ニュースに取り上げられたJALパイロットによる飲酒事例をみてみましょう。
JALでの飲酒トラブルについて
JALでは2017年8月からの統計で、アルコール濃度が基準値オーバーの事案が19件発生し、そのうち12便が遅延しています。この高い再発率は、JALにおける飲酒問題の根深さを示しています。
2018年の飲酒に関する規定が厳しくなってから浮き彫りになりましたが、実はその前から、社内では飲酒の事例が多発していました。
サンフランシスコ飲酒事件
2010年、サンフランシスコで副操縦士が飲酒トラブルをおこし社内規定に違反し「断酒」を条件に乗務継続が許可されていたんですが、彼の問題行動はその後も続いていましたが、大きな会社にはありがちだと思うんですが、みんな傍観者なわけで、それ以上、事を荒げたくないという思いから重要視していませんでした。
石川県金沢市でのJAL乗務員飲酒事件
そして同じ副操縦士による飲酒事件がおきてしまったのです。石川県金沢市に滞在中の2017年7月、JALの機長と副操縦士が飲み会の後、口論となり、駆けつけた警察官を副操縦士が殴り公務執行妨害で逮捕されるという事件が発生したんです。
翌朝、小松空港発東京行きの便が欠航となりました。
この背景にあるのは、もともと、その副操縦士には酒乱癖があって、飲むと暴力を振るうと有名だったので以前から飲酒に関するトラブルが多発していたんです。
つまりJALでは、みんな見てみぬふりをする文化が根付いていて、それは私もそうしていたので同罪なんですが、何も言わないほうが得というか、何か言って目立つより、出る杭は打たれるから、清廉潔白で良い子を演じていた方が楽なわけで、そうするためには見てみぬふりして、知らなかったということがまかり通ってしまうので、根本が解決されないまま放置されていたんです。
この事件で、地方空港では疎かだったアルコール検査機の最新化がなされたんですが、社内には「酒ぐらい良いじゃないか」という風潮が残っていて、「飲まないとやってられない」というか、そもそも時差調整のために、飲まないと寝れない人も多いのが現実なので、乗務員の過重労働や心理的ストレスって半端ないってことが言いたいんです。
ホノルル飲酒疑惑①
で、次は恥ずかしながら客室乗務員の飲酒なんですが、2017年11月にホノルル発成田行き便での機内飲酒疑惑っていうのがあってJL781便で、46歳の女性客室乗務員が乗務中に飲酒していた疑惑が浮上したんです。
調査当時は飲酒を否定していましたが、その後、2019年1月の面談で飲酒を認めるんです。
ホノルル飲酒事件②
2018年12月、JAL客室乗務員の機内飲酒問題が起こるんですが、その人こそ先ほどと同じ乗務員で成田発ホノルル行きJL786便(ボーイング787-9型機)に乗務していた同じ46歳の女性客室乗務員が、機内でシャンパン(約170ml)を飲酒していたことが判明し、アルコール臭を感じた同僚が社内のアルコール検査を実施したところ、社内基準(0.1mg/L)を超える0.15mg/Lのアルコールが検出されました。客室乗務員はその場で業務から外され、飲酒の事実を後に認めました。
シャンパン
彼女はプレミアムエコノミークラス用のシャンパンを、MIDギャレーで持ち出して飲酒していたんです。でもこの便では、乗客にはシャンパンを提供していないなかったので、ゴミ箱に空きビンが発見されたこともあって「指紋鑑定するよ」という問いかけに対し、当時は否定していたんですが、2019年1月の面談で過去の飲酒を認めたんです。
彼女は確信犯だったので、機内での飲酒を繰り返していたことは有名で、常にマークされていたのですが、それにもかかわらず飲酒し続けていたんです。
つまり機内には、隠れて飲酒できるスペースがあるっていうことも要員で、46歳ともなると、後輩たちが、それを見つけてもなかなか言い出せない上下関係が、存在していたから、徹底的にマークされたことで、このことが公になったんですが、それまで繰り返してこれたってことがやはり問題だと思っています。
