巨食症の明けない夜明け

巨食症の明けない夜明けダイエット
ダイエットしたくても
 
食欲に負けて食べてしまうことはありませんか?
 
なぜなら
 
太る理由は食べる量が多いからです
 
実は、この単純な考え方が原因で
 
摂食障害という恐ろしい病に
 
陥る人が年々増えているのです
 

摂食障害とは

食行動によって生活に問題が生じてくる病気です

食欲や食行動の異常

体重に対する過剰なこだわり

自己評価に対する体重・体形の過剰な影響は

心理的要素が根底にあり

完治が困難な上

致死率が10%と高く

大きな社会問題となっています

今回ご紹介する

「巨食症の明けない夜明け」は

食べても食べても満たされない
 
胃袋と心に絶望して
 
泣きながら過食や過食嘔吐を繰り返す主人公
 
時子の絶望を
 
フロイトや太宰治の思想を
 
交えながら紹介された本です
 
結論として
 
軽い気持ちで始めたダイエットであっても
 
摂食障害を発症してしまうと
 
頭の中が食べることと、痩せることで混乱し
 
死ぬまでその気持ちと戦い続けなければなりません
 
 
この本を読むと
 
普通に生きることの難しさ
 
を知ることができます

 

 
 

「巨食症の明けない夜明け」著者 松本侑子

第11回すばる文学賞受賞作・発行者 若葉正・発行所 集英社

主人公時子

摂食障害~当事者の苦しみと回復への鍵~ - 記事 | NHK ハートネット

出典:NHK福祉情報サイト ハートネット   

外出先から帰宅した大学生の時子は

何はさせおき

オーバーコートもマフラーもそのままに

買ってきた食べ物を

むさぼり始めるのです

 

2020年10月版】近所のコンビニ3社で売られていたサンドイッチを ...

出典:ロケットニュース24

サンドイッチのビニール袋を

引きちぎってかぶりつき

飲み込みながらも

手はシュークリームの入った箱を開け

2つ目のサンドウィッチが食べ終わらないうちに

シュークリームを口に詰め込むのです

 

西内花月堂 和三盆シュークリーム: 箱入り嫁の小さな幸せ

出典:@niftyココログ 

カスタードクリームは

口からはみ出て、頬につき

粉砂糖がコートにこぼれ落ちても構わず

次から次へとシュークリームを

口の中に詰め込んでいくのです

冷蔵庫を開けて

 

1ℓの牛乳を容器ごと口に当てて流し込むと

牛乳が顎から喉を伝って胸元を流れていきます

わけもわからず食べ続け

意味もなくつけたテレビを見つめながら

プリン3個を噛まずに喉に飲み込み

手は、床の上の握りずしの包みを

荒々しく剥がすのです

 

寿司折・すし折・押し寿司木箱の製造販売【上古代折箱店】

出典:上古代折箱店

寿司折りが床に叩きつけられ

米粒がパラパラと広がり

白い幼虫のようなそれを

両手でかき集め

床にはいつくばって

口に押し込むと

一体何のためにこんな愚行をくりかえしてるのか

自己嫌悪に苦しみ

涙をこぼしながら食べ続けるのです

 

口に入れられるものなら

何でもいいのです

食パンをインスタントコーヒーで流し込み

ミカン3個を飲み込んで

大福が5個入りの1パックを食べて

カップラーメンとおにぎり2つ

 

カップ麺・おにぎり♡|めんへら♡食♡恋愛依存|みーしゃん。の ...

出典:Decolog

チョコレート1枚とロールケーキ1本

足りなければ

ピーナッツバターでもケチャップでも

何でも構わないのです

何かを口に入れている時だけ、頭の中が空白になるのです

そして、過食の後、喉に指を入れて吐く

 

時子は常に

何かに追い立てられるように大量に食べ

罪悪感で嘔吐を繰り返すことで

自己否定をさらに増長させていきます

常に胃袋も心も満たされることがない時子は

1人暮らしで21才の大学生

毎日、冷蔵庫の前に座りこみ

 

食べても食べても満たされない胃袋と心に

絶望して

泣きながら過食嘔吐を繰り返すのです

フロイトの口唇性格

フロイト

  1. 食べること
  2. タバコを吸うこと
  3. 話すこと

1~3の行為は

人間の発達の最初の段階

「口唇段階」

で発達が止まった人

つまり固着した人は

口での感覚に快感を持ち

赤ん坊が幼児期に持っている

他人に助力と注目を求める

依存的な性格なのである

(参照:ラッシュル・ベイカー著 宮城音休弥訳「フロイト その思想と生涯」より)

