ショーボンドホールディングス(1414)の株価チャートについて
「国策銘柄(こくさくめいがら)」として有名な企業ですが、なぜこれほど上がったり下がったりしたのか、日本の状況と絡めて解説します。
1. そもそも「ショーボンド」ってどんな会社?
一言でいうと、**「コンクリートのお医者さん」**です。
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何をしている?: 新しい橋や道路を作るのではなく、**「今ある古い橋や道路を直して、長持ちさせる(補修・補強)」**専門会社です。
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なぜ「国策」?: 日本は高度経済成長期(1960年代〜)に作ったインフラが一斉に老朽化しており、「直さないと危険」という状態です。国が予算を投じて国土を守る「国土強靭化(こくどきょうじんか)」計画のど真ん中にいるため、国策銘柄と呼ばれます。
2. 株価が大きく上がった時期(2回)とその理由
チャートを見ると、大きく2つの上昇の波があります。
① 第1の上昇期:2022年〜2023年初頭
この時期、株価は右肩上がりでした。
【日本の状況】
コロナ禍からの経済再開が本格化しつつも、世界的なインフレや戦争(ウクライナ情勢)で先行きが不安な時期でした。投資家は「不景気でも潰れない、安定した会社」を探していました。
【上がった5つの理由】
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安定感への評価: 景気が悪くても「橋の修理」はなくなりません。不況に強い銘柄(ディフェンシブ株)として買われました。
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連続増配の安心感: 「毎年配当金を増やします(増配)」という株主への還元姿勢が評価されました。
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国土強靭化予算: 国の補正予算などで、防災・減災のための工事予算がしっかりついたことが追い風でした。
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値上げへの対応: 原材料費が上がりましたが、ショーボンドは高い技術力があるため、価格転嫁(値上げ)をスムーズに進められました。
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高速道路のリニューアル: NEXCOなどの高速道路会社が、老朽化した道路の大規模更新工事を本格化させていました。
② 第2の上昇期:2023年後半〜2024年前半
ここで株価は最高値を更新し、ピークをつけました。
【日本の状況】
日経平均株価がバブル後の最高値を更新し、史上最高値(4万円台)を目指す「日本株ブーム」が起きました。海外投資家(ウォーレン・バフェット氏など)が日本株を買いまくった時期です。
【上がった5つの理由】
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日本株全体のお祭り: 「日本株ならなんでも上がる」という相場全体の勢いに乗りました。
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過去最高益の更新: 長年の利益成長が続き、「稼ぐ力」が改めて評価されました。
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2024年問題への期待: 建設業界の人手不足(2024年問題)が叫ばれましたが、「補修専門で効率が良いショーボンドなら勝ち残れる」と見られました。
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新NISAへの期待: 高配当で安定しているため、新NISA開始(2024年〜)に向けて個人投資家の人気が集まりました。
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能登半島地震の影響: 2024年1月の地震により、「インフラを直さなければならない」という意識が再燃し、注目が集まりました。
3. その後、大きく下がった時期(2024年中盤〜2025年)
2024年の半ばから、坂を転がり落ちるように下がっています。
【下がった5つの理由】
ここが一番のポイントです。実は**「仕事はあるのに、お金(予算)が足りない」**という事態が起きました。
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高速道路会社の予算不足(決定的理由): 資材費や人件費が高騰しすぎて、発注元(NEXCOなど)の予算が足りなくなりました。「工事はしたいけど、お金が足りないから発注を控える」という事態になり、仕事が先送りされました。
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証券会社の評価下げ: 上記の理由から、大手証券会社(野村證券など)が「思ったより儲からないかもしれない」と、投資判断や目標株価を引き下げました。これが売りを呼びました。
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利益確定の売り: ずっと上がっていたので、「今のうちに利益を出しておこう」という売りが殺到しました。
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セクターローテーション: 投資家の関心が、安定的な建設株から、AIや半導体などの「急成長ハイテク株」へ移ってしまいました。
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成長の踊り場感: 「毎年最高益」を続けてきましたが、さすがに成長スピードが鈍化するのではないか?という懸念が出始めました。
ショーボンドは、**「日本の橋や道路を守るお医者さん」**として、仕事がなくなる可能性はありません。
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上がるとき: 「不景気でも安心」「国の予算がついた」とき。
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下がるとき: 「工事費が高すぎて発注が止まった」「他の派手な株に人気が移った」とき。人手不足で工事ができない時→「人手不足」は建設業界全体、そしてショーボンドにとっても**「見えない天井(成長の限界)」**として強く意識されており、株価が下がる(あるいは上がらない)大きな要因の一つです。
