ミルボン
株式会社ミルボン(証券コード:4919)は、1960年設立の日本を代表するプロフェッショナルヘアケア・化粧品メーカーです。美容室専売品を主軸とし、「オージュア」「エルジューダ」「ヴィラロドラ」などの高付加価値ブランドで市場をリードしています。
出典;四季報
出典:バフェットコード
2024年12月期 業績サマリー
主要業績指標
項目 | 2024年12月期実績 | 2023年12月期実績 | 増減率 |
---|---|---|---|
売上高 | 51,316百万円 | 47,762百万円 | +7.4% |
営業利益 | 6,839百万円 | 5,525百万円 | +23.8% |
経常利益 | 6,968百万円 | 5,586百万円 | +24.7% |
純利益 | 5,017百万円 | 4,001百万円 | +25.4% |
ROE | 10.6% | 8.9% | +1.7pt |
自己資本比率 | 82.9% | 86.0% | -3.1pt |
営業利益率 | 13.3% | 11.6% | +1.7pt |
2025年12月期業績予想
項目 | 2025年予想 | 2024年実績比 |
---|---|---|
売上高 | 54,250百万円 | +5.7% |
営業利益 | 7,000百万円 | +2.3% |
経常利益 | 7,000百万円 | +0.5% |
純利益 | 5,200百万円 | +3.6% |
出典:バフェットコード
高配当株の10条件
小人株の10条件
「小人株」投資法は、長期にわたり安定・高配当が期待でき、元本割れリスクが低い銘柄を選定する投資手法です。以下の10条件に基づいて分析します
出典:小人株の10条件
こびと株の10条件 - こびと株.com
最終的には総合的な判断となりますが、基本条件は次の通りです。 目次1 こびと株の条件1.1 税引前の配当利回りが3.75%以上1.2 PBRが高水準ではないこと(目安レンジ:0.5倍~1.5倍)1.3 配当政策が分かりや...
配当利回り3.75%以上(税引前)
- 現在の配当利回り:約3.6%(株価2,400円換算)
- 判定:△(条件をわずかに下回る)
年間配当金:88円
- 中間配当:40円
- 期末配当:48円
配当利回りが3.75%をわずかに下回っているものの、安定した配当実績と増配傾向を評価。
PBRが0.5~1.5倍の適正水準
- 現在のPBR:約1.6倍(2024年12月期1株当たり純資産1,499円)
- 判定:△(やや高水準)
PBRがやや高いものの、ブランド力と成長性を考慮すると許容範囲内。
配当政策が明確で実績が納得できる
- 配当性向:約57%(2024年12月期)
- 配当方針:配当性向50%を目安
- 判定:◎
明確な配当方針と安定した配当実績を評価。
配当継続力が高い
- 利益剰余金ベース:充分な配当余力
- 自己資本比率82.9%の強固な財務基盤
- 判定:◎
売上高が長期的に上昇トレンド
- 過去10年売上成長:年平均約5-7%成長
- 2024年:+7.4%増収
- 判定:◎
出典:バフェットコード
売上高営業利益率10%以上
- 2024年実績:13.3%
- 2023年実績:11.6%
- 判定:◎(基準を大幅クリア)
1株当たり純利益・純資産が上昇トレンド
- EPS:154.12円(前年122.99円)
- BPS:1,499.20円(前年1,411.56円)
- 判定:◎
自己資本比率50%以上
- 2024年実績:82.9%
- 判定:◎(基準を大幅上回る)
流動比率200%以上
- 豊富な現金及び現金同等物:137億78百万円
- 流動比率:十分な水準
- 判定:◎
総資産に占める現金等の割合が高い
- 現金及び現金同等物:137億円
- 総資産588億円に対する現金比率:約23%
- 判定:◎
小人株10条件 総合評価:8/10条件クリア(優秀)
高配当株としての魅力とメリット・デメリット
メリット
1. 安定した配当実績
- 連続増配傾向:過去10年で着実な増配
- 配当性向57%:適正な水準で持続可能
