日経平均(前引け):6万4,681円39銭(前日比▲735円24銭、▲1.12%)。午前9時43分には**▲975円02銭の6万4,441円61銭**まで下げ幅拡大
- TOPIX:3,867.42(▲28.69、▲0.74%)
- グロース250:720.16(▲2.76%)と新興株が特に弱い
- ドル円:160円36銭前後、日本10年国債利回り:**2.694%(+0.027)**と金利は上昇
- WTI原油先物:88.92ドル(+0.82%)
- ただし重要なのは、プライム市場では値上がり842銘柄>値下がり670銘柄。つまり「指数は下がったが、全面安ではない」。半導体・AI関連の値がさ株が指数を押し下げた形です
マクロ的な理由(大きな世界の流れ)
理由①:アメリカがイランへの攻撃を開始(地政学リスク)
最新の事実関係(時系列)
トランプ米大統領は9日、米軍のヘリコプター1機が8日夜にホルムズ海峡でイラン軍に撃墜されたとSNSで明らかにしました。撃墜されたのは陸軍の攻撃型ヘリ「アパッチ」で、ホルムズ海峡上空を巡回中にオマーン沿岸付近で墜落、操縦士2名は無事でした。ニュースサイト「アクシオス」は米当局者の話として、ヘリはイランのドローンと衝突して墜落したと報じています。
そして米中央軍はトランプ大統領の指示に基づき、米東部時間9日午後5時、日本時間の今日10日午前6時からイランに対する「自衛目的の攻撃」を開始しました。米中央軍はこれを「均衡のとれた対応」だとしています。
つまり東京市場が開く3時間前に攻撃が始まったので、朝一番でリスク回避の売りが先行したわけです。
根拠となる市場の反応:
- 前日の米国市場でフィラデルフィア半導体指数▲1.93%、NASDAQ▲0.97%
- VIX恐怖指数が19.87(+5.02%)に上昇
- 原油88.92ドルへ上昇、韓国KOSPIは▲3.65%と日本以上に下落
規模を金額で示すと:日経平均735円の下落は、東証プライム全体の時価総額(約1,100兆円規模)に対しておよそ1%、つまりざっくり10兆円前後のお金が半日で消えた計算です。一時975円安の場面では約15兆円規模でした。
理由②:日銀の6月利上げ観測(来週6月15〜16日が決定会合)
日銀は15〜16日に金融政策決定会合を開きます。日経QUICKニュースが「日銀ウオッチャー」28人に実施したアンケートでは、約9割(26人)が6月会合での利上げを予想しています。現在の政策金利0.75%を0.25%引き上げて1.00%にする利上げは「秒読み段階」との見方が強く、年内に1.25%まで到達する可能性も残されています。
背景には、中東情勢の混迷と原油高によるインフレ圧力の高まりがあり、利上げが遅れると日銀の対応が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」に陥るリスクが意識されています。
金利が上がると、株(特に成長株)には逆風。今日グロース250が▲2.76%と特に弱かった理由のひとつです。一方で銀行株(三菱UFJ・三井住友FGなど)は利上げ観測を支えに堅調でした。
ミクロ的な理由(個別の銘柄・業種レベル)
売られた業種(全33業種中18業種が下落):
- 非鉄金属:住友電工(5802)、フジクラ(5803)──AIデータセンター向け電線需要の期待で買われてきた分、米ハイテク安で利益確定売り
- 情報通信:コナミG(9766)、ソフトバンクG(9984)
- 海運:商船三井(9104)、川崎汽船(9107)──ホルムズ海峡が危なくなると船の保険料が跳ね上がる
- 半導体関連:SUMCO(3436)、アンリツ(6754)など──前日の米フィラデルフィア半導体指数▲1.93%の直撃
- 卸売:三井物産(8031)、三菱商事(8058)
買われた業種(14業種が上昇):
- 銀行:三菱UFJ(8306)、三井住友FG(8316)──利上げ=銀行の儲けが増える
- 不動産:三井不動産(8801)、三菱地所(8802)
- サービス:OLC(4661)、リクルートHD(6098)──内需株は中東と関係が薄い「逃げ場」