で、この人のせいで、客室乗務員は、フライトの間にもアルコールチェックが始まり、休憩に入る前や、休憩が終わった後などもアルコール検査をするようになりました。
ロンドン飲酒事件
2018年10月28日、JALのロンドン発羽田行き便の副操縦士の事件はかなり有名になりました。
なぜなら、基準値の9倍を超える血中アルコール濃度で現地当局に逮捕され、英国の裁判所が禁固10か月の実刑判決を言い渡したからです。
この事件はホテルで集合した時から、当該パイロットが、お酒くさく、様子がおかしかったにも関わらず、他のパイロットも客室乗務員も、それには気づかないふりをして、フライトしようとしたことなんです。
警官の話によると副操縦士の目はとろんとしていて、まっすぐ立つのも難しそうな状態だったからです。
JALには沈黙の合意みたいな雰囲気があって、その傍観者であることが明らかになった事件で、副操縦士の飲酒に最初に気付いたのは、クルーバスの運転手だったんです。
お酒臭いパイロットがいることを大きな問題であると感じ、副操縦士のアルコール臭がひどいと、保安担当者に通報したのです。
画像(出典:BBC)のようにボーディングブリッジのところ呼気検査が実施されました。後の血液検査の結果、血中アルコール濃度は100ミリリットルあたり189ミリグラムと判明(パイロットの上限値は20ミリグラム)しました。
日本航空(JAL)は事件後、副操縦士を懲戒解雇し、赤坂社長は20%、専務執行役員は10%の役員報酬を1か月間減額しました。
再発防止策として、新型アルコール感知器の配備と、乗務24時間前以降の飲酒禁止を徹底し、アルコール検査時の地上スタッフ立会いが始まりました。
客室乗務員と整備士に対しても、このころからアルコールチェックが義務化され、ブリーフィング前にヨーグルトを食べたり、味噌汁みたいな発酵食品を食べると 検知器が反応するので、みんなビクビクして空腹のまま出社することが増えて大変でした。
検査の数値が0でないといけないので、少しでも反応したら すぐにトイレでうがいをして再び確認するなど、慌ただしい業務の間で、そのことが重要視されていきました。
問題を起こしたパイロットが懲戒解雇されましたが、パイロットを自社養成する場合、一人あたり1億3000万円かかっているので、その損失は大きく、繰り返される飲酒問題は、JALのブランドイメージと信頼性を著しく損なっています。(客室乗務員一人の訓練費用は300万円〜500万円)
ダラス飲酒事件
2024年4月、アメリカ・ダラスで飲酒トラブルがおきました。
JAL機長(乗務歴21年3カ月、機長経験1年1カ月)は、ダラス・フォートワース発羽田行きJL11便の機長の、乗務2日前に深酒をし、ホテル内で騒ぐなどの不適切な行動を起こした。
この影響で便は欠航となりました。
飲酒は、食事会(1次会)、ホテルラウンジ(2次会)、機長の部屋(3次会)の3回にわたり、全員の飲酒量合計は、ワイン7本相当+330ml缶ビール12~18本。飲まなかった缶ビールは廃棄し、機長の状態というのは、3次会終了後、廊下に出た際に足元がおぼつかず声が大きくなるくらいの状態でした。
あまりの騒音に、ホテルスタッフが注意し、警察官が駆け付ける事態となり、その場で警察官から口頭注意を受けました。
ダラス・フォートワース発羽田行きJL11便は欠航し、乗客はアメリカン航空の便(ダラス発、シカゴ発)で振替便を手配されました。
アルコール規定の遵守規定への抵触はなかったんです。飲酒は出発12時間前(23日午後11時5分)より21時間前に終了していました。乗務前の2回のアルコール検査ではアルコールは検出されなかったのですが、本人ん0お心身の状態を考慮し、乗務は適切でないと判断されたのです。
機長の供述は「思ったより酔いが早く回った」と話し、飲酒量は一人だけ突出していたわけではないと説明しました。
JALは26日にコメントを発表し、「飲酒に起因する不適切な行動を重大に受け止め、再発防止を徹底し信頼回復に努める」と述べ、当該ホテルに謝罪しました。
2018年12月21日と2019年10月8日に事業改善命令を受けており、飲酒問題で同じ行政処分を1年以内に再び受けた事例は初となっています。
