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口座が乗っ取られて勝手に売られた株が「戻ってくる」というとき、何かが巻き戻されているのではなく、証券会社が同じ会社の株を同じ株数だけ市場で買い直して口座に戻している、という形が基本です。値上がりしていればその差額は会社側の負担になります。ただし、どういう場合に、どこまで対応するのかは会社ごとの規定と約款によりますし、利用者の側の管理状況も見られます。必ず戻ってくるという保証はありません。仕組みのほうを整理しておきます。
※本記事は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものです。筆者は金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けておらず、個別の銘柄や特定の証券会社の利用を推奨するものではありません。補償の有無・範囲・方法は各証券会社の規定および約款と、個別の事案についての判断によります。この記事は一般的な仕組みの説明で、特定の会社の取り扱いを保証するものではありません。実際の取り扱いは必ずご自身の口座がある会社にご確認ください。
「株が戻る」とは、買い戻して返すということ
報道や各社の案内で「売られた株を買い戻して返す」という言い方を見かけます。私は最初、何か特別な取り消しの手続きがあるのだと思っていました。
実際は、もっと単純です。売られてしまった取引そのものは市場で成立していて、取り消せません。相手方には買った人がいます。だから会社は、同じ会社の株を同じ株数だけ市場で買い直して、その株を口座に入れる。それで元の状態に近い形に戻す、という手順になります。
証券会社には売買の記録が残っている
この手順が成り立つのは、何がいくらで何株売られたかが記録に残っているからです。いつ、どの会社の株を、いくらで、何株売ったか。そのお金がどこへ動いたか。証券会社はこれを記録として持っています。
私がこれを知って思ったのは、自分の側でも記録を見られるようにしておいたほうがいいということでした。会社が記録を持っているのと、自分がそれに気づけるのとは別の話です。知らない注文が出ていることに自分で早く気づけたほうが、話は早く進みます。
原状回復が基本の考え方
この種の対応の考え方は、一般に原状回復といわれます。事件がなかった状態に戻す、ということです。
- 株が売られた場合は、同じ会社の株を同じ株数だけ買い戻して口座に戻す
- 現金が引き出された場合は、同じ金額を戻す
これがもとの形で、どこまでこの通りになるかは個別の判断になります。
値上がりしていた場合、差額はどうなるのか
買い戻すまでの間に株価が上がっていると、売られたときの金額では同じ株数が買えません。数字で書くとこうなります。
- 勝手に売られたのは、ある会社の株100株
- 売られたときの値段が1株2,000円で、口座に入ったお金は20万円
- 買い戻すときの値段が1株2,100円なら、必要なお金は21万円
この1万円の差を会社が負担して株を戻す、というのが原状回復の考え方です。逆に値下がりしていた場合は、買い戻しに必要なお金は少なくて済みます。
ここで使った金額はあくまで説明のための例で、実在する会社の株価ではありません。また、こうした差額の扱いも各社の規定と個別の判断によります。
株ではなく、お金で戻ることもある
いつも同じ株が買い戻せるとはかぎりません。
- 株価が大きく動いていて、買い戻しが現実的でない場合
- 取引が少ない会社の株で、まとまった株数を市場で買えない場合
こういうときは、株そのものではなくお金で対応する、あるいは別の方法で埋める、という形になることもあります。どの方法になるかを決めるのは会社側で、利用者が選べるものではありません。
投資者保護基金は、この場面の仕組みではありません
この記事を最初に書いたとき、私は「証券会社だけで負担できない規模になれば日本投資者保護基金からの補償もありうる」と書いていました。これは私の誤解でした。訂正します。
投資者保護基金は、証券会社が破綻して、預けていた資産を返せなくなったときに、一定の範囲で顧客に支払うための仕組みです。第三者による不正な取引の被害を埋めるためのものではありません。乗っ取りの被害にどう対応するかは、基本的にその証券会社と利用者のあいだの話になります。
仕組みの名前が似ていると、自分でもつい混ぜてしまいます。私は制度の話を書くときは、その制度が何のために作られたものかを先に確かめるようにしました。
必ず戻るとはかぎりません
ここがいちばん大事なところだと思っています。各社が対応の方針を示していても、それは「どんな場合でも全額を戻す」という約束ではありません。
一般に、利用者の側の管理に問題があったと判断された場合は、対応が一部にとどまったり、対象外になったりすることがあります。たとえばパスワードを他の人と共有していた場合や、偽のサイトだと気づけるはずの場面で情報を入力していた場合などです。どこまでが落ち度と見られるかは、ひとつずつの事情を見て判断されるものなので、あらかじめ線を引いて説明することはできません。
私が言えるのは、戻るかどうかは会社の規定と約款、そして個別の判断によるということだけです。だから、戻ってくるかどうかを当てにして設定を後回しにするのは、やめておいたほうがいいと思いました。
私が自分の口座で確かめたこと
仕組みを調べたあとで、自分の口座のほうを見ました。やったのは次の三つです。
- 約款と、不正利用についての案内のページを読んだ。どういう場合に会社が対応するとしているか、利用者に何を求めているかを確かめた
- ログインと注文のお知らせが自分に届く設定になっているか確かめた
- 二段階認証を設定して、パスワードの使い回しをやめた
読んでみると、会社側の対応について書かれている分量よりも、利用者に求められる管理について書かれている分量のほうが多いと感じました。それが答えなのだと思いました。
買ったら売らないと決めている人にとっての意味
私は、良い会社を割安なときに買って長く持つやり方でやっています。買ったら売らないと決めているので、勝手に売られるというのは一番困る形です。
仮に同じ株数が戻ってきたとしても、持っていた期間は戻りません。長く持つことで配当が増えていくのを待っているところだったのなら、その待ち時間も途切れます。だから、戻る仕組みがあることを知って安心するのではなく、戻す手間をかけずに済むようにしておくほうを選びました。
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私は使う口座を絞って、注文の通知と取引の履歴を自分でも定期的に見るようにしています。口座を増やしすぎないほうが、設定の見直しも続けやすいと感じています。
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