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「下がったところで投資する」という言い方をよく見かけます。私もそうしているのですが、これには前提条件があると思っています。その前提を確認しないまま下がった会社を買うと、安いのではなく安い理由があるものを掴んでしまいます。
先に結論を書きます。私が買う前に見ているのは、「下がった理由が会社の中身にあるのか、まわりのムードなのか」の1点だけです。そのうえで、安さを3つのものさしで確かめて、会社の体力を10の項目で確かめます。
この記事では、その手順を書いたあと、実際に東ソー(4042)を一つひとつ当てはめてみます。
※本記事は私個人の考えと調べたことの紹介であり、特定の銘柄・商品の購入を推奨するものではありません。当ブログは金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けていません。数字は2026年10月時点で私が決算資料などで確認したもので、変わります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
この記事の内容は、YouTubeの動画でもお話ししています。
「安い」と「安い理由がある」は違う
株価が下がっている理由が「会社が壊れているから」なのか、「まわりのムードに巻き込まれただけ」なのか。この2つを見分けることが、私にとってのスタート地点です。
会社が壊れている場合(不正が出た、主力の事業がなくなった、借金が返せない)は、いくら安くても私は買いません。安いのではなく、安い理由があるだけだと受け止めています。
まわりのムードに巻き込まれただけの場合(市場全体の急落、地政学リスク、金利への不安)は、会社の中身がしっかりしていれば、私にとっては割安で投資できるタイミングになります。
つまり「会社の中身を先に確認して、そのあと安くなったときに買う」という順番です。順番が逆になると、私は安さだけで判断してしまいます。
安さを確かめる3つのものさし
PER|この会社、何年分の利益が株価に入っているか
PERは、今の株価がその会社の利益の何年分かを表す数字です。株価1,000円で1株利益(EPS)が100円なら、1,000÷100で10倍。10年分の利益が今の株価に織り込まれている、という見方になります。
PERが低いほど、少ない年数分の利益しか株価に入っていないことになります。
PBR|株価は会社の中身より安いか
PBRは、株価が1株あたりの純資産の何倍かを表す数字です。1倍を下回っていれば、会社が持っている純資産より安い値段が付いていることになります。
配当利回り|今の株価でいくら受け取れるか
株価2,000円で1株配当が100円なら、100÷2,000で5%です。100万円分買えば年5万円という計算になります。
私が目安にしているのは税引前で3.75%以上です。税金(約20%)が引かれたあとに3%以上が手元に残る水準、という考え方からきています。
ここで大事だと思うのは、配当が同じでも株価が下がれば利回りは上がるということです。1株配当100円の会社なら、株価3,000円で3.3%、2,500円で4.0%、2,000円で5.0%になります。
「下がったところで投資する」というのは、私の受け止め方では同じ配当を、より安い値段で手に入れることです。
3つのものさしは組み合わせて見る
PER、PBR、配当利回りは、どれか1つだけで判断すると見誤ると思っています。
3つが同時に低い(利回りは高い)とき、市場がその会社を低く見ている可能性があります。一方で、こういう危ない形もあります。
- PERが低い → 利益が一時的に膨らんでいるだけ、あるいは激減している途中
- 配当利回りが高い → 会社が無理をして配当を出している(減配の可能性)
- PBRが低い → 持っている資産そのものが傷んでいる
だから私は「安い」ではなく「なぜ安いのか」を自分で確かめるようにしています。
会社の体力を確かめる10のチェック項目
3つのものさしで割安だと思ったら、次に会社の健康診断をします。私が使っているのは次の10項目です。
| チェック項目 | 何を見るか | 私の目安 |
|---|---|---|