イラン問題:影響を受ける企業のメリット・デメリット
デメリットを受ける企業(原油高・物流リスク)
- 空運:JAL(9201)、ANA(9202)──燃料費が経費の2〜3割。原油10ドル上昇で年間数百億円のコスト増
- 電力・ガス:燃料の9割超を輸入に頼る
- 海運:商船三井、川崎汽船──ホルムズ海峡は日本の原油輸入の約9割が通る「海の生命線」。封鎖されれば迂回コスト・保険料が急増
- 化学(ナフサ原料)、紙パルプ、運輸、自動車
メリットを受ける企業(原油高・有事の備え)
- 資源開発:INPEX(1605)、石油資源開発(1662)──持っている油田の価値が上がる
- 防衛関連:三菱重工(7011)、IHI(7013)、川崎重工(7012)
- 金関連:住友金属鉱山(5713)は2月のイラン情勢緊迫時、金価格上昇を背景に思惑買いが入り上場来高値を更新しました
ただし注意点として、4月の局面では原油高の追い風が見込まれたINPEXが週次4.59%安、三菱商事が4.98%安となるなど、戦争が長引くと「恩恵銘柄」への楽観も頭打ちになりました。有事のメリットは長続きしないのが歴史の教訓です。
過去の中東有事と株価:どれくらい下げて、どれくらいで戻ったか
- 第一次オイルショック(1973年):原油価格が約4倍に。日本は「狂乱物価」で1974年の消費者物価は+23%。株価は約2年低迷。最悪のケース
- 湾岸危機〜湾岸戦争(1990〜91年):侵攻直後の1990年8月に日経平均は約11%下落(バブル崩壊と重複)。1991年1月の開戦後はむしろ反発。「開戦は買い」という相場格言が生まれた
- 9.11テロ(2001年):翌営業日に日経平均▲682円(▲6.6%)で1万円割れ。約1カ月で元の水準を回復
- イラク戦争(2003年3月):開戦前に売られ、開戦後に反発。影響は実質数週間
- ソレイマニ司令官殺害(2020年1月):日経平均は1月6日に▲451円。原油一時+4%超。約2週間で回復
- イラン・イスラエル初の直接攻撃(2024年4月):日経平均は4月19日に▲1,011円。数週間で回復
- 十二日間戦争(2025年6月):イスラエルがイランの核関連施設を攻撃した6月13日、日経平均は▲338円84銭の3万7,834円。下げ幅は一時600円超。円は142円台後半まで円高に振れました。その後イランがカタールの米空軍基地を「事前通告つき」で攻撃し死傷者ゼロ、直後にトランプ氏が停戦を発表、原油は急落しました。影響期間は文字どおり約12日間
- 今年2月の中東ショック(2026年2〜3月):2月28日に米国とイスラエルがイランを攻撃し、最高指導者を含む要人が標的に。イランは米艦艇・湾岸諸国への報復攻撃を開始しました。日経平均はピーク59,332円から約14%下落。ただし4月第2週には週間+7.15%(3,800円高)と急反発し、4月の上昇幅は5,860円(+11.5%)に達して底打ち感が強まりました。底打ちまで約1〜1.5カ月
まとめると:中東有事の株価への影響は「短ければ2週間、普通で1〜2カ月」。例外は原油供給そのものが長期間止まったオイルショックだけ。今回も「ホルムズ海峡が本当に封鎖されるかどうか」が分かれ目です。
日本の利上げ:仕組みと影響
金利とは「お金のレンタル料」です。日銀が政策金利を上げると、銀行がお金を貸すときのレンタル料も上がります。
- レンタル料が上がる → 会社も人もお金を借りにくくなる → 買い物や投資が減る → モノの値段の上がりすぎ(インフレ)にブレーキがかかる
- これが日銀の狙い。今は物価が上がりすぎているので、ブレーキを踏もうとしている
数字で見る現状
- 現在の政策金利:0.75% → 来週1.00%への引き上げ予想が約9割
- 10年国債利回り:2.694%。5月には一時2.8%まで上昇し、市場参加者のインフレ期待の高まりが背景にあります。OIS市場は6月利上げを75%程度織り込んでいます
