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航空事故の記事を読むとき、私は「ヒューマンエラー」という言葉が出てきた時点で結論が出たと受け取らないようにしています。この言葉は原因の名前ではなく、これから調べることの入口を指す言葉だと考えているからです。この記事では、公表されている資料で何が分かっていて、何がまだ分かっていないのかを、私が整理した形で書きます。
当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けておらず、特定の会社や金融商品の売買を勧めるものではありません。本文の数字や記述は2026年10月時点で公表されている資料にもとづくもので、最新の内容は運輸安全委員会や各社の公表資料の原文でご確認ください。事故の原因については、調査を担う機関が公表した内容の範囲でしか書いていません。
ヒューマンエラーは結論の名前ではなく、調べ始める場所の名前
私が最初に誤解していたのは、ヒューマンエラーという言葉を「人が間違えた、だから話はおしまい」という意味で使っていたことでした。航空分野の公表資料を読むようになって、この言葉の使われ方が自分の理解とずいぶん違うことに気づきました。報告書のなかでは、人の行動は「なぜその行動が、その状況ではもっともらしく見えたのか」を調べるための手がかりとして扱われています。
つまり出発点です。終着点ではありません。私はこの読み替えをしてから、事故の記事を読むときの落ち着き方が変わりました。
公表資料が書くことと、書かないこと
国内で発生した航空事故や重大インシデントについては、運輸安全委員会が調査を行い、経過報告や報告書を公表します。ここに何が載るのかを先に知っておくと、報道との差が分かりやすくなります。
| 公表資料に載るもの | 公表資料が目的としていないもの |
| 発生の日時と場所、機種、飛行の経過 | 誰が悪かったのかという責任の割り振り |
| 記録装置や交信記録から確認できた事実 | 関係者の動機や心情の推測 |
| 損傷の状況、気象や設備の状況 | 処罰や賠償の判断 |
| 調査の結果としての原因の分析、勧告や意見 | 調査が終わる前の原因の断定 |
運輸安全委員会の設置法では、調査の目的が事故の防止にあることと、責任の追及を目的としないことが定められています。原文は同委員会のサイトで読めます。ここを一度自分の目で確かめておくと、「報告書に責任の話が書いていない」理由が分かります。
個人の不注意で話を止めると、次に残るものがなくなる
人が関わる仕事で何かが起きたとき、原因を一人の不注意に寄せて説明するのはいちばん簡単です。ただ、そこで止めてしまうと、次に同じ状況に置かれた別の人を守る手立てが何も残りません。私が航空分野の公表資料から受け取ったのはこの考え方でした。
手順が二重になっているか、確認の声かけが決まった形で行われるか、見落としたときに別の人や装置が気づける作りになっているか。こうした「仕組みの側」を見直す発想が、報告書の勧告や意見の部分に表れています。私は航空の専門家ではないので中身の評価はできませんが、どこを読めばその発想が確かめられるかは分かるようになりました。
分かっていることと、分かっていないことを分けて置く
事故の直後にいちばん増えるのは、分かっていないことについての説明です。私は記事を読むときに、頭のなかで二つの箱を用意するようにしました。
- 公表資料に事実として書かれていること。発生の経過、機体の損傷、交信の記録として確認されたことなど。
- まだ公表資料に書かれていないこと。原因の最終的な分析、関係者の判断の背景、装備や手順がどう関わったのかという評価。
二つめの箱に入るはずの話が、一つめの箱の口調で書かれている文章に出会ったら、私はそこで読むのをやめることにしました。これは航空の記事にかぎらず、投資で会社を調べるときにも同じようにしています。確かめられることと、まだ誰にも分かっていないことを混ぜない、というだけの話です。
グラスコックピットという装備の話は、用語の整理から入る
電子的な画面で計器を表示する操縦席のつくりを、グラスコックピットと呼びます。この装備そのものの説明は別の記事にまとめました。ここで私が書いておきたいのは、ある装備の名前と、ある事故の原因を、公表資料が結びつけていない段階で結びつけて語らない、ということだけです。
装備の特性について過去に研究があることと、個別の事故の原因がその特性にあったと認定されることは、まったく別の話です。私はこの区別を自分のなかで引いておくことにしました。
原文をどこで開くか。私がたどっている順番
自分で確かめたいとき、私は次の順番で開いています。どれも一般に公開されている資料です。
- 運輸安全委員会のサイト。事故や重大インシデントの調査報告書、経過報告、勧告と意見が種類ごとに整理されています。
- 国土交通省の報道発表。運航に関する指示や、空港の運用に関する変更が出たときはここに載ります。
- 航空会社自身のニュースリリース。会社として何を発表したのかは、報道の要約ではなく会社のページで読むようにしています。
- 海外機関の公開資料。装備や人の判断に関する一般的な研究は、各国の航空当局や安全に関する団体が公開しているものがあります。
どの資料も、読む前に「これは調査の途中か、終わったあとか」を確かめます。経過報告の段階で書かれていることと、最終の報告書で書かれることは、重みが違います。
私がこの件について決めたこと
私は50代で、投資でも調べ方のくせを一つに決めています。自分で原文を開いて、書いてあることだけを受け取る、というやり方です。ウォーレン・バフェットのやり方を真似しているつもりで、会社を見るときも決算を自分で見て、分からないものには手を出さないことにしています。
航空事故についても同じ態度でいることにしました。調査の結果が出るまでは、私の側で原因を決めない。出たら原文を読む。この二つだけです。読んでいて落ち着かない気持ちになることはありますが、分からないことを分からないままにしておくのは、私にとっては誠実さの一つの形だと考えています。
この記事で直したところ
この記事は以前、グラスコックピットへの依存が事故の原因であった可能性を項目立てで並べる形になっていました。公表資料が原因としてそれを認定していない段階で、原因の候補を断定的な見出しで並べるのは適切ではないため、その構成を全て削りました。あわせて次の点を直しています。
- タイトルにあった「依存の可能性」という推測の表現を外し、公表資料で分かることと分からないことの整理という内容に変えました。
- 「注意のトンネリング」「情報過多」「自動化への過信」を個別の事故の原因として説明していた箇所を削除しました。一般的な研究の存在と、個別の事故の原因認定は別の話であるためです。
- 特定の空港名や便名を挙げて原因の推測につなげていた記述を削除しました。
- 読者に再確認を促す指示の形で結んでいた末尾を、自分がどう決めたかという書き方に直しました。
- 冒頭にあった動画への誘導文と、本文に貼られていた外部リンクの羅列を削除し、原資料のたどり方を文章で説明する形に置き換えました。
- 対策を断定的に示した表のうち、公表資料で確認できない部分を削除し、公表資料に載るものと載らないものの対照表に差し替えました。
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