メルボルン飲酒事件
2024年12月1日のオーストラリアのメルボルン発成田行きの774便で、パイロット3人のうち機長(59)と副機長(56)が前日に過剰飲酒し、副機長は酒気帯び状態で出勤してしまいました。
アルコールが検知されなくなるまで空港で待機したことから出発が3時間以上遅れたというです。
滞在先の飲食店で注文した酒はスパークリングワイン1杯ずつとワイン3本で、JALの規程(乗務12時間前の体内アルコール残存量が4ドリンク以下に自己制限)を上回っていました。
機長は腹痛と偽って出勤を遅らせ、副機長はパイロットがそろって受けるはずの正式な検査を行わず、アルコールがゼロになるまで1人で自主検査を繰り返していました。
しかも、2人は口裏を合わせ、成田到着直後は「飲酒は赤ワイン1本」と申告し、過剰飲酒の隠蔽を図っていたのです。
繰り返しヒアリングする中で3日、ようやく2人は事実を告白しました。
便は3時間以上遅延し、結果として、国土交通省がJALに業務改善勧告を発出しました。
まとめ
日本でパイロットの飲酒に対する規制が厳しくなったのは、2018年以降で、それまでのフライトでパイロットが飲酒していたとしても、規制が厳しくなかったので、表沙汰になりませんでした。
おそらく規定の時間を超えて飲酒していたり、最新のアルコール検知器を使っていたら検知にひっかかっていた乗務員がいたことは明らかで、国内での規制が厳しくなってから立て続けに事件が起こっています。
さらに調査の結果、2017年8月から2018年10月までの間に、パイロットからのアルコール検知事例が19件あったことも明らかになりました。
12月20日の成田発サンフランシスコ行きの便でも副操縦士が乗務日を勘違いして出勤が遅れ、自主検査だけでアルコール検査を済ませた事案が判明しています。
現場を知るJALのOBは、「安全対策は本質的な理解と共感がなければ浸透しない。管理強化の締め付けだけでは、上司の顔色をうかがう『事なかれ主義』に陥る」と指摘しています。
赤坂氏は、かつて飲酒問題の背景に「不都合なものに目をそらす事なかれ主義の横行があった」と自ら指摘し、「われわれは変わっていく」と明言しましたが、再三の業務改善勧告で求められたのはまたしても「社内意識改革」でした。
ガラスの天井
JALの飲酒問題や組織文化の根深い課題を考える上で、命を預かる仕事だから完璧に業務を行わなければいけないというプレッシャーがあり、昇格することはお給料面だけでなく社会的評価や自己実現という課題です。
副操縦士は、「優秀で完璧なパイロット」であることが求められる職業です。特に機長から「使える副操縦士」と評価されることが昇格の鍵となるため、日常的にプレッシャーを抱えているのでプレッシャーが過剰になると、「ミスを恐れて言い出せない」という心理が生まれ、結果として問題が隠蔽される構造が生まれます。
また、機長の一部には、厳しい態度や高圧的な人がいて、副操縦士たちは「萎縮しながら働く」環境に追い込まれることがあります。このような状況では、精神的ストレスが蓄積しやすく、依存行動(アルコールや睡眠薬など)に頼る人はいます。
副操縦士にとって機長との関係は、キャリアを左右する絶対的な存在で、昇格を目指す副操縦士たちにとって密室で10時間以上すごすわけですから心は疲弊して当然で、座りっぱなしなので腰痛も多く心身ともにやられてしまいます。
昇格という目標があることや職場環境での人間関係において、個人の行動は常に監視されているので、健全な職場文化の形成を妨げている現状があります。
客室乗務員にいたっては、管理職が組合員である乗務員に強い監視体制を敷いています、組合員が抱える問題や悩みに対する理解が深まらないまま放置されていることが多く、問題を見つけても報告しないであったり、出る杭は打たれるという心理を助長しています。結果的に問題が深刻化して初めて表面化する事態を引き起こしています。
