昨日6月15日の米国市場。ニューヨークダウが過去最高値を更新しました。S&P500もナスダック100も、そろって大幅上昇です。
きっかけは、週末のアメリカとイランの戦闘終結合意。これを受けて「リスクを取りに行こう」というムードが一気に強まりました。日経平均も昨日は7万円目前、6万9300円台まで上がっています。
……でも
今日は「上がってよかったね、万歳!」で終わる回にはしません。
正直に申し上げます。こういう派手に上がった日こそ、冷静さが必要なんです。
「アメリカとイランの終戦、本当に実現するの?」「イスラエルが暴れて全部おじゃんになるんじゃないの?」――一見、不安に見える材料も、蓋を開けてみれば前向きに読めることがある。 その読み方を、今日も筋道立てて、1個ずつ一緒に整理していきましょう。
◆昨日の米国株はなぜ買われたのか
まずは数字から整理します。
- ニューヨークダウ:5万1671ドル → 最高値更新
- S&P500:+1.56%
- ナスダック:+3.02%
3指数そろって上昇です。
ではなぜ上がったのか。今日はこの「なぜ」を、1本の線でつないで追っていきます。
順番に行きます。
出発点は、アメリカとイランの合意。
→ これで原油が大きく下がった → 原油が下がると、インフレ警戒が和らぐ → すると長期金利が落ち着いた → 利上げ観測も後退した → 結果、半導体株に買い戻しが入った → ダウ最高値、ナスダック大幅上昇
この一本道です。中東のニュースが、めぐりめぐって半導体株を上げて、最高値をつくった。そんなイメージですね。
数字で確認しましょう。
原油(WTI先物)は -4.9%、80.75ドル。一時は79ドル台、3か月ぶりに80ドルを割り込みました。ホルムズ海峡の解放期待、つまり「原油の供給が正常化するぞ」という期待からです。
そして長期金利。アメリカの10年債利回りは 4.47% まで低下、1か月ぶりの低水準です。年内の利上げ確率も、6割から5割へはっきり後退しました。
ここで効いてくるのが、金利と株の関係です。
金利が高いと、将来の利益が大きく割り引かれて、安く見積もられてしまう。だからグロース株――将来の利益で買われている成長株は下がりやすい。逆に金利が下がると、将来の利益が高く評価されやすくなって、グロース株が上がる。
今はAI半導体が市場を引っ張っていますから、AI半導体が元気になると、全体が元気になる。そんな構図です。
実際その通りに動きました。
- SOX指数(半導体):+5%、最高値更新
- マイクロン:+11%
- AMD:+7%
- エヌビディア:+4%
半導体は6月に入って「過熱しすぎ」と警戒されて高値で足踏みしていたんですが、10日の安値から16%高と、きれいに回復しています。
市場の体温も裏付けています。「恐怖指数」と呼ばれるVIXは16台前半まで沈静化。投資家の警戒が強いとされる20を大きく下回ってきました。
そして面白いのが**金(ゴールド)**です。金は+2.7%の4351ドル。戦争のあいだ、金はむしろずっと売られていたんですよ。原油高でインフレと利上げが警戒されて、金利のつかない金が嫌われていた。それが今、逆回転している。金利のつかない金に、買いが戻り始めています。
「金利が下がるのに、金も上がる」――一見ちぐはぐに見えますが、これは「いずれ金利が下がる」という見立ての表れとも言えるんですね。
◆2. SpaceX、2日で43%高。誰が買ってる?
さあ、今日のもう一人の主役、SpaceXです。
先週金曜に上場して、初値が+19%。そして昨日15日はさらに+20%高の192.50ドルで引けました。公開価格の135ドルから、**わずか2日で+43%**です。
時価総額は2兆5300億ドル、日本円でおよそ405兆円。Amazonに次ぐ世界6位の巨大企業です。
世界6位。…
何が起きているか。15日の個人投資家の米国株買い越しの、なんと7割超が、このSpaceX1銘柄に集中していたそうなんです。
推進力は完全に個人投資家。マスクさんは「2030年に売上1兆ドルに届く」と発信していて、これは2025年実績の53倍。市場はその壮大な夢を買っているわけです。
こういう急騰には、必ず反動が来ます。公開価格で買えた個人には利益確定の誘惑が働きますし、今後ロックアップ期間が明ければ、まとまった売りが出る可能性もある。
派手な一発を追いかけるんじゃなくて、市場の体温計としてSpaceXを眺める。それくらいの距離感でいいと思っています。
◆3. 本当に終戦するの?
