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ワシントン近郊の旅客機衝突事故|NTSB最終報告の内容と、元機長の見方を分けて整理

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先に結論を書きます。2025年1月29日にワシントンのレーガン・ナショナル空港の近くで起きた旅客機とヘリコプターの衝突事故について、アメリカのNTSB(国家運輸安全委員会)は2026年1月27日の会議で推定原因を決定しました。その中心に置かれたのは、特定の個人の過失ではなく、FAA(連邦航空局)が滑走路への進入経路の近くにヘリコプターの経路を設定していたことです。この記事では、NTSBの報告で確定したことと、事故の直後に元機長が語っていた推測とを、はっきり分けて書きます。

※この記事はNTSBの公表資料と報道をもとにした整理です。航空事故の原因について私が独自に判断したものではありません。日付と内容は2026年10月時点で確認できたものです。当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けておらず、特定の会社の株式の売買を勧めるものではありません。

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確定している事実|2025年1月29日、レーガン空港の南東で起きたこと

NTSBの公表資料で確認できる事実を並べます。

  • 発生日時:2025年1月29日、東部標準時の20時48分ごろ
  • 旅客機:PSAエアラインズが運航するアメリカン航空5342便。機種はCL-600-2C10(CRJ700)、登録記号N709PS
  • ヘリコプター:アメリカ陸軍のシコルスキー UH-60L。コールサインはPAT25
  • 場所:レーガン・ワシントン・ナショナル空港の南東約0.5マイルの上空で衝突し、ポトマック川に落下
  • 亡くなった方:旅客機の64人とヘリコプターの乗員3人、合わせて67人全員

以前のこの記事では「乗客60人と乗員4人」と書いていました。NTSBの資料では旅客機側は64人なので、内訳ではなく合計の形に直しました。

NTSBが2026年1月に決定した推定原因

NTSBは2026年1月27日に推定原因を決める委員会の会議を開き、調査は完了しています。推定原因として挙げられたのは次の内容です。

  • FAAが、滑走路への進入経路の近くにヘリコプターの経路を設定していたこと
  • FAAが、ヘリコプターの経路とデータを定期的に見直さなかったこと
  • FAAが、空中衝突のリスクを下げるための過去の勧告に対応しなかったこと
  • 航空管制の仕組みが「有視界間隔」(お互いに見て間隔をとる方法)に頼りすぎていて、見て避けることの限界を考えていなかったこと

ここで私が大事だと思ったのは、原因の中心が個人ではなく、経路の設計と見直しの仕組みに置かれたことです。記事の見出しを「なぜ軍用機は衝突したのか」から変えたのは、そのためです。調査の前に原因を人に求める書き方をしていたので、直しました。

NTSBが挙げた、そのほかの要因

推定原因とは別に、事故につながった要因として次の点が挙げられています。

  • ヘリコプターの乗員による有視界間隔の確保が、有効に働かなかったこと
  • 管制塔のチームが状況の把握を失い、作業量の多さで能力が落ちていたこと。リスクを評価する手順がなかったこと
  • 陸軍が、気圧高度計の誤差の許容範囲をパイロットに理解させていなかったこと。これが、公表されたルートの最高高度より上を飛ぶことにつながったとされています

報道では、ヘリコプターの計器の不具合によって乗員が実際より100フィート低い高度にいると思っていた可能性、管制官が安全に関する警告を出すべき場面だったこと、作業量の多さを申し出た管制官の担当を上司が替えるべきだったこと、FAAが80件を超えるニアミスの報告に対応していなかったことなども伝えられています。

NTSBの委員長は、ヘリコプターと旅客機の間隔が、最もよく見積もっても75フィートだったと説明したと報じられています。

杉江弘元機長の見方|これは「一人の元機長の推測」として読んでいます

私はこの事故の直後に、元JALの機長である杉江弘さんにお話をうかがいました。当時はまだ調査が始まったばかりで、以下はすべて、報告書が出る前の本人の推測です。確定した事実としては読まないでください。

