かつてJALの社内では、クレームが多く対応が難しい乗客を「UUU」というコードで表していました。
この「UUU」は、「ウルトラ うるさい うざい客」 や「うるさい うるさい うるさい客」とか「ウルトラスーパーうるさい客」と略とされていました。
客室乗務員(CA)やグランドスタッフが対応する際に注意が必要な乗客を暗号化することで、フライト時の安全や業務効率を図るための内部メモのようなもので、紙に印刷された座席番号でわかるようになっていました。
このようなことはANAでも同じような対応があったと聞いています。
「怒りっぽいけど悪気はない人」や「不安で声を荒げてしまう人」など、誤解から生まれるすれ違いって多くて、それを理解できないCAやグランドスタッフがいると、事態が大げさになりがちです。乗客の話を真剣に聞いて、相手の不満がどこにあるか(スカイライナーで嫌なことがあった、地上係員が間違った案内をしたなど)怒りが頂点に達するまでの経緯を理解し、それに応える努力をすることで、状況は変化するので、その努力を惜しまずやっていくのがAIではなく人間にできる対応だと思っています。
航空業界には「要注意乗客」の管理はある
JALに限らず、どの航空会社にも「迷惑行為をする乗客」への対応ルールはあります。
これは航空法や国際ルールにもとづいたもので
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迷惑行為(Unruly Passenger)の報告と記録
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搭乗拒否リスト(No Fly List)への登録
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警告書・命令書の発行
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結束バンドでの拘束、緊急着陸、警察への引き渡し
こういった対応は、大手航空会社では実際に行われています。
暴力、泥酔、セクハラなどは、飲酒を伴うサービスを行う国際線の機内で起こる可能性は高いです。
例えば、あるUUUのお客様は…
- 「機内食は和食じゃないといやだ!」と言い、何も食べなかったり←そんな人は、覚醒剤や大麻を飲み込んでいる旅客と勘違いされて税関に報告された人もいます。
- 「隣の席の人が臭い」とCAを呼びつけ、おしぼりコロンを振りかけさせようとしたり、アルコールスプレーで隣の人の足元を除菌する旅客
- 「座席が狭い」と隣の席が空いてる座席に黙って移動したり、(飛行機は重量のバランスが大事なので範囲外だと不可能なことがあります)機内が暗くなってから、こっそりエコノミーからビジネスクラスに行って、ビジネスクラスの空席に座ってるなんてこともあるのでたまにヘッドカウントしています。
- 「責任者を出せ!」と騒ぐ人もいて、女性のチーフがいくと、「女じゃ話にならん、男を読んでこい、社長を呼べ」で、社長がいないなら操縦しているキャプテンを呼べって言ってクレームする人など
こういったお客様に対応するため、事前に「UUU」と登録されている場合は、乗務員同士で情報を共有し、スムーズな対応ができるよう準備していました。
客室乗務員の間では、地上職員に手渡された紙にUUUを見つけると「今日のフライトではお座席53Cに気をつけましょう」みたいに、そこで食事のチョイスができるよう配慮したり、気にかけるようにしていました。
長距離便だと、クレームを言い続ける人がいると逃げ場がないので、つらいのですが、そのかわり不満を挽回できるチャンスも多いので、最後はJALの大ファンになってくれる人も多いのです。つまりクレームをする人の心境とは、それだけJALに期待しているっていうことなのではないでしょうか。
現在の対応
現在では、社内用語として「UUU」は使われなくなりましたが、迷惑行為をする乗客に対してはより厳格な対応が取られるようになり、「迷惑行為(Unruly Passenger)」として明確な対策がされています。特に、近年は航空機の安全を脅かす行為が国際的にも問題視されており、JALでも対応が強化されています。
JALの公式HP(JAL | お客様対応ポリシー)には、以下のような迷惑行為が記載されています。
JALが定める「迷惑行為」の具体例
- 大声で怒鳴る、威圧的な態度をとる
- 正当な理由なくCAや地上スタッフを繰り返し呼びつける
- 飲酒して暴れる、酔って暴言を吐く
- 他のお客様や乗務員に対する暴力やセクハラ行為
- 機内の規則(シートベルト着用、電子機器の使用ルールなど)に従わない
- 客室乗務員の指示に従わない
「警告書」や「命令書」