15日、米国とイランは戦闘終結の覚書に署名しました。そして19日、今週金曜にスイスで正式調印の予定です。
中身は、ホルムズ海峡の即時解放と海上封鎖の解除。これがなされるかどうか。ここがとても重要です。
でも、正直に言います。
アメリカの報道を見ても、「これで本当に終わるのか」という慎重な声、いや、むしろ「イスラエルが暴れて全部が無になるんじゃないか」という懸念が、残ります
実際、イスラエルはこの合意に反発しています。与党のある党首は「この合意は我々を拘束しない」と言い切って、レバノンへの攻撃を続けるべきだと主張している。イスラエル軍はレバノン駐留を続ける構えで、戦闘が再発するリスクは確かに残っています。
合意はした。でも、解決ではない。
「15日は楽観に傾きすぎ、ホルムズ通行が実現しなければ値を戻す」という声があります。原油についても、バークレイズは「10〜12月でもWTIは95ドル」と見ていて、生産の正常化は2026年末ごろ、と。原油もすぐには回復しなさそうだ、という声もあるわけです。
長期投資家が見るべきは、「すべてが完全に解決したか」ではありません。「最悪のシナリオが避けられそうか」、ここを見るべきだと思っています。
今回いちばん怖かった最悪のシナリオは何だったか。ホルムズ海峡の封鎖が長く長く続いて、原油が暴騰して、世界中のインフレが止まらなくなることです
そのシナリオは、覚書への署名によって、はっきりと遠のいたと思います。
しかも、その方向性は口先だけじゃない。ちゃんと実態に出ている。「最悪は避けられそうだ」と市場も判断しているからこそ、原油が3か月ぶりに80ドルを割って、金利が下がって、株が最高値をつけたわけです。
そしてイスラエルの問題。これは確かに火種です。でも、今に始まった話じゃない。 ずっと昔から続いている話です。
イスラエル対ヒズボラというのは、レバノンを舞台にしたずっと前からの局地対決。そしてイスラエルは、今回の米イラン合意の当事者ではない
気にすべきは、「海峡と原油」、つまり米イランが合意するかどうか
イスラエルに対して、トランプ大統領が公然と「終戦前になぜあんな攻撃をしたんだ」と叱責しています。つまりアメリカは、終戦を止める側じゃなくて、進める側にいる。
今年は中間選挙の年です。トランプさんとしては、これ以上イスラエル・イランにお金を注ぎ込んで――今回もかなりの戦費がかかって、ミサイルも大きく失ったと言われています――これ以上続けて中間選挙で負ける。これだけは、トランプさんとしても避けたい
過去の中東危機は、ほとんどが「数日〜数週間」で株価が元に戻っています。 くすぶり自体は何年も続くのに、株価への直接的なダメージは、意外なほど短いんです。順番に見ていきましょう。
◆① 2023年10月 ハマスの襲撃(ガザ紛争の始まり)
まず、今の中東情勢のそもそもの起点です。
2023年10月、ハマスがイスラエルを襲撃して、ガザ紛争が始まりました。世界に衝撃が走った大事件でしたよね。
ところが――株価への影響は、ほとんどありませんでした。
野村證券のストラテジストも指摘しているんですが、ハマス襲撃のあとも原油価格はむしろ低下して、日米の株式は史上最高値の更新を続けていたんです。当時は、中東情勢よりも景気や金利の見通しのほうが、株価を動かしていた。 Kabutec
ここが大事なポイントです。「事件の衝撃の大きさ」と「株価へのダメージ」は、必ずしもイコールじゃない。 市場が見ているのは、あくまで「原油」と「金利」なんですね。
◆② 2024年〜 イラン・イスラエルの応酬(くすぶり期)
2024年に入ると、イランとイスラエルが直接ミサイルを撃ち合う場面も出てきました。緊張は高まったり、収まったり。
でもこの時期も、金融市場全体への影響は限定的でした。「くすぶってはいるけど、市場は冷静」という状態が、けっこう長く続いたんです。
ここで覚えておいてほしいのは、「火種(くすぶり)」は何年も消えないということ。2023年から数えても、もう2年以上くすぶり続けています。だからといって、その間ずっと株が下がり続けたわけではない。くすぶりと株価は、別物なんです。
◆③ 2025年6月 十二日間戦争(ここが最重要の教科書)
そして、いちばん参考になるのがこれです。2025年6月の「十二日間戦争」。
時系列を追いますね。
- 6月13日:イスラエルがイランを先制攻撃。戦争が始まる
- 6月22日:アメリカが参戦。イランの核施設3か所を空爆
- 6月23日:イランがカタールの米軍基地に報復。でも事前通告つきで「被害は出さない」シグナル