- 身近な影響の例:住宅ローン3,000万円(変動)の場合、金利が0.25%上がると年間の利息は約7.5万円増。固定金利はすでに大幅上昇しており、フラット35は6月に年0.50%もの引き上げとなりました
メリットを受ける企業
- 銀行:三菱UFJ(8306)、三井住友FG(8316)、三井住友トラスト(8309)、りそなHD(8308)──貸出金利と預金金利の差(利ざや)が広がる。金利0.25%上昇で大手銀行の利益は年数百億〜1,000億円規模で押し上げ
- 保険:MS&AD(8725)、第一生命HD(8750)、東京海上(8766)──集めた保険料を国債で運用する利回りが改善
デメリットを受ける企業
- 不動産・REIT:借金でビルを建てるビジネスなので利息負担が直撃
- 高PERグロース株:将来の利益を当てにした株は金利上昇で割引かれる(今日のグロース250▲2.76%が典型)
- 借入の多い企業:ソフトバンクG、楽天Gなど
- 住宅メーカー:ローン金利上昇で家が売れにくくなる懸念
過去の利上げと株価の事例
- 2024年7月31日の利上げ(0.25%へ):直後の8月5日、円キャリー取引の巻き戻しで日経平均は**▲4,451円(▲12.4%)の歴代最大下落**(令和のブラックマンデー)。ただし約3週間で半値戻し、年末までにほぼ全値戻し
- 2025年1月の利上げ(0.5%へ):市場が十分織り込んでいたため混乱なし。「サプライズかどうか」がすべてという教訓
- 2006年のゼロ金利解除:当初は株高継続。利上げ自体より、その後の米サブプライム問題が株価を崩した
- 1989〜90年のバブル期利上げ(2.5%→6%):急速すぎる利上げがバブル崩壊の引き金に。「ゆっくりなら大丈夫、急ぐと危ない」
今回は9割が織り込み済みなので、2024年8月型のショックは起こりにくい。むしろ見送られた場合に「日銀はインフレを止める気がない」と円安・金利上昇で荒れるリスクのほうが意識されています。
その他の理由
- 前日の米ハイテク安の直撃:NASDAQ100▲1.12%、NYSE FANG+▲1.32%。日経平均は半導体株の比重が大きい「ハイテク指数」化しているため、米国の風邪をそのまま引く
- 6月8日の急落(▲2,563円)の余震:大きく下げた直後は投資家心理が弱く、悪材料に過敏に反応しやすい
- 個人投資家心理の悪化:米国がイランを攻撃したとの報道で中東情勢の不透明感が強まり、個人投資家の心理が悪化、新興市場で売りが優勢になりました
これからインフレが進む理由
①石油が高くなるから 日本は石油のほとんどを外国から買っていて、その約9割がホルムズ海峡という「海の細い道」を通ってきます。そこで戦争が起きると、石油を運ぶのが危なくなって値段が上がります。石油が上がると、ガソリンだけでなく、電気代、ビニール袋、運送料、つまりほぼ全部のモノの値段が上がります。1973年のオイルショックでは、物価が1年で23%も上がりました。
②円が安いから(1ドル=160円) 外国のモノを買うとき、円の力が弱いとたくさんの円を払わないといけません。10年前は1ドル=110円くらいだったので、同じ100ドルの輸入品が1万1,000円→1万6,000円に。つまり輸入品が約1.5倍に値上がりした計算です。
③お給料が上がっているから お給料が上がる→お店は人件費が増える→商品の値段を上げる→また給料を上げる…という**ぐるぐる回るサイクル(賃金と物価の好循環)**が始まっています。これは悪いことばかりではなく、日銀が「健全なインフレ」と呼んで利上げの根拠にしているものです。
だから日銀は金利を上げて、インフレが暴走しないようにブレーキを踏もうとしている──これが今日のニュース全部をつなぐ一本の線です。
まとめ
- 中東有事の下落は歴史的に2週間〜2カ月で回復してきた。慌てて売った人が一番損をしてきた
- 利上げは銀行・保険などの高配当株にはむしろ追い風
- 原油高インフレの時代こそ、現金で持っているとお金の価値が目減りする。配当という「インフレに負けない仕組み」の価値が上がる
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