1. 「せっかくの仕事を断る」ことになる(機会損失)
これが一番痛いです。
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状況: 国から「橋を直してくれ」と依頼がきても、「現場監督も職人も足りないので無理です」と断らざるを得なくなります。
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株価への影響: 投資家は「仕事があるのに稼げないなんてもったいない!」と失望します。これを**「受注制限(じゅちゅうせいげん)」**と呼び、会社の成長ストップ要因として嫌気されます。
2. 「給料を上げないと人が来ない」(利益の減少)
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状況: 人を取り合うため、職人さんの給料や、下請け会社へ払うお金(労務費)が高騰します。
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株価への影響: 売上は同じでも、経費(人件費)が増えるので、手元に残る利益が減ってしまいます。「忙しいのに儲かっていない(利益率の低下)」という決算が出ると、株価は大きく下がります。
3. 「工事が遅れる」(売上の先送り)
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状況: 10人でやるはずの工事を7人でやることになり、工期が伸びます。
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株価への影響: 企業の売上は「工事が終わったとき(あるいは進捗ごと)」に計上されることが多いです。工事が遅れると、その年の売上が目標に届かず、「下方修正(かほうしゅうせい)」を発表することになり、株価急落の原因になります。
特にショーボンド(建設業)特有の事情:2024年問題
チャートの「第2の上昇期」の終わり頃(2024年前半)に、建設業界では**「2024年問題」**が大きく騒がれました。
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何が起きた?: 法律で「残業規制」が厳しくなり、職人さんが長時間働けなくなりました。
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結果: 1人あたりの働ける時間が減ったため、ただでさえ足りない人手がさらに不足しました。
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ショーボンドの場合: ショーボンドは自社で工事をするだけでなく、多くの協力会社(下請け)を使っています。「協力会社の職人が確保できないから工事が進まない」という連鎖的な人手不足リスクを、投資家は常に警戒しています。
先ほどの「下がるとき」のリストに加えるなら、こうなります。
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工事費が高すぎて発注が止まった(客の財布の事情)
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他の派手な株に人気が移った(投資家の気分の事情)
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★人手不足で仕事を断らざるを得なくなった(会社の供給能力の限界)
「仕事はある(需要はある)」のに「人がいない(供給できない)」というジレンマは、この銘柄を分析する上で非常に重要なポイントです
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チャートの右端(2026年初頭)でまた少し上がってきているのは、「悪材料(予算不足の話など)は出し尽くした」として、安くなった株が見直され始めている可能性があります。
長期的に見れば「日本のインフラ老朽化」は解決していないので、重要な役割を持ち続ける企業であることに変わりはありません。
工事の残量・期間と、ショーボンドの強み
「直した端から次の場所が老朽化していく」ため、**「仕事が減るどころか、これからが本番(ピーク)」**という状態です。
1. あとどれくらいの工事が残っているか?(国の状況)
結論から言うと、日本のインフラ補修は**「これから30年以上(2050年頃まで)は繁忙期が続く」**と見られています。
具体的な数字と年数
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「50歳以上」の橋が爆発的に増える:
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現在(2023年頃):約 40% の橋が建設後50年経過。
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10年後(2033年):約 65% に急増します。
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つまり、「直さなきゃいけない橋」は、今よりも10年後の方が圧倒的に多いのです。
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高速道路リニューアルプロジェクト(NEXCOなど):
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現在、NEXCO各社が進めている大規模更新・修繕計画は、2040年(令和22年)頃まで続く超長期プロジェクトです。
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さらに、一度直してもまた劣化するため、実質的には**「半永久的」**に続きます。
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地方自治体の現状:
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高速道路はまだマシですが、市町村が管理する橋やトンネルは**「点検すら追いついていない」**場所が多く、修繕に着手できているのは全体の数割程度と言われています。ここがまさに「9割残っている」という感覚に近い部分です。
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工事の需要は「残りカス」ではなく、**「これから巨大な津波が来る」**段階です。少なくとも向こう20〜30年もしかしたらもっと「仕事がなくて困る」ことはありません。
2. ショーボンドの商流による強み(なぜ儲かるのか?)