- 6月23日:トランプ大統領が「完全な停戦が合意された」とSNSに投稿
- 6月25日:停戦が発効。以降ずっと維持
開戦から停戦まで、たった12日間です。
では株価はどう動いたか。開戦当日の東京市場を見てみましょう。
6月13日、「イスラエルがイランを攻撃」の報で、日経平均は前場に一時632円安、マイナス1.7%まで急落しました。 Kabutec
でも、その日のうちに、です。円高が一服して押し目買いも入って、下げ幅を338円安、マイナス0.9%まで縮めて引けています。 Kabutec
最初の急落マイナス1.7%が、その日の終わりにはマイナス0.9%まで戻っている。 1日のうちに、半分近く戻したんです。
そして停戦までわずか12日。マネックス証券の岡元さんは、この局面を振り返ってこう言っています。2025年4月の関税ショックでの株価下落も、振り返ってみればS&P500やナスダック100にとって極めて賢い買い場だった、と。つまり、怖くて売った人が負けて、淡々と持っていた人・買い増した人が勝った局面だったわけです。 Monex
◆④ そして今、2026年2月〜(今回の局面)
今回、2026年2月28日に、米国とイスラエルが再びイランを攻撃しました。2025年6月の十二日間戦争のさなかに米国がイランの核施設を攻撃してから、わずか8か月後のことです。 SBI証券 投資情報メディア
このときの日本株はどうだったか。攻撃の翌週、3月2日の日経平均は前週末比793円安、マイナス1.35%。一時は1500円を超えて下落しました。 SBI証券 投資情報メディア
……でも、思い出してください。昨日6月15日、その日経平均は6万9300円台まで戻って、ダウは最高値を更新しているんです。
つまり、2月末に急落した相場は、約3か月半でここまで回復してきている。 これが、今、私たちがいる場所です。
◆過去のパターンを一枚にまとめると
整理しますね。中東危機での株価の「下落 → 回復」のパターンは、だいたいこうです。
- 2023年10月 ハマス襲撃:株価ほぼ無風。最高値を更新し続けた
- 2024年〜 イラン・イスラエルの応酬:くすぶりは続くが、市場への影響は限定的
- 2025年6月 十二日間戦争:開戦日に一時-1.7% → 同日中に-0.9%まで戻し → 12日で停戦
- 2026年2月末〜 今回:急落 → 約3か月半でダウ最高値まで回復
見えてくる共通点は、3つです。
1つ目。「火種(くすぶり)」は何年も消えない。 イスラエルとイランの対立は1979年からですから、もう40年以上。これはこれからも、ずっと続きます。
2つ目。でも「株価へのダメージ」は、たいてい数日〜数週間で消える。 最初の攻撃でガクッと下がって、ホルムズ海峡の最悪シナリオが避けられそうだと分かった瞬間に、スルスルと戻る。これの繰り返しなんです。
3つ目。市場が本当に見ているのは「原油」と「金利」だけ。 戦闘そのものより、原油が暴騰してインフレが止まらなくなるかどうか。そこだけなんですね。
◆4. 今後の注目
今週16日・17日、新FRB議長のもとで初めてのFOMCがあります。政策金利そのものは「据え置き」が大方の見込みです。
注目ポイントは2つ。
1つ目、ドットチャート。FOMCメンバーの金利見通しがどうなっているか。 2つ目、議長の会見のトーン。原油が下がって利上げ確率が5割まで後退した、この流れがどう反映されるか。
そしてもう一つ、今日この後――今日は私たち日本にとって、すごく大事な日です。
日銀の金融政策決定会合で、政策金利が1%に引き上げられるという発表がある見込みです。
今日の内容
- ニューヨークダウは最高値更新
- SpaceXは2日で+43%
- 原油は3か月ぶりの安値
確かに、派手なリスクオンの1日でした。
でも、何度もお伝えしています。こういう日こそ、飛び乗らない。
署名は19日。覚書の詳細はこれから。「楽観に傾きすぎ」という声もある。終戦がすんなり行くとは限りません。
でも最高値の日も、暴落の日も、何ひとつ変わりません。
当てに行かない。ニュースに振り回されない。S&P500や全世界株で、世界中にお金を働かせ続ける。淡々とホールドして、コア(核)を守る。 高配当株なら財務安定な増配を続ける本業で稼ぐ力がある割安な時に投資していく
最悪のシナリオが遠のいた――その大きな方向だけを受け止めて、あとは、自分の毎日を生きていきましょう。
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