杉江さんが話していたのは、おおむね次のような内容でした。

  • 旅客機は着陸の30秒ほど前で、高度は300フィート台だった。着陸直前なので、操縦する側は滑走路の確認に集中し、もう一方は計器を見ている時間帯にあたる
  • TCAS(航空機衝突防止装置)は、低い高度では誤った警報を避けるために感度が落とされる設計になっている。だから回避の指示(RA)は出ず、近くに機体がいるという表示(TA)だけだったのではないか
  • ヘリコプターの乗員は、手前を飛んでいた別のCRJを管制官に言われた機体だと思い込んでいた可能性がある
  • 夜間は機体の形は見えず、灯火だけが見える。機種が分かるほど近づいていたら、それはもう衝突する距離だ

このうち、見間違いの可能性という見立ては、NTSBが「有視界間隔の確保が有効に働かなかった」とした部分と方向は重なります。ただしNTSBは、そこを原因の中心には置いていません。原因の中心は、そういう見間違いが起きても事故にならないはずの経路の設計と、その見直しの仕組みのほうに置かれました。ここは、事故直後の見方と報告書の結論で、重さの置き方が変わった部分です。

なお、音声記録から、衝突の約30秒前に管制官がヘリコプターに対して「PAT 25, pass behind the CRJ」と指示していたことが確認されたと発表されています。別の航空機が通過したのは衝突の約10秒前と報告されています。

夜間の視認性について、分かっていることと分かっていないこと

夜に飛んでいる航空機は、機体そのものではなく灯火で見分けられています。着陸灯、航法灯(位置灯)、衝突防止灯、そして主翼の先のストロボライト。これらは役割ごとに決められた灯火です。

以前のこの記事には「明るく光っているのに見えないなんてありえない」という書き方が残っていました。これは強すぎる決めつけだったので外しました。都市の明かりが多い場所で、低い高度を飛ぶ機体を見つけるのが難しいことは、NTSBも有視界間隔の限界として扱っています。

羽田の事故(2024年1月2日)について、私が断定しない理由

日本でも2024年1月2日に、羽田空港でJAL516便と海上保安庁の航空機が衝突する事故が起きました。こちらについては、運輸安全委員会が2024年12月25日に調査の経過報告を公表しています。

その経過報告で示されたのは、海上保安庁機の機長が、自機が「ナンバーワン」とされた管制の指示を聞き違え、離陸の許可を得たと認識して滑走路に入ったこと、管制官もJAL機の操縦士も滑走路上の海上保安庁機に気づかなかったこと、これらが重なって事故に至ったという内容です。

その後2025年12月にも経過報告が公表されたと伝えられていますが、最終報告書は2026年10月の時点で公表されていません。ですから私は、羽田の事故の原因については断定しません。経過報告は「調査の途中の報告」で、結論ではないからです。

スイスチーズモデル|穴がひとつでは事故にならないという考え方

事故の調べ方として知られている考え方に、スイスチーズモデルがあります。安全対策をスライスしたチーズに見立てて、それぞれに穴(ミス)があるとする見方です。

穴がひとつ空いていても、次のスライスで止まるので事故にはなりません。複数のスライスの穴が一直線に並んだときに、事故が起きる。だから安全を高めるには、ひとつの対策を強くするだけでなく、穴が並ばないように仕組み全体を見直す必要がある、という考え方です。

今回のNTSBの結論は、まさにこの形になっていると私は受け取りました。経路の設計、見直しの仕組み、管制の作業量、高度計の誤差の教育。ひとつずつは致命的ではなかったものが、並んでしまった、という組み立てです。

元客室乗務員の私が、この報告を読んで思ったこと

私は国際線の客室乗務員をしていました。50代で体を壊して退職しています。

現場にいたころ、事故のニュースが出ると、まず「誰がやったのか」という話になるのを何度も見ました。今回、500ページを超えると報じられた報告書が、原因を人ではなく仕組みに置いたことを、私は静かに受け止めています。

亡くなった67人の方のご家族に、お悔やみを申し上げます。この記事は原因を言い当てるために書いたものではなく、公表された報告の内容を自分で確かめておくために書きました。

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それでは、またお会いしましょう。バフェットかおるでした。

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