たとえば、乗務員やパイロットが飲酒や心の悩みを抱えながらも、それを相談する相手がいないために隠蔽し、さらにトラブルが拡大していくケースが多々見受けられます。直接助けを求めることが難しい環境は、見えない壁によって生じているといってもいいでしょう。
上下関係の固定化
管理職と組合員の関係は、年功序列や階級意識によって強く固定化され、管理職は自分の指示が実際に現場でどのように受け取られているかを深く検証することなく、「上から下への一方的な管理」を続けています。
一方で、組合員は管理職に対し心理的な距離を感じ、「上司に相談しても無駄」「どうせ改善されない」という諦めの感情が広がっています。大きな会社にありがちな個人の無力感は今のフジテレビと同じだといっていいでしょう。
この固定化された上下関係は、組織全体のコミュニケーション不足や不信感を助長し、問題解決の阻害要因となっています。
弊害
副操縦士にとってチェッカーである「機長に嫌われては昇格のチャンスが遠のく」という恐怖みたいな感覚があり、精神的な余裕を奪っているので「失敗を隠す」や「無理をする」といった不健全な行動につながり、飲酒や心身の不調を見過ごす原因となっています。
客室乗務員の管理職と組合員の間にある見えない壁は、管理職でさえコントロールすることはできず、はたからみると「全て順調に機能している」という認識がある一方で、現場では「実態が全く反映されていない」と感じています。
例えば、飲酒問題における再発防止策として、管理職は「アルコール検査機の導入」「検査の厳格化」といった制度的な強化を実施しました。しかし、現場の組合員たちからは「ただの監視強化であり、本質的な問題解決ではない」という声が上がり、どうやって検査をクリアすることができるかみたいな、いたちごっこが続いています。
解決策
360度評価
「360度評価」は、組織内の全方向からのフィードバックを得る評価手法であり、管理職と現場の組合員との間の溝や「いたちごっこ」を解消するために非常に有効なアプローチになり得ます。この方法を活用することで、従来の一方向的な評価(上司から部下への評価)では見逃されがちな現場の声や、相互の信頼関係の構築に必要な課題を浮き彫りにできます。
360度評価とは
1. 全方向からのフィードバック
- 上司からの評価(従来通りの視点)
- 同僚からの評価(横の視点)
- 部下からの評価(下からの視点)
- 自己評価(自己認識の確認)
複数の視点からフィードバックを得ることで、管理職と副操縦士、または副操縦士と機長の間にある「見えない壁」を可視化できます。
副操縦士が「機長からの評価に過剰に気を遣っている」という問題や、管理職が「現場の声を十分に汲み取れていない」といった課題を具体的に把握することが可能になります。
2. 公平性と透明性の向上
360度評価は、評価が特定の人(たとえば機長や管理職)の主観に依存しすぎることを防ぎ、「特定の上司に気に入られることが昇格や評価の鍵」という現場の不信感を和らげる効果が期待できます。副操縦士や客室乗務員も、昇格に向けた努力が公平に評価されるという実感を持つことができ、健全なモチベーションを維持できるでしょう。
3. 建設的な対話の促進
「言いづらい」「聞いても意味がない」といった沈黙の文化を打破する一歩となり、副操縦士が「プレッシャーを感じる」と抱えている悩みを、匿名性のある評価コメントを通じて上司に伝えられることで、職場内のコミュニケーションが改善される可能性があります。
4. 自分の課題を客観視できる
「機長に気を遣いすぎている」や、同僚からは「実際にはもっと自信を持っていい」という評価を得ることで、自分の過剰なプレッシャーや思い込みに気づき、自信を取り戻すきっかけを得られる。
360度評価を成功させるための工夫
1. 匿名性の確保
評価者が安心して率直な意見を伝えるには、評価の匿名性を徹底することが重要で、たとえば、「機長からの厳しい態度について意見を述べたい」という場合でも、匿名であれば現場の声が反映されやすくなります。
2. 評価結果を建設的に活用