| 配当利回り | 今の株価でいくら受け取れるか | 3.75%以上(税引前) |
| PBR | 株価は中身より安いか | 0.5〜1.5倍 |
| 配当政策 | 減らさない姿勢があるか | 過去の実績で判断 |
| 配当継続力 | 利益がゼロでも何年配当を出せるか | 利益剰余金÷年間配当総額 |
| 売上高 | 長期的に伸びているか | 上昇トレンド |
| 営業利益率 | 本業で稼ぐ力があるか | 10%以上 |
| EPS・BPS | 1株あたりの利益と資産が増えているか | 長期の上昇トレンド |
| 自己資本比率 | 借金に頼りすぎていないか | 50%以上 |
| 流動比率 | 短期の支払い能力があるか | 200%以上 |
| 現金の保有 | 手元の現金は潤沢か、増えているか | 増加傾向 |
この10項目を見て「体力のある会社だ」と確認できた会社だけを、PER・PBR・配当利回りが自分の目安まで来たときに買う。これが私の「下がったところで投資する」の全体像です。
配当と値上がりの両方が狙える理由
株価が安いときに買えれば、同じ配当でも自分の買値に対する利回りは高くなります。体力のある会社を選んでいれば、減配の可能性も低くなりますし、増やしてくれることもあります。
そして、体力のある会社が一時的な理由で下がっているなら、市場が落ち着いたときに株価が本来の水準に戻ることがあります。PBR1倍を下回って買えていれば、1倍に戻るだけで株価は上がります。さらに会社が利益を積み上げて純資産が増えれば、株価もそれについてきます。
ただ、これは「そうなることもある」という話で、戻る保証はありません。何年もそのままということもあります。
東ソー(4042)を10項目に当てはめてみる
ここからは、実際に1社を当てはめてみます。以下の数字は2026年10月時点で私が決算資料などで確認したものです。私がこの会社を持っているという紹介であって、購入を勧めるものではありません。
1. 配当利回り3.75%以上(税引前)→ クリア
1株配当100円、株価2,366円で、配当利回りは約4.2%です。私の目安の3.75%を超えています。
2. PBRが高すぎないこと(0.5〜1.5倍)→ クリア
PBRは約0.91倍。1円の価値があるものに1円未満の値段が付いている状態です。株価に過度な成長期待が織り込まれていない、と私は受け止めています。
3. 配当政策が分かりやすく、実績に納得できること → クリア
15年間一度も減配していません。1株12円から100円まで増配を続けてきた実績があります。
4. 配当継続力が高いこと → クリア
利益剰余金は6,826億円。年間の配当総額は約300億円なので、利益剰余金だけで約22年分の配当を払える計算になります。
5. 売上高が長期的に上昇トレンド → 注意
2017年以降は0.74兆円から1.06兆円へ伸びていますが、2026年の予想は1.01兆円で前年比5%の減収です。長期では上昇ですが、直近は下降局面です。景気に左右される会社の宿命であって、事業そのものが壊れているわけではないと私は受け止めています。
6. 営業利益率10%以上 → 注意
2025年3月期の営業利益率は9.3%、2026年3月期の予想は8.9%で、目安の10%を割っています。ただ2017年は15.0%、2022年は15.7%と、景気が良いときには15%を超えた実績があります。今はサイクルの底にあると見ています。
7. EPS・BPSが長期的に上昇トレンド → BPSはクリア、EPSは注意
BPS(1株あたり純資産)は2010年の540円から2025年の2,596円へほぼ一直線に増えています。会社の中身は着実に厚くなっています。EPSは景気に連動して上下するので、今は下がっている局面です。
8. 自己資本比率50%以上 → クリア
自己資本比率は62.3%です。借金に頼りすぎていない状態だと受け止めています。
9. 流動比率200%以上 → 注意(概算)
決算短信から読み取れる主な項目で計算すると、流動比率はおおよそ210〜230%になります。前期は流動資産7,551億円に対して流動負債が概算で約3,600億円、約210%前後でした。
流動負債はその他の項目を含めた概算なので、ここは幅を持った数字として見ています。
