社が、ある日突然崩れることを知りました。
だから48歳から投資を始めるとき、2つ決めました。1つの会社に集中しないこと。そして、収入源も1つに頼らないことです。年金だけに頼ると、制度が変わるたびに振り回されます。自分で起業し、YouTubeとブログの収益を少しずつ増やし、パートで働けるうちは社会とつながる。そうやって入り口を増やしてきました。
取り崩す前提をやめた理由
「老後◯◯万円」という考え方は、貯めたお金を取り崩していく前提です。取り崩しは、インフレが来ても増えてはくれません。減る一方です。
インデックス投資で資産が1億円になったとき、私は有名な「4%取り崩しルール」を真似ようとして、挫折しました。暴落で資産が減っている年にも決めた額を取り崩して、残高が減っていくのを見るのが、精神的に耐えられなかったのです。
だから「入り続けるお金の流れ」を作った
そこで、貯めて取り崩すのをやめ、入り続ける流れを作ることにしました。私の場合、それが高配当株の配当です。直近で公開した時点の年間配当は、税引き前で551万円でした。
なぜ配当なのか。物価が上がれば、会社は商品を値上げします。値上げで利益を保てた会社は、配当を維持したり増やしたりできます。つまり配当という収入は、インフレに追随してくれる可能性があると私は考えています。
もちろん「必ず」ではありません。減配もありますし、配当の伸びが物価に追いつかない年もあります。だから私は85社に分散して、過去に減配してこなかった会社を中心に持っています。これは私の保有状況の紹介であって、推奨ではありません。
2000万円貯めたら上がり、というゴールではなく、年金にプラスするお金の流れを、細くても作っておく。それが、毎年変わる「老後◯◯万円」に振り回されないための、私なりの答えでした。
まとめ
- 「老後2000万円」はある1年の家計の切り取りで、式は「月の赤字×360カ月」
- 同じ計算をすると、2020年には黒字=必要額マイナスという年すらあった
- 1500万円に減った理由は、シニアが働き続け、物価高の中で我慢しているから
- インフレが続けば現金は実質目減りする。仮に2%が30年なら1500万円分は約2700万円
- 私は取り崩す貯金だけでなく、入り続ける流れとして高配当株を育てています
数字は毎年変わります。自分の家計を一番知っているのは自分だと、この計算式を追いかけて思いました。
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