聞け、鳥取社長「JAL(日本航空)の人員不足解消と待遇改善策」財務状況から見えてくる社長ができることとは。

JALは現在、パイロットの飲酒問題、キャビンアテンダント(CA)の早期離職、地上職員の人員不足といった課題を抱えています。一方で、財務的には安定しており、内部留保を活用した人材確保・待遇改善が可能な状況です。鳥取三津子社長のリーダーシップのもと、JALが取り組むべき具体策を提案します。

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JALの財務状況

財務データ(2024/03決算)

  • 内部留保(利益剰余金):3,068億円(前年2,256億円から増加)
  • 営業キャッシュフロー(CF):363億円(前年292億円から増加)
  • ROE(自己資本利益率):10.5%(前年6.28%から増加)
  • 自己資本比率:34.3%(前年32.4%から増加)
  • 有利子負債:1,884億円(前年と変わらず)

JALはコロナ禍から回復し、内部留保は約3,068億円まで増加。
財務は安定しており、人件費の増額や人員確保のための投資が可能。

財務健全性

ROE(自己資本利益率)

  • 2024/03: 10.5%(前年6.28%から増加)
  • 2025/03予想: 10.54%

 自己資本比率(安定性)

  • 2024/03: 34.3%(前年32.4%から増加)
  • 航空業界では比較的高水準で財務健全性は確保されている。

 有利子負債(負債の大きさ)

  • 2024/03: 1884億1300万円(前年と変わらず)
  • コロナ禍の影響で2020~2022年に増加したが、財務体質は徐々に改善。

 営業キャッシュフロー(CF)

  • 2024/03: 363億円(前年の292億円から増加)
  • 本業の収益力は回復傾向。

 EPS(1株利益)

  • 2024/03: 218.61円(前年比+177.53%)
  • 利益率が改善しており、株主への還元余力もある。

配当性向

  • 2024/03: 34.3%(安定配当維持)
  • 2025/03予想: 80円/株(+6.67%)

➡ 財務状況は健全で、内部留保を活用して人員確保・待遇改善に投資する余力がある。

パイロットの飲酒問題

パイロットの飲酒問題を個人の問題ではなく組織の問題として扱うことが大事

パイロットの置かれた環境

  1. プレッシャーとストレス
    • 時差、長時間労働、自由な時間の不足。
    • コロナ禍での給与カットと待遇悪化。
    • 部門別採算制度による定時制や燃料費へのプレッシャー
    • 社内の風土改革が必要。

 報酬体系の見直し

  • コロナ後の賃金水準を再考し、基本給の引き上げ。
  • 成果重視から、安定した報酬体系へ移行。

➡ 飲酒問題の根本原因を「ストレス・待遇」にあると考え、働きやすい環境整備が最重要。

罰則の明確化

  • 1回目→停職
  • 2回目→降格
  • 個人の問題ではなく組織の問題として扱う。

休息時間の確保

  • 連続フライト時間の制限強化。
  • 勤務後の最低休息時間を増加(国際基準以上に)。

 CAの早期離職問題

  1. 不規則な勤務体系
    • 深夜・早朝勤務、時差の影響。
  2. ストレスが高い職場環境
    • クレーム対応、過度な接客スキル要求。
  3. キャリアの限界
    • 昇進の機会が少ない。
  4. 結婚・出産との両立が難しい
    • 産休・育休後の復職支援が不足。

解決策

勤務体系の改善 フレキシブルなシフト制の導入

  • 連続勤務日数の制限や廃止
  • 深夜・早朝フライトを減らすためのローテーション制。
  • 機内販売を辞める(ANAを見習う)

休養の増加

  • CAの体力回復を考慮し、フライト後の最低休息時間を増加。
  • 週休3日制の試験導入(他航空会社の動向も参考に)。

 キャリアアップの仕組み作り

「CAから本社勤務」へのキャリアパス拡大

  • 広報、人事、企画などのポジションにCA経験者を登用を積極的に行う。
  • 個人の能力を数字だけではからず、強みを活かす人材配置

 昇格へのルートを明確化

機内販売の売上競争に買った人や、会社に従順な人が昇格するのではなく、組合差別することなく、チーフや管理職になるルートを曖昧にしない。

 ワークライフバランスの支援

産休・育休後の復職支援強化

  • 託児所の設置や在宅業務の活用(研修・教育業務をオンライン化)で人材確保を続ける

 給与体系の見直し

  • 内部留保を活用し、CAの基本給を増額。
  • CAは体力がある若い人だけから、長く働ける環境へ。

➡ 待遇改善とキャリアパスの多様化がCAの定着率向上につながります。

航空業界の人手不足:JALが直面する課題

 具体的な人手不足の状況(2025年現在)

