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退職金や企業年金が振り込まれたばかりの方にとって、「このお金をどこに置けばいいのか」は、いちばん知りたいことだと思います。銀行の窓口から連絡が来るのも、ちょうどこのあたりです。
私の場合は、JALに30年勤めて、企業年金は1000万円のはずでした。ところが受け取る日に「先に500万円を払ってください」と言われ、手元に残ったのは500万円でした。その話も含めて、まとまったお金が入ったときに、私が置き場所を選ぶより先に決めていることを、そのままお話しします。
先に結論です。私が決めているのは3つだけです。
- いつ使うお金かで、分ける
- 一度に全部は、入れない
- あてにいかない(これから上がるものを言い当てにいかない)
この3つを先に決めてから、置き場所を選ぶ。順番が逆になると、大切な老後資産を減らしてしまう可能性があると私は考えています。
※本記事は私個人の考え方と体験の紹介であり、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けていません。金利などの数字は2026年9月時点のもので、変わります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
ブルームバーグの特集「1000万円を今、どこに投資すべきか」
2026年9月17日、ブルームバーグが「1000万円を今、どこに投資すべきか―2026年秋」という特集を出しました。4人の専門家が分析した内容で、前提に置かれていたのは、AI・半導体株のバブルへの警戒と、為替や金利の不安定さでした。先行きが見通しにくい局面だ、ということです。
私が見ておいた数字は3つです。
- 日本の政策金利が1.25%。日銀が利上げをして、ブルームバーグは「30年余りで最速のペース」と伝えています
- アメリカの10年債の利回りが5%。お金を貸す側の取り分が戻ってきています
- 金が1オンス4,424ドル、原油も100ドル台。物価の重しがまだ続いています
どれも日々変わる数字です。金利も物価も動いている局面だと認識したうえで、私は慌てて資産を動かさない、老後資金を焦って全額投資しない、と決めています。
最初にやるのは商品探しではなく、お金を3つの箱に分けること
まとまったお金が入ったとき、私が最初にしたのは商品を探すことではありませんでした。お金を「いつ使うか」で3つの箱に分けることです。
① 生活の箱|5年以内に使うお金
家の修繕、突発の冠婚葬祭、車の買い替え、子どもの教育費、自分たちの医療費。この箱は増やすことを考えず、必要なときに必要な額があることがすべてです。
② 育てる箱|10年以上先のお金
ここは世界の企業に育ててもらう部分です。私はアメリカのS&P500にしましたが、オルカンでもTOPIXでもいいと思っています。企業が働いてくれるのを待つ、長期で考える箱です。
③ 配当の箱|売らずに暮らすためのお金
配当を出し続けている企業、増配を続けている企業に投資して、株価が下がった局面でも売らなければ生活の一部を支えてくれる箱です。この箱があることが、株価が下落したときに狼狽売りしない握力になります。私は「月3万円の配当金が出る箱」のような目標を置きました。3万円あれば、電気・ガス・水道代や通信費に使えて、年金の足りない部分を補えます。
これは私の場合の分け方で、これが正解だという話ではありません。箱の中身はご自身の暮らしに合わせて変えられます。大事なのは「どれが得か損か」ではなく、今ある資産を自分の人生の中で見える化することだと思っています。損得で選ぶと、次に誰かが「こっちの方が儲かりますよ」と言ったとき、また戸惑って動かすことになるからです。
生活の箱はどこに置くか|預金・MRF・個人向け国債
金利のある日本になってから、いちばん悩むのがここでした。置き場所を3つ並べて考えました。受け取れる利息はこの順に大きくなり、そのかわり守られ方や取り出しやすさが変わります。
| 置き場所 | 利率(年・税引前) | 100万円を1年置いた場合 | 守られ方・取り出しやすさ |
|---|---|---|---|
| 預金(メガバンク普通) | 0.4%(1年定期は0.5%) | 約4,000円 | 預金保険で1金融機関あたり元本1,000万円と利息まで保護。いつでも下ろせる |
| MRF | 0.78〜0.81%程度 | 約8,000円 | 投資信託なので元本保証・預金保険なし。いつでも解約でき、換金時の費用なし |
| 個人向け国債(変動10年) | 1.95%(固定5年は2.24%) | 約19,500円 | 発行元は国。1万円から。発行から1年は換金できず、以後は直前2回分の利子相当が引かれる |
※2026年9月14日時点の数字です。
預金の安心は、預金保険で守られていることです。ただし守られるのは一つの金融機関につき1,000万円までで、退職金がそのまま入った口座は、ちょうどその線の上にいます。
MRF(マネー・リザーブ・ファンド)は、証券会社によっては証券口座に入れたお金が自動でこれになります。国債などの公社債や、企業が短期でお金を借りるためのコマーシャル・ペーパーで運用する投資信託です。元本保証はありませんが、私が落ち着けたのは、投資信託のお金は証券会社ではなく信託銀行という別の金庫に、信託銀行自身のお金とも分けて保管することが法律で決められていると知ったからです。証券会社や運用会社がつぶれても、金庫の中身は別に守られる仕組みです。ただ、値段が下がる可能性はゼロではありません。