- 強固な財務基盤:自己資本比率82.9%
2. 収益性の高さ
- 営業利益率13.3%:業界平均を大幅上回る
- ROE 10.6%:優秀な資本効率
- ブランド力:プレミアム価格設定が可能
3. 成長性
- 海外展開:韓国・米国・中国で事業拡大
- プレミアムブランド戦略:高付加価値製品で差別化
- デジタル化:milbon:iD、スマートサロンなど革新的取り組み
デメリット・リスク
1. 株価バリュエーション
- PBR 1.6倍
- 配当利回り3.6%:高配当株としてはやや物足りない
2. 事業リスク
- 美容室依存:美容業界の景気変動に連動
- 競合激化:大手化粧品メーカーとの競争
- 原材料コスト上昇:インフレの影響
キャピタルゲイン狙いの成長株としての評価
成長投資としての魅力
1. 中期事業構想(2022-2026)
- 売上高1,000億円を長期目標に設定
- ROE 14%以上の達成を目指す
- 海外売上比率向上:現在約25% → さらなる拡大
2. 成長ドライバー
国内事業
- プレミアムブランド強化:オージュア、ヴィラロドラの拡大
- デジタル化推進:スマートサロン、milbon:iD
- ソムリエ制度:美容師の専門性向上支援
海外事業
- 韓国:年率+13%の高成長継続
- 米国:ブランディング強化と人員増強
- 中国:市場回復に向けた戦略転換
株価パフォーマンス
近年の株価動向
- 2020年頃:約2,000円
- 2021-2022年ピーク:約7,000円
- 2024年現在:約2,400円(大幅調整後)
株価下落要因(2022年以降)
- 中国市場の低迷:コロナ後の消費行動変化
- 原材料コスト上昇:インフレの影響
- 成長期待の修正:利益目標の下方修正
- 金利上昇環境:成長株全般への逆風
成長株投資としての判定:★★★☆☆(3/5点)
理由:
- 長期成長ストーリーは健在
- 株価調整により割安感が出現
- ただし、短期的な成長加速は限定的
中国リスクと地政学的リスクの影響
中国事業の現状と課題
業績への影響
- 中国売上:約23億円(全体の約4.5%)
- 2024年業績:現地通貨ベースで△3.5%減収
- 消費マインド低下:美容室来店頻度減少
対策と戦略転換
- 美容室経営支援:変化する消費者行動への対応支援
- 高付加価値戦略:プレミアムブランドへの注力
- リスク分散:韓国・米国への投資強化
地政学的リスクの評価
リスク要因
- 米中貿易摩擦:サプライチェーンへの影響
- 為替変動:円安メリットと調達コスト上昇
- 原材料調達:特定地域への依存リスク
耐性評価:★★★★☆(4/5点)
- 中国依存度が比較的低い(売上の5%未満)
- 多様な地域展開でリスク分散
- 強固な財務基盤で変動に耐性
競合他社との比較分析
主要競合企業
企業名 | 売上高 | 営業利益率 | ROE | 自己資本比率 | 配当利回り |
---|---|---|---|---|---|
ミルボン | 513億円 | 13.3% | 10.6% | 82.9% | 3.6% |
資生堂 | 9,768億円 | 3.2% | 2.1% | 65.8% | 2.8% |
コーセー | 3,498億円 | 11.9% | 9.8% | 77.2% | 1.9% |
花王 | 1兆5,153億円 | 9.2% | 8.1% | 58.7% | 2.9% |
競合優位性
- 収益性:営業利益率13.3%は業界トップクラス
- 財務安定性:自己資本比率82.9%は業界最高水準
- 専門性:美容室専売品に特化した独自ポジション
今後の予想と投資戦略
2025年業績予想
- 売上高:542億50百万円(+5.7%)
- 営業利益:70億円(+2.3%)
- 利益成長鈍化:成熟期への移行を示唆
中長期投資シナリオ
ベースシナリオ(確率60%)
- 安定成長継続:年率3-5%
- 配当維持・微増:年間88-90円
- 株価レンジ:2,200-3,000円
強気シナリオ(確率25%)
- 海外事業加速:年率7-10%成長
- 増配継続:年間95-100円
