インターネットの裏の世界 – ダークウェブの真実とその実態

私たちが日常的に利用しているインターネットの世界。検索エンジンで情報を探し、SNSで交流し、オンラインショッピングを楽しむ。しかし、このような一般的なウェブサイトは、実はインターネット全体のごく一部に過ぎないことをご存知でしょうか?

今回は、普段目にすることのない「インターネットの裏側」について解説していきます。

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インターネットの階層構造

インターネットの世界は、実は氷山のような階層構造になっています。

  1. サーフェイスウェブ (Surface Web) – 私たちが普段利用している、Googleなどの検索エンジンで検索できるウェブサイト。YouTubeやSNS、通販サイトなどがこれに該当します。
  2. ディープウェブ (Deep Web) – パスワードなどの認証が必要なサイト。企業のデータベースや個人のメールアドレスなど、限られた人だけがアクセスできる世界です。
  3. ダークウェブ (Dark Web) – 特殊な方法でしかアクセスできない、いわゆる「裏社会」のインターネット空間。

驚くべきことに、私たちが普段目にする「サーフェイスウェブ」は、インターネット全体のわずか4%程度だと言われています。残りの大部分はディープウェブとダークウェブが占めているのです。

ダークウェブへのアクセス方法

ダークウェブにアクセスするためには、特殊な条件を満たす必要があります。それは「完全に自分の通信の痕跡を消した状態」でなければならないということ。

具体的には「Tor(トーア)」と呼ばれる特殊なブラウザを使用することで、ダークウェブへのアクセスが可能になります。このブラウザの最大の特徴は、目的のサイトにアクセスするまでに海外のサーバーを複数回経由するという点です。

これにより、通信の追跡が極めて困難になります。例えば、警察が通信を追跡しようとしても、海外のサーバーを経由した場合、その国に捜査協力を依頼しなければなりません。複数の国を経由していれば、ほぼ不可能な作業となるのです。

一般的には、海外サーバーを3箇所以上経由すれば、通信の匿名性はほぼ担保されると言われています。

ダークウェブの実態

ダークウェブは基本的に掲示板形式となっており、本来は自由な情報交換の場として作られました。しかし、その匿名性の高さから、違法な取引の場としても利用されているのも事実です。

ダークウェブで取引されているものには以下のようなものがあります:

  • ネットフリックスやUber Eatsなどのアカウント情報
  • 偽造パスポート
  • 通帳やハンコなどの現物
  • オリジナルのコンピューターウイルス
  • クレジットカード番号
  • 大量の個人情報
  • 輸入禁止の希少動物
  • 偽装結婚のための戸籍変更
  • 薬物や拳銃
  • その他、さらに悪質な取引

これらの取引には主に仮想通貨が使用され、支払いにも追跡が困難な方法が取られています。

シルクロードの事例

かつて世界最大のダークウェブマーケットプレイスだった「シルクロード」は、FBIによる創業者の逮捕によって閉鎖されました。わずか2年間で約120万回の違法取引が行われたとされ、「闇のアマゾン」とも呼ばれていました。

創業者は取引手数料だけで約80億円を稼いだとされていますが、最終的に逮捕されています。

興味深いことに、シルクロードの摘発後、ダークウェブでの違法取引は減少するどころか、むしろ加速する結果となりました。これは裁判の過程で、Torの匿名性自体は破られなかったことが明らかになり、潜入捜査さえ避ければ安全だという誤った認識が広まったためです。

取り締まりの現状

現在、ダークウェブの違法取引に対しては世界各国が協力して取り締まりを強化しています。2021年には欧州警察機構ユーロポールが主導する一斉摘発で179人が検挙されました。

日本でも、コンピューターウイルスの製造販売や、ダークウェブで入手したクレジットカード情報を悪用した詐欺など、様々な事例で逮捕者が出ています。

ダークウェブの誤解

ここまでダークウェブの闇の部分を中心に紹介してきましたが、実はダークウェブのすべてが違法行為のために存在しているわけではありません。実際、違法な活動はダークウェブ全体の約1割程度だと言われています。

残りの9割は何のために使われているのでしょうか?

  • 情報統制の厳しい国(ロシアや中国など)において、外部と安全に連絡を取るため
  • 戦争地域からの情報収集
  • 内部告発者の保護
  • 言論の自由が制限されている地域での情報交換

つまり、ダークウェブは「声を発したくても発せられない人の救済の場」でもあるのです。匿名性が高いという特性上、犯罪が起こりやすい環境ではありますが、それがメインではないことを理解する必要があります。

まとめ

私たちが普段利用しているインターネットの世界の裏側には、その何倍もの情報が眠っています。日常生活においてダークウェブに関わる機会はほとんどないかもしれませんが、このような知識を持っておくことで、メディアで時折見かけるダークウェブ関連のニュースをより深く理解することができるでしょう。

もちろん、違法行為に手を染めるべきではありませんが、インターネットの構造や情報の流れについて知ることは、デジタル社会を生きる私たちにとって無駄な知識ではないはずです。

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