360度評価は、単なる「弱点探し」ではなく、成長を促すためのフィードバックであるべきです。そのため、評価結果をもとに「どのように改善すれば良いのか」を話し合う機会を設けることが必要。
3. 定期的な実施
一度の評価で終わらせるのではなく、定期的に実施することで、評価を受ける人が自分の変化を実感できるようにします。また、組織全体の文化の変化を測る指標としても役立ちます。
360度評価のデメリット
1. 評価の主観性や偏り
360度評価では、評価者が上司、同僚、部下、顧客など複数にわたるため、それぞれの視点や立場が異なり、評価が主観的になる。
- 感情に基づく評価
- 評価基準の不統一
2. 匿名性が不十分
匿名性が徹底されていない場合、評価者が「正直にフィードバックすると悪い影響があるかもしれない」と考え、本音を避けてしまう。
- フィードバックの遠慮
- 逆に攻撃的な評価が出る場合も
3. 時間と労力がかかる
360度評価は、多くの評価者が関与するため、実施にあたり大きな時間的・労力的な負担がかかります。
- 実施と管理のコスト
- 評価後のフォロー不足
4. フィードバックがネガティブに
評価を受けた側が、フィードバックの内容を建設的に受け取らず、否定的に捉える場合があります。
- 防御的になるリスク(自己否定を助長する)
- 組織内の不和
5. 組織文化に合わない
360度評価は、日本のような上下関係を重視する文化において、馴染みにくい。
- 上下関係の圧力
- 本音を引き出しにくい
6. 評価結果が行動に繋がらないリスク
360度評価を実施しても、結果が改善につながらない場合、その効果が限定的になってしまいます。
- 評価だけで終わる
- 無力感を助長する
やっぱり無理かも
事なかれ主義
JALの経営の根深いところで機能不全が起きていると言わざるを得ないという専門家もいて、その要因の根本的な自己検証が求められています。
現場の声
パイロットや客室乗務員は、時差調整やストレスから自分を守るためにアルコールに頼らざる終えない現実があります。
これは、個人の力だけでは、もうどうにもできない状態の人もいるのです。
飲酒問題の多いJALはパイロットや客室乗務員というのは、時差調整やストレスから自分を守るために、労働環境の改善だけでなく、清廉潔白な乗務員が優秀という評価を改善し、人間らしく生きて働ける環境つくりが大事で、前日に飲んでしまった場合は、普通にそのことを相談できる環境を作ることが、必要なのではないでしょうか?
同調圧力
JALは上下関係が厳しく、威圧的な監視体制であることも要員の一つで、フラットな人間関係や、労働環境の改善を行い、十分な休息時間を確保することが大事で、オープンな職場文化を作ることで、パイロットや客室乗務員が、問題を隠さずに報告できるようになります。
そのことによってニュースに取り上げられるような企業リスクになる前に、早期発見・早期対応を可能にできます。
過密スケジュールの見直し
労働時間の短縮を図り、余裕のあるスケジュールを組むことで身体的負担を軽減できます。特に長距離便における乗務間の休憩時間を十分確保することも大事で、人員増加による負担軽減や、パイロットの不足による過剰労働を防ぐため、新規採用や訓練の効率化を進める方法もあり、予備乗員の確保を強化し、緊急時に備えた体制を構築することで安心してフライトを切る勇気が出ます。
パイロットだけでなく、すべての人間が仕事や生活におけるストレスと向き合っています。そのため、社会全体でこの問題を解決する「依存症」や「心の病気」をタブー視しない社会作りをしていきたいです。
乗務員は常日頃から時差調整や、健康管理に力を入れています。しかし、家庭の悩みや昇格へのプレッシャーなど、多くの人が持つ悩みも同じように持ち合わせています。
乗務員の努力
光の調整
乗務員は時差ボケの影響を最小限にするため、目的地の時間に合わせた光の調整を行っています。日中は明るい光を浴び、夜間はブルーライトをカットする眼鏡やアイマスクを活用し、体内時計を調整しています。
メラトニン
自然な睡眠を促進するメラトニンサプリメントを適切に使うことで、眠りやすい状態をサポートをしています