ショーボンドが他の建設会社と決定的に違うのは、**「自分で材料を作って、自分で手術工事する」という点です。これを専門用語で「製販工(せいはんこう)一体」**と呼びます。
これを「一般的な建設会社」と比較すると、その凄さがわかります。
【一般的な建設会社の流れ】(マージンが取られる)
材料メーカーから材料を仕入れるため、そこで利益が抜かれます。
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メーカー(材料を作る)→ ここで利益A発生
↓(仕入れ)
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商社・問屋(材料を運ぶ)→ ここでマージンB発生
↓(仕入れ)
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建設会社(工事をする)→ ここで利益C発生
※ 建設会社に残るのは「利益C」だけです。
【ショーボンドの流れ】(全部自分の利益!)
グループ会社で材料を作っているので、他社にお金を払う必要がありません。
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ショーボンド化学(自社工場で材料を作る)→ 利益Aも自分のもの!
↓(社内移動のようなもの)
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ショーボンド建設(自社の材料で工事する)→ 利益Cも自分のもの!
※ 「商社や問屋のマージンB」が不要になり、**「メーカーの利益A」と「工事の利益C」の両方(ダブルインカム)**を得られます。
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利益率が高い:
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普通の建設会社は、売上の数%が利益なら良い方ですが、ショーボンドは利益率が非常に高い(営業利益率が15〜20%近くある怪物企業)です。これは「中抜き」がないからです。
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工事の品質が高い(失敗が少ない):
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「この接着剤は、気温20度ならこう使う」というクセを、作った本人たちが一番よく知っています。だから、他社の材料を使うよりも手戻り(やり直し)が少なく、効率よく工事ができます。
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価格競争に勝てる:
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いざという時、自社で材料を作っているので、他社より安く入札しても利益が出せます。「安く受注しても、材料費が原価(身内価格)だから痛くない」のです。
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ショーボンドは、**「これから30年以上増え続ける工事需要」に対して、「材料から工事まで全部自分でやって利益を総取りする仕組み」**を持っているため、投資家から非常に高く評価されているのです。
「人手不足」さえ解決(またはDXでカバー)できれば、最強の銘柄の一つと言えるでしょう。
ショーボンドが直面している「人手不足」という壁への対応
補修工事は「新築」と違って、現場ごとに劣化の仕方が違うため、**完全な自動化が非常に難しい(職人の目と腕が必要)という特徴があります。それでも、ショーボンドは泥臭く、しかし確実に「3つの武器」**で対抗しています。
初心者の方にもイメージしやすいよう、**「ロボット」「プレハブ化」「育成」**の3点に絞って解説します。
1. 【ロボット化】水圧でコンクリートを削る(WJ工法)
これがショーボンドの「虎の子」の技術です。
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昔のやり方: 職人さんが重い振動ドリル(ブレーカー)を持って、ガガガガと手作業で悪いコンクリートを削り取っていました。これは重労働で、体への負担が大きく、なり手が減っています。
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今の対策(WJ工法): **「ウォータージェット(WJ)」**という、ものすごい水圧でコンクリートを削り取るロボットを使います。
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メリット:
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少人数で済む: ロボット操作なら女性や高齢の職人でも活躍できます。
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早い: 手作業より圧倒的に早いです。
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静か:騒音が少なく、街中での工事に向いています。
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2. 【プレハブ化】現場で作らず、工場で作って持っていく(プレキャスト化)
これが一番効果が高いと言われている「省人化」の切り札です。
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昔のやり方(現場打ち): 現場で型枠を組み、ドロドロのコンクリートを流し込み、固まるまで数日待つ…という工程でした。これには多くの熟練工が必要です。
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今の対策(プレキャスト): 自社の工場であらかじめ**「コンクリートのブロック(製品)」**を作っておきます。現場では、それをプラモデルやレゴのように「くっつけるだけ」にします。
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メリット:
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現場の人数が激減: 「貼るだけ」なので、熟練工が何人も張り付く必要がありません。
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工期短縮: 「乾くのを待つ」時間がゼロになります。
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品質安定: 工場で作るので、雨の日でも高品質なものが作れます。
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ショーボンドは「材料メーカー」でもあるので、この**「現場ですぐ使えるブロック」を自社開発できるのが強み**です。
3. 【育成のDX】「10年かかる修行」を「3年」に短縮する
人手が足りないなら、育てるスピードを上げようという発想です。
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課題: 補修工事は「どこが悪いかを見抜く目」が必要で、一人前になるのに10年はかかると言われていました。