- 株価ターゲット:3,500-4,000円
弱気シナリオ(確率15%)
- 成長鈍化・減配リスク
- 株価下値:1,800-2,000円
トランプ関税とインフレ環境への影響分析
トランプ関税の影響
直接的影響:限定的
- 米国売上:約20億円(全体の4%)
- 輸出よりも現地生産・販売が主体
- 関税の直接的インパクトは軽微
間接的影響
- 原材料コスト上昇:グローバルサプライチェーンへの影響
- 為替変動:ドル円相場の不安定化
- 消費者マインド:景気不透明感による消費抑制
インフレ環境での事業戦略
コスト上昇への対応
- 価格転嫁:プレミアムブランドの価格優位性活用
- 効率化:製造プロセスの最適化
- 調達多様化:サプライチェーンのリスク分散
インフレ耐性評価:★★★☆☆(3/5点)
- ブランド力による価格転嫁力
- ただし、美容業界の価格感応度が課題
株主として提案するなら
戦略的提案
1. 株主還元の強化
- 累進配当政策の明文化:安定増配のコミット
- 自己株式取得:余剰キャッシュの有効活用
- 総還元性向50%以上:長期目標として設定
2. 成長戦略の加速
- M&A戦略:海外ブランド買収による事業拡大
- デジタル投資拡大:DX推進による差別化
- サステナビリティ:ESG経営の強化
3. ガバナンス強化
- 独立社外取締役比率向上:1/3以上への引き上げ
- 中長期インセンティブ制度:業績連動報酬の拡充
- IR活動充実:投資家との対話機会増加
4. リスク管理体制
- 地政学リスク対応:事業ポートフォリオの分散
- サプライチェーン強化:調達先の多様化推進
- 為替ヘッジ政策:リスク許容度の明確化
具体的要望事項
-
配当政策の見直し
- 配当性向をあげよう
- 安定配当の水準設定
-
成長投資の透明性向上
- 投資回収期間の明示
- ROIベースでの投資評価公開
-
株主総会の充実
- 経営戦略説明の詳細化
- 質疑応答時間の拡充
投資判断
総合投資判定
高配当株として:★★★☆☆(3.5/5点)
- 配当利回りはやや物足りないが、安定性は高評価
- 財務基盤の強さと継続性を評価
- 小人株の8/10条件をクリアの優秀な成績
成長株として:★★★☆☆(3/5点)
- 長期成長ストーリーは魅力的
- 株価調整により投資妙味が向上
- ただし、短期的な成長加速は限定的
投資する?
長期投資家(5年以上):★★★★☆(4/5点)
- 安定した事業基盤と成長性のバランス
- 配当再投資による複利効果を期待
- 株価調整局面での投資タイミングとして魅力
配当投資家:★★★☆☆(3.5/5点)
- 配当利回りは高配当株としては物足りない
- ただし、安定性と継続性は高く評価
- 配当成長株としての位置づけが適切
短期投資家:★★☆☆☆(2/5点)
- 成熟企業のため大きな株価変動は期待薄
- 四半期業績による短期的な値動きは限定的
今後のキーポイント
- 海外事業の成長加速:特に米国・韓国での展開
- デジタル化の成果:スマートサロン、milbon:iDの浸透
- 中国市場の回復:地政学リスクの軽減
- 株主還元政策:増配・自己株式取得の実施
最終推奨
ミルボンは、安定した事業基盤と適度な成長性を併せ持つ「配当成長株」として位置づけられます。小人株の10条件のうち8条件をクリアする優秀な財務体質を持ち、特に長期投資家にとって魅力的な投資対象です。
現在の株価水準(約2,400円)は、過去のピークからの調整により投資妙味が向上しており、配当利回り3.6%+年率5-7%の成長による総リターン8-10%を期待できる水準です。
ただし、高配当株として見ると配当利回りがやや物足りなく、成長株として見ると爆発的な成長は期待できません。「安定成長×安定配当」を求める保守的な投資家に最適な銘柄と言えるでしょう。
本分析は2025年7月時点の情報に基づくものであり、投資判断は自己責任でお願いいたします。市場環境や企業業績の変化により、評価が変わる可能性があります。
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