10. 総資産に占める現金等の割合が高く、増えているか → クリア
毎年およそ1,000億円の営業キャッシュフローを稼ぎ、現金等は1,388億円。本業で現金を生み出す体質だと受け止めています。
10項目のチェック結果まとめ
| 項目 | 目安 | 東ソー | 判定 |
|---|---|---|---|
| 配当利回り | 3.75%以上 | 約4.2% | クリア |
| PBR | 0.5〜1.5倍 | 約0.91倍 | クリア |
| 配当政策 | 分かりやすく実績に納得 | 15年無減配 | クリア |
| 配当継続力 | 高い | 約22年分の利益剰余金 | クリア |
| 売上高トレンド | 長期上昇 | 長期は上昇、直近は下降 | 注意 |
| 営業利益率 | 10%以上 | 9.3%(好況時15%超) | 注意 |
| EPS・BPS | 長期上昇 | BPSは上昇、EPSは景気連動 | 注意 |
| 自己資本比率 | 50%以上 | 62.3% | クリア |
| 流動比率 | 200%以上 | 概算で約210〜230% | 注意(概算) |
| 現金の割合 | 高く増加傾向 | 営業CF毎年約1,000億円 | クリア |
クリアが6つ、注意が4つ。注意の4つは景気に左右される会社の特性による一時的な低下だと、私は受け止めています。
買い時かどうかを確かめる3つの問い
体力を確認したあと、私は最後に3つのことを自分に聞きます。
問い1:今は「連れ安」か?
2026年2月の中東ショックで日経平均は約14%下がりました。東ソーは原油やナフサの高騰という形で影響を受けています。
ここで私が考えるのは、その出来事が自分の見ている会社の業績に本当に関係があるのかどうかです。東ソーの場合は原料コストの上昇という実際の影響がありますが、本業が壊れたわけではないので、一時的なコスト増に対する反応が大きく出ている面もあると見ています。
問い2:配当利回りが普段より高い水準か?
東ソーの過去10年の配当利回りはおおむね2〜5%の範囲で動いてきました。今の約4.2%は、その中では高いほうの水準になります。
問い3:業績に致命的なダメージはないか?
2026年の純利益は48%減と大きな数字ですが、赤字に転落したわけではありません。自己資本比率62%、利益剰余金6,826億円、毎年約1,000億円の営業キャッシュフロー。私はこれを一時的な業績の悪化と受け止めていて、事業の仕組みが崩れたとは見ていません。
それでも私が守っている3つのこと
ここまで確認しても、私の見立てが外れることはあります。だから次の3つを自分のルールにしています。
1つ目、1社に集中しない。30社以上に分けておけば、1社が駄目になっても資産全体への影響は小さくなります。私が東ソーをポートフォリオの3%までに抑えているのは、この考え方からです。
2つ目、一度に全部買わない。私は毎月少しずつ、1株ずつ買い増していきます。買う時期を分ければ、買値も分かれます。
3つ目、注意が付いた項目は後でもう一度見る。営業利益率が10%に戻るか、EPSが上昇トレンドに戻るか。2027年以降の決算で、そこを確かめようと思っています。
私が持っている日本の会社は約75社です。これは私の保有状況の紹介で、同じようにしてくださいという話ではありません。
まとめ
- 「下がったところで投資する」の前提は、下がった理由が会社の中身にあるのか、まわりのムードなのかを見分けることだと思っています。
- 安さはPER・PBR・配当利回りの3つで確かめます。1つだけで判断すると見誤ります。
- そのあと、会社の体力を10項目で確かめます。
- 東ソーは、私が見たかぎりクリアが6つ、注意が4つでした。注意の4つは景気に左右される会社の特性によるものだと受け止めています。
- それでも、1社に集中しない、一度に買わない、注意の項目は後で見直す、の3つは守っています。
- 数字は2026年10月時点で私が確認したもので、変わります。
知ったうえで投資する、納得したうえで持ち続ける。私はそうしています。出典を確認できない発言は引用していません。
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