個人向け国債は、最低でも年0.05%は出すという約束がついています。名前は10年でも1年たてば換金できるので、私は生活の箱に入れて考えています。
受け取れるものが大きくなるほど、守られ方か取り出しやすさのどちらかが変わる。この流れはきれいにつながっています。だから私は、今月使うお金は預金、数か月のうちに使うかもしれないお金はMRF、1年以上動かさないお金は国債、と分けました。「どれが得か」を選んだのではなく、「いつ使うか」で置き場所が決まった、というだけです。
まとまったお金が入った直後に、私が気をつけていること
まとまったお金が入った直後は、判断が雑になりやすいと感じています。私が自分に言い聞かせているのは、この4つです。
- 一度に全額を市場へ入れない
- 銀行・証券会社・保険会社の窓口ですすめられたものを、その場で決めない。窓口の方には窓口の方の目標があります。私たちの老後をいちばんに考えられるのは、自分だけです
- 利回りの数字だけで選ばない。タコ足配当や手数料の高い商品を選ぶ結果になりかねません
- 相場が荒れている週に、あわてて決めない
動かすたびに手数料と税金がかかる、という事実も見える化しておきたいところです。アメリカの大手運用会社フィデリティが「どんな人の成績がいちばん良かったか」を調べたら、亡くなっていた人の口座がいちばん増えていて、2番目は口座を持っていることを忘れていた人だった、という話があります。本当にあった調査かどうかははっきりしないそうですが、ずっと語り継がれていること自体に意味があると私は思っています。
金利のある時代に戻った、ということ
これまで日本は金利がほぼゼロで、動かさないお金に行き先がありませんでした。今は金利のある時代に戻り、お金を貸す側にも取り分があります。
ただし同じことが別の面でも起きます。借りているお金の負担は重くなります。住宅ローンが残っている方は、資産を増やす前にローンを返すことが最大の課題になると思います。
「先に500万円を払ってください」と言われた日
JALの客室乗務員として30年働いて、企業年金は1000万円のはずでした。受け取る日に言われたのが「先に500万円を払ってください」の一言です。
最初は意味がわかりませんでした。総務に電話をして確かめたら、休職していた期間の掛金が未払いのまま残っていて、それを払わなければ年金は出ません、と。何十年も前の空白の期間の請求書が、受け取りの日にまとめて届いたのです。1000万円のはずが、手元に残ったのは500万円でした。
現役のときは、未来にそんなことが起こるなんて知りませんでした。私のように会社の福利厚生を使って産休・育休・病気休職をした方は、退職金や年金の見積もりを受け取ったとき、金額だけでなく控除されるものがないかを一度確かめておかれると安心だと思います。私は確かめていませんでした。
JALでは2010年に、企業年金が現役でおよそ5割、OBでおよそ3割、減らされました。入ってくる金額は、思っていた通りには入らない可能性がある。この経験があって、私は国や企業、金融機関に自分の資産を任せきりにしておくことはできない、と考えを変えました。
だから「いくらもらえるか」ではなく「この先、自分はいくら必要か」から逆算する。そうすると不安が減っていきました。そして、自分が何歳まで働けるかも大事になります。私は今もデパ地下でパートをしています。労働で生きる力をつけて、そのお金を増やすのは優秀な企業にお願いする。私には相場を当てる力はありません。老後は、売らなくていいかたちを自分でつくる。この3つを分けたら、相場が下がった週でも生活も感情も揺れなくなりました。
私の投資はウォーレン・バフェットの真似です
私の投資は、ウォーレン・バフェットのやり方を真似しています。ただ、真似できているのは3つだけです。
- 良い企業を、割安なときに買う。悲観の年に、決算を見てから買います
- 買ったら、長く持つ。株価ではなく、その会社の稼ぐ力を見ます
- わからないものは、買わない。相場を当てにいかない。流行りのものには飛びつきません
結果として、3つ目がいちばん効きました。当てにいかないことで、成績も気持ちも落ち着きます。
ブルームバーグの特集にもAI・半導体株バブルへの警戒が前提として置かれていました。AIと半導体は、私にとっては「当てにいく投資」です。理由は2つあります。ひとつは、事業の実態がつかめないこと。何兆円の投資という話は出てきますが、その会社が今いくら稼いでいて、これから何で稼ぐのかを、私は自分の言葉で説明できません。もうひとつは、売り買いしている人の顔ぶれが違うこと。短期で売買するトレーダーがたくさん入っていて、一日で何パーセントも動くのは企業が一日で変わったからではなく、その方たちが乗ったり降りたりしているからです。
これは「持たないことが正解」という話ではなく、私には向いていない、というだけです。わからないものを持ってしまうと、下がった日に理由が探せません。理由が探せないと、持ち続けられません。
まとめ|やる順番は4つ
- 使う時期で、分ける
- 置き場所を、決める
- 時間を分けて、入れる
- 決算を、自分で見る。わからないものは買わない
私が資産を増やせたのは、2020年3月にコロナで相場が崩れたときでした。その下落局面で追加投資できたのは、何に投資しているかがわかっていたからです。
もう一度、今日の結論です。いつ使うお金かで分ける。一度に全部は入れない。あてにいかない。置き場所を選ぶのは、そのあとでした。1000万円をどこに置くかと悩んでいる、老後に入る前の50代60代の方に届いたらうれしいです。
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