迷惑行為をする乗客に対し、「警告書」や「命令書」を発行するケースが増えています。
これらのことは私たちCAを守るためのものなのですが、常に全部記憶しておかなきゃいけないのでポンコツCAの私にとっては大変でした。
警告書(Warning Letter)
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- 迷惑行為をした乗客に対し、正式に警告を行う書面
- 例えば、他の乗客に迷惑をかけたり、乗務員に執拗に絡んだ場合、機内で警告書が渡されることがある
- これを受け取ると、次回以降の搭乗を制限される可能性がある
命令書(Order to Cease and Desist)
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- さらに悪質な場合、機長の判断で発行される
- 例えば、機内で暴れたり、指示に従わない場合、「この命令に従わなければ強制措置をとる」と明示される
- 最悪の場合、目的地到着後に警察に引き渡されることもある
命令書は「キャプテン(機長)の許可」が必要で
- 迷惑行為の乗客を緊急着陸して降ろす
- 乗客の拘束を指示する(CAが専用の結束バンドで拘束するケースもある)
- 搭乗禁止リスト(No Fly List) に登録する(以後JAL便に搭乗できなくなる可能性がある)
という措置が取られます。
実際にあった「迷惑行為」
▶ 機内で泥酔し、CAに絡んだ乗客
あるビジネスクラスの乗客が、離陸前にラウンジで飲みすぎ、機内でも大量に飲酒。泥酔状態でCAに「もっと酒を持ってこい」と要求し、女性CAに絡み続け、そのCAの両頬を往復ビンタしたんです。このこの便は東南アジアとはいえ、乗務員は日帰りだったので、その行きの便で起き➡ 警告書が発行され、到着後に警察へ引き渡し。以後、JAL便への搭乗禁止措置が検討されました。可愛そうなのは、殴られたCAは、帰り便もDUTYとして乗務して新しい旅客を乗せて成田まで帰ってきたんです。
▶ 客室乗務員に暴言を吐き続けた乗客
「俺はJALの上級会員だぞ!」「このサービスは最低だ!」とCAを執拗に呼びつけ、食事の内容や対応に文句を言い続けた。さらに、「責任者を出せ!」と機長との面会を要求。
➡ 命令書が発行され、最終警告後も続けたため、次回以降の搭乗を制限。
実際にJAL便への搭乗を禁止されたケース
機内で暴力を振るった男性(日本人・ビジネスクラス)
事例:国際線(成田発ロサンゼルス行き)
- ビジネスクラスに搭乗していた男性客が、出発前からCA(客室乗務員)に対して横柄な態度を取る
- 離陸後、アルコールを大量に摂取し、他の乗客やCAに暴言を吐き始める
- さらに、サービスが気に入らないと激昂し、CAの腕を掴んで強く引っ張る暴行行為をした
- 機内では、安全確保のために他の乗務員が介入し、最終的に機長判断で拘束(結束バンド使用)
- ロサンゼルス到着後、現地警察に引き渡され、JALはこの乗客を以降の全便で搭乗禁止処分に
➡ 結末:JALの「搭乗禁止リスト」に登録。以後、JAL便に搭乗不可。
➡ 機内での暴力行為は航空法違反となり、現地で起訴され罰金刑が科された。
迷惑行為を繰り返した某有名人(日本人・ファーストクラス)
事例:国際線(羽田発ニューヨーク行き)
- 過去に何度もJALのフライトで問題行動を起こしていた
(CAへのパワハラ、横柄な態度、他の乗客とのトラブルなど) - あるフライトでは、「食事がまずい」と言ってCAに皿を投げつける
- 着陸前にシートベルト着用の指示を無視し、CAに強く反抗
- JAL社内でも問題視されていたため、これを機に正式に「搭乗禁止」処分が決定
➡ 結末:JALの「No Fly List」に登録。JAL国際線・国内線すべての便に搭乗禁止。
➡ 他の航空会社でも警戒リストに載り、一部の便で搭乗拒否される事態に。
※このケースは公にはなっていませんが、一部関係者の間では有名な話。
国内線で乗務員にセクハラをした会社経営者
事例:国内線(羽田→福岡)
- ある男性乗客(某企業の経営者)が、国内線のファーストクラスに搭乗
- フライト中、担当の女性CAに対し、体を触る、プライベートな質問を執拗にするなどの迷惑行為
- CAが丁重に対応するも、さらに「連絡先を教えろ」などとしつこく迫る
- これに対し、別のCAが交代し対応するも、同様の行為を続ける
- 着陸後、被害を受けたCAが上司に報告し、JALは内部調査を実施
- 会社側の判断で、この乗客を「搭乗禁止リスト」に登録
➡ 結末:国内線・国際線ともにJAL便への搭乗禁止処分。
➡ セクハラ行為が認定され、会社名がJALの内部で共有された。
「No Fly List」はどのように適用されるのか?