ストレス管理スキル
短時間のマインドフルネスや瞑想をして、ストレス軽減や集中力向上に努めていたり、軽い運動やストレッチで、コルチゾールの分泌を抑え、精神状態を安定しています。特にパイロットはステイ先で有酸素運動のウォーキングやランニングをしている人が多いです。
客室乗務員の多くが趣味を持っていて、ヨガや読書、推しのコンサートなど、リラックスや楽しめる趣味でアルコール依存の予防につなげています。中には、スポーツやアウトドア活動で気持ちの切り替えをしている人もいます。
依存しないために
アルコール以外のリラックス方法を見つける
認知行動療法(CBT)
ストレスや不安の対処法として、認知行動療法を活用することが有益で、アルコール以外の健全なストレス対処法を身につけられます。
テクノロジーの活用
睡眠やストレスの状態をリアルタイムでモニタリングできるデバイスを活用し、健康状態を把握したり、フライトスケジュールに合わせて、睡眠や光の調整を提案するアプリ(例:Timeshifter)を活用することで、時差ボケを軽減できます。
パイロット
「密室での孤独と終わらない緊張」パイロットの仕事は「華やか」だと思われがちですが、実際は非常に孤独で精神的に追い詰められる仕事です。
長距離国際線ともなれば、コックピット内で2人のパイロットが10時間以上にわたって密室で過ごさなければなりません。
相手のパイロットとの相性が悪ければ、ただ座っているだけでも気まずい空気に耐えなければならず、精神的な負荷は計り知れません。
また、航空業界には長年続く厳しい上下関係が存在します。
年功序列や序列意識が強く、下の立場のパイロットはミスがあれば厳しく叱責され、失敗が許されない環境にさらされています。
さらに、フライト前の準備からフライト中の操作、フライト後の報告まで緊張が途切れる瞬間がありません。
そんな中で眠れない夜が続き、心の拠り所としてアルコールに頼ってしまうことも少なくないのです。
客室乗務員
「笑顔の裏に隠された“清廉潔白”の重圧」客室乗務員(CA)は、多くの人が「綺麗で優雅な仕事」と思い込んでいますが、現実は過酷そのもので、過密スケジュール、時差ボケ、睡眠不足、体調不良を抱えながらも、常に完璧なサービスを求められます。
そして近年では、航空会社の人員不足で、1人1人に課される業務量が増えています。
さらに客室乗務員は“清廉潔白”であることを求められる職業です。
プライベートなSNSの運用も厳しく制限され、常に模範的な振る舞いをしなければならない重圧があります。
乗客からの理不尽なクレームやハラスメントにも笑顔で対応しなければならず、自分を押し殺す毎日が続きます。
「自分らしく生きられない」と感じる中、何かに依存しなければ心のバランスを保てないという職員もいます。
眠れない夜の現実
国際線のフライトでは、時差の問題もストレスをさらに増幅させます。
「今寝ないと次のフライトに支障が出る」と分かっていても、身体が眠ってくれない──そんな夜はパイロットも客室乗務員も経験しています。
現状を無理にでも打破するため、睡眠薬やアルコールの力を借りる人がいるのも事実です。しかし、依存に陥ればさらなる苦しみを生み、職場の規律に反する行動を取ることにもつながってしまいます。
トラブルの陰にある“人間らしさ”への理解を
もちろん、飲酒トラブルを擁護するつもりはありません。
しかし、これらの事件をきっかけに、航空業界が抱える深刻なストレスや過酷な労働環境にも目を向ける必要があるのではないでしょうか。
空を飛ぶ人たちがその笑顔の裏で何を抱え、どれほどのプレッシャーと向き合っているかを知ることは、社会全体で問題解決に取り組む一歩になるはずです。
「空の旅」は安全で快適なものですが、それを支える人々の現実は想像以上に厳しいものがあります。この問題に関する議論が進み、空を飛ぶ人たちが心身ともに健康で働ける環境が整うことを願っています。
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