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対策: 茨城県つくば市に**「ショーボンド・テック・センター(通称:みらい技術館)」**という巨大な研修施設を作りました。
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内容:
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実物大の橋やトンネルの模型があり、失敗してもいい環境でガンガン練習させます。
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ベテランのノウハウを動画やマニュアル(DX)にして、タブレットで見られるようにしました。
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効果: これにより、若手社員や協力会社の職人が、短期間で即戦力になれる仕組みを作っています。
ショーボンドは、単に「人がいないから困った」ではなく、**「人がいなくても回る仕組み(ロボット・プレキャスト)」と「人を急速に育てる仕組み(研修施設)」**の両輪で戦っています。
特に**「2. プレキャスト化(工場で作って持っていく)」の比率が高まれば高まるほど、利益率はさらに良くなり、人手不足の影響を受けにくくなります。 決算説明資料などで「プレキャスト製品の売上が伸びているか?」**をチェックするのが、この銘柄の将来性を占うポイントになります。
竹本容器の「金型(かながた)」と同じ仕組み
ショーボンドにも竹本容器の金型と全く同じ**「一度頼むと、他社に乗り換えられない(ロックイン効果)」という強力な仕組みがあります。これを専門用語で「スイッチング・コスト(切り替えコスト)が高い」**と言います。
竹本容器の金型と比較しながら、なぜショーボンドが「ずっと選ばれ続けるのか」を解説します。
【比較】竹本容器 vs ショーボンド
| 竹本容器(プラスチック容器) | ショーボンド(橋の補修) | |
| ロックインの正体 | 「金型(かながた)」 | 「補修履歴(カルテ)」と「化学の相性」 |
| 仕組み |
客がお金を出して金型を作る。
その金型は竹本容器に保管される。 |
橋の「内部データ」と「使った接着剤」の情報。
これはショーボンドしか詳細を知らない。 |
| 他社に変えると? |
金型を作り直すのに数百万かかる。
(=お金と時間のムダ) |
違う薬剤を使うと剥がれるリスクがある。
責任の所在が不明になる。 |
| 結果 | 面倒だから竹本に発注し続ける。 | 怖いからショーボンドに発注し続ける。 |
ショーボンドの「見えない金型」3つの正体
ショーボンドの場合、金型のように目に見える物体ではありませんが、以下の3つの理由が**「見えない金型」**として機能し、客(国や自治体)を縛り付けます。
1. 「化学反応(相性)」の罠(わな)
これが一番強力な理由です。
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竹本容器なら: 金型が合わないと容器が作れません。
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ショーボンドなら: 「前の補修材」と「新しい補修材」が喧嘩(化学反応)します。
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ショーボンドは自社製の特殊な樹脂(接着剤のようなもの)を使います。
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もし数年後、他社が来て違う成分の樹脂を上から塗ると、化学反応で泡が出たり、接着不良で剥がれ落ちたりする「大事故」のリスクがあります。
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発注側(役所)は**「前回ショーボンドのAという薬を使ったなら、今回もショーボンドのA(またはAと相性の良いB)を使うのが一番安全だ」**と考えます。
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2. 「医療カルテ」の独占
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竹本容器なら: 金型を預かっているのが強みです。
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ショーボンドなら: 「橋のレントゲン写真」を持っているのが強みです。
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補修工事は、コンクリートの内部(鉄筋のサビ具合など)がどうなっているか、開けてみないとわかりません。
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一度工事をしたショーボンドは、「あそこの橋の3本目の柱の内部は、実はこういう癖がある」という詳細なデータ(カルテ)を持っています。
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役所の担当者は2〜3年で異動していなくなりますが、ショーボンドにはデータが残ります。**「あの橋のことなら、役所よりショーボンドの方が詳しい」**状態になるため、次も頼らざるを得ません。
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3. 「責任のなすりつけ合い」の回避
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竹本容器なら: 他社で作って不良品が出たら困ります。
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ショーボンドなら: 橋が崩れたら誰のせい?
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もし1回目の工事をショーボンド、2回目をA社がやって、その後にコンクリートが剥落(はくらく)したとします。
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ショーボンドは「A社の施工が悪い」と言い、A社は「ショーボンドの下地が悪い」と言います。
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役所はこのトラブルを一番恐れます。「ずっとショーボンドに任せておけば、何かあったら全部ショーボンドの責任にできる(保証が続く)」という心理が働き、浮気されにくくなります。
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竹本容器が**「金型代(初期投資)」を人質に取ってリピートさせるように、 ショーボンドは「安全性と責任(リスク)」**を人質に取ってリピートさせています。
特にインフラは「失敗したら人が死ぬかもしれない」分野なので、化粧品のボトル以上に**「安さより、いつもの安心(=ショーボンド)」**を選ぶ力学が強く働きます。これが、ショーボンドの利益率が建設業なのに異様に高い、隠された秘密です。
■これから投資を始める方は、この2つを開設しておけば安心です。
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