JALでは、搭乗禁止処分を下す場合、以下のような流れで判断されます。
- 現場対応(警告書・命令書の発行)
- 迷惑行為をした場合、機内で**「警告書」や「命令書」** が発行される
- これを無視し、さらに危険行為を続けると、拘束・警察通報の措置が取られる
- 社内調査と判断
- 事件後、JALの「リスク管理部門」や「コンプライアンス部門」が事実確認
- 過去の迷惑行為履歴も確認し、搭乗禁止の必要性を判断
- 正式な「搭乗禁止リスト」への登録
- JALの社内システムに該当人物の情報が登録される
- 以後、航空券を予約しようとしても、自動的にブロックされる
- 旅行代理店経由でも搭乗不可
- 他社との情報共有(場合によっては)
- 特に悪質なケースでは、他の航空会社や国際的な航空保安機関(IATAなど)と情報を共有
- その結果、他の航空会社でも搭乗拒否 されるケースもある
搭乗禁止リストに登録
- JALの全便に乗れなくなる(国内線・国際線問わず)
- 予約システムで自動ブロックされる
- 他社の航空会社にも情報が共有されることがある
- 海外の航空保安機関に登録され、外国の航空会社でも搭乗拒否される可能性あり
実際、アメリカの「No Fly List」に載った人物は、世界中の多くの航空会社で搭乗拒否されることがあります。JAL単独の措置だったとしても、他の航空会社にも影響を及ぼすことがあるため、悪質な迷惑行為はかなりのリスクがあると言えます。
まとめ
- JALでは、機内暴力、セクハラ、執拗な迷惑行為をした乗客 を「搭乗禁止リスト」に登録することがある
- 実際に、機内で暴れた男性客、有名人の迷惑行為、会社経営者のセクハラ などで搭乗禁止になったケースがある
- 一度リストに登録されると、JALの全便に搭乗できなくなり、他の航空会社でも警戒されることがある
飛行機は「空の上の密室」です、安全を守るためにこうした厳しい措置が必要なんでCAや機長の判断で対応し、最悪の場合は警察沙汰になってしまうこともあります。
一度「搭乗拒否(No Fly List)」に登録された乗客が、それを撤回してもらうことは、可能ではあるが非常に難しい
一度登録されると、予約システムで自動ブロックされ、航空券の購入ができなくなります。
登録された後、それは「永久」?
▶原則として「搭乗拒否」は無期限または長期
- 多くのケースでは「明確な期限」は設定されていません。
- 社内での再評価がある場合もありますが、それは例外的です。
登録解除(搭乗拒否の撤回)は可能?
可能性はゼロではありませんが、非常にハードルが高いです。
- 本人または代理人(弁護士など)からの正式な申し立て →「過去の行動に反省している」「治療や再教育を受けた」などの申告を伴う。
- JAL社内の「コンプライアンス・リスク管理部門」での審査 →社内調査記録、乗務員からの報告書、当時の対応記録などがすべて再検証される。
- 過去の搭乗履歴や社内評価、今後のリスクの有無を総合的に判断 →「今後のリスクがないと合理的に判断できる」場合のみ、例外的に解除されることがある。
注意点
- JALが独自判断で搭乗拒否した場合であっても、他社航空会社に情報共有されているケースがあります。→ その場合、JALだけ解除されても他社では警戒対象になり続けることも。
- また、国際線での暴力行為などで、IATA(国際航空運送協会)や航空保安機関に情報提供されている場合は、さらに影響が大きくなります(例:米国の「No Fly List」に登録された場合、複数国で搭乗不可になることも)。
昔「UUU」のような非公式な分類は?
- 昔あったとされる「UUU(ウルトラうるさいうざい客)」は、非公式な社内の注意喚起的なもので、正式な「搭乗拒否」ではないので大丈夫です。
経緯を書き換えることはできません
理由①:「記録の改ざん」は航空安全上、原則として行わない
JALをはじめとした航空会社では、機内や空港での迷惑行為(Unruly Passenger)に関する記録は“公式文書”扱いになります。
- 機長の判断で発行される「命令書(Order to Cease and Desist)」
- 客室乗務員・地上スタッフが記録する報告書
- リスク管理部門が作成する内部報告書
これらの記録は、航空法、会社の危機管理規定、国際基準(IATAなど)に基づく正式文書であり、後から“事実を書き換える”ことはありません。
特に搭乗拒否リスト(No Fly List)に関わる事案は、安全運航の最優先事項に関わるため、「過去の行為は変えられない」というのが基本的な姿勢です。
理由②:「経緯」ではなく「評価の見直し」が行われる
ただし、過去に迷惑行為をしてしまった乗客が、一定の条件を満たしたうえで“将来的な搭乗再開”を申し出ることは可能です。
この場合、
書き換えではなく「評価・対応方針の見直し」として扱われます。
- 本人による謝罪
- 再発防止のための具体的な改善行動の証明(治療歴・誓約書など)
- 再評価の申請と社内審査
JALではこのような「申立て」はリスク管理部門(またはCS部門)などで受け付けるケースがありますが、審査は厳格で、再び搭乗が許可されるのはごく一部のケースに限られます。
一度起こした事実が「なかったことになる」わけではありません。
記録は残りますが、それに対する**会社の対応スタンスが変わる(再評価される)という形です。
「要注意人物」や「UUU」などの非公式記録の場合
過去に使われていたとされる「UUU」のような内部の注意コードについては、正式な記録文書ではなく、現場ベースの共有事項であることが多かったです。
時間の経過とともに自然に薄れていきます。
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