  • パイロット不足:航空需要回復に伴い、2025年までに200~300人のパイロット不足が予測。そこで、JALは現在、地方の大学( 鹿児島大学)とパイロット養成プログラムSKYCAMPを提携しています。ここでは学生が費用を負担するので、JALは自社養成にかかる約2,000万円~3,000万円が浮きます。
  • 昔はアメリカのナパでの実機訓練を行っていた時代は一人当たり1億5000万円かかっていました。飛行訓練を中心だったので飛行時間、燃料費、滞在費などかかっていましたが、今はシミュレーター中心で、羽田のフルフライトシミュレーター(FFS)で模擬飛行をしています。天候に左右されないこともあり、期間は、1.5~2年で1人あたり3,000万円~5,000万円(燃料・旅費不要)で昔かかっていた費用が一人1億5000万円と言われているので7,000万円~1億円(50~70%減)削減できています。
  • CA(キャビンアテンダント)不足:コロナ禍で採用を抑えた影響で、2024年時点で1,000人規模の人員不足。
  • 地上職員不足:空港業務の外注化が進み、経験者が減少。特に地方空港では500人以上の人材が不足。
  • 成田空港では2023年9月末時点で、週152便の追加要請に対し、グランドハンドラー不足により101便しか受け入れられませんでした(出典:Nikkei Asia)

原因

  • パイロット:養成期間が長い(数年)ため、即戦力の確保が難しい。自社養成には費用と期間がかかる
  • CA:低賃金・長時間労働・キャリアの不透明さが離職の主因。都合の良い社員だけが昇格する仕組み
  • 地上職員:外注化により雇用が不安定になり、待遇改善が求められている。

内部留保を活用した人員確保と待遇改善

JALの内部留保3,068億円のうち、150億円を活用すれば多くの施策が可能です

人員確保のための追加採用

予算:約60億円 → 300人の採用

  • パイロット100人(育成含む):1人あたり約年間3,500万円(訓練費含む)×100人=35億円
  • CA150人:1人あたり約年間550万円×100人=約6億
  • 地上職員50人:1人あたり約年間500万円×300人=15億円

効果

  • 人手不足解消により、運航の安定性向上。
  • パイロットの過剰な労働負担軽減 → 飲酒問題対策にも貢献。
  • CAの業務負担軽減 → 離職率の低下。

  給与・待遇改善(内部留保50億円活用)

給与引き上げ(100億円)

  • パイロット基本給+10%(年間1人当たり+200万円)
  • CAの基本給+10%(年間1人当たり+55万円)
  • 地上職員の待遇改善(年間1人当たり+50万円)

効果

  • 待遇改善で離職率低下 → 長期的な人材確保につながる。
  • パイロット・CAのモチベーション向上 → サービス品質向上。
  • 競争力のある給与水準 → ANAなどとの人材争奪戦に勝つ。

パイロットの飲酒問題とメンタルヘルス対策

 メンタルヘルスケア(年間10億円)

  • 休養期間の増加(フライト間隔を調整や休みを増やす)

効果

  • 精神的負担の軽減 → 飲酒リスクの低下
  • 離職防止(特にCA・地上職員のメンタルケアに有効)

 飲酒問題対策

アルコール検査強化

  • 外部監査機関を導入し、自己申告に頼らない体制構築

厳格な処分規定の制定

  • 1回目:停職3カ月
  • 2回目:降格

効果

  • 飲酒の抑止力強化 → 安全運航の確保

 CAの早期離職対策

 ワークライフバランスの改善

週休3日制の試験導入(年間5億円)

  • CAの勤務シフトの柔軟化
  • 連続勤務を廃止

産休・育休後の復職支援(年間3億円)

  • 託児所の設置(空港近隣)

効果

  • 女性の長期雇用促進 → CAの離職率低下
  • 働きやすい環境整備 → 人材確保の競争力向上

 鳥取社長が取るべき具体策まとめ

人員不足対策

  • 60億円で300人増員(パイロット100人、CA150人、地上職50人)
  • 待遇改善で長期的な人材確保

給与引き上げ(60億円)

  • パイロット+10%、CA+10%、地上職+10%

パイロットの飲酒問題対策

  • 休養時間の確保
  • 処分規定

メンタルヘルス・ワークライフバランス改善

  • 週休3日制試験導入(5億円)
  • 産休・育休後の復職支援(3億円)

結論

JALは内部留保150億円を活用することで、人員不足を解消し、待遇改善を実現可能です。
鳥取社長が本気で「人材投資」に取り組めば、JALの長期的な競争力と安全性が向上する。
今こそ、JALは「短期利益重視」から「人材重視の経営」へシフトするべきである。

 

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