赤ん坊の快感

主に口を中心として感じられ

その快感は食物をとる手や親指を吸うことや

接触したものを口で吸うことによって与えられる

  • 子供は一種の盲目口唇でしかない 
  • 口の感覚が重要である
  • 赤ん坊は、他人に頼って生きている
  • 自分自身でできることがない 

フロイトは

発達がこの段階で止まった人

つまり固執した人を

「口唇性格」

とよんでいます

他人に助力や注目を求める依存的な性格である

と分析しています

 

時子の場合は
 
食べて胃が破裂して
 
穴が開くほど食べるという
 
破壊的な感覚は
 
自分に向けられたものであり
 
何か見えないものに対する
 
不安や焦燥感に向けられていて
 
それは
 
見えない不安や
 
どうしようもない自分自身に
 
食らいつきかみ砕いている
 
と筆者は説明してます
 

 

太宰治「人間失格」

太宰治


自分は空腹といふことを知りませんでした

いや、それは自分が衣食住に困らない家に育つたといふ意味ではなく、そんな馬鹿な意味ではなく、自分には「空腹」といふ感覚はどんなものだか、さっぱりわからなかつたのです

時子は

太宰治の言葉を知って

自分が

「いくらこんな私であっても、生まれてから

一度も、満腹を感じなかったわけではない」

と思うのです

食べ物以外に

詰め込みたい事柄がたくさんあった子供の頃

そして

謎は必ず解き明かされ

願いは必ずかなえられると

信じていた頃は

満腹を知っていたと思います

肉体的感覚は

過ぎてしまえば忘れるけれど

後に残っているのは

満腹を感じていたという事実の記憶だけで

それがどんな感覚だったか

今はもう思い出せないのです

時子にあるのは

いくら詰め込んでも満たされない

どうしようもない空腹感と空っぽの胃なのです

そして時子は

空っぽの胃は

つまり空っぽの子宮であって

それは満たされない膣ではないかと

思い始めます

時子は1人で一日中

家にこもっていると

不安でたまらず

夜はアルコールに依存するようになります

缶ビール半ダースと焼き鳥30本用意して

焼き鳥をビールで胃に流し込むのです

胃の許容量を超えると

白眼をむくような圧迫感が襲い

苦痛でうめき

立ち上がれないお腹をかかえても

満たされないのは

胃でなく

子宮であり

膣なのではないか

と思うのです

外面よく上品ぶる時子にとって

「満たされない膣が胃袋と繋がっている」

と思うことは

理性に反する

いかがわしい器官の存在を

否定しているのと同じことなのです

 

  • 内罰的
  • デブ
  • 意志薄弱
  • 臆病
  • 卑怯
  • 人間の屑

 

と自分を責める自分によって

自分を徹底的に追い詰めるのは

もうこれ以上、

人から追い詰められることがないよう

自分を守るための行為と

筆者は説明しています

フロイトと太宰治を引用して

時子は自分におきかえて

考え苦悩します

 

自分は満腹ということを知りませんでした

 

そして時子は

胃と子宮を満たされないもののイメージとして

繋げて言います

 
「私は、生まれたくなかったのです」

 

母親や恋人や友達に

助けを求めながらも

遠ざけて苦しみ

空虚な時代を疾走する様子は

痛々しくもあり切ない存在です

 

痩せ願望

現代は「美しさの多様性」

が建前としてあるにもかかわらず

現実的には

「女性の体形はスリムであるほうがいい」

という価値観に縛られている状況は

まったく変わっていません

 

痩せている言葉の印象

華奢・可憐・しなやか・端麗・清楚・知的・鋭敏・都会的・洗練
 
病的・神経質・悲劇的・骸骨・美化された死・憂い・ヒステリック

 

太っている言葉の印象

豊かさ・母性・優しさ・成熟・肉体美・セックスシンボル・色気・妖艶・官能・豊満
 
怠惰・鈍感・無気力・不器用・精神の弛緩・不健康・醜悪貫禄

時子の痩せ願望

「女は、男の願望に簡単に左右されてしまう愚かなもの」

男たちが作った女性美に

無意識に洗脳されている

女はまるで男の意のままの風船

男がふくよかな女性を賛美する時代には

膨らみ

痩せ女をたたえる時代には

やせ細り

という友人からの批判に

時子は

「痩せすぎ」と言われても

誰が何と言おうとこれが

私の求める私

「私は自分の理想像に従う」

と言って

痩せることを続けるのです

これを

「時子の非現実的反社会的永遠の少女願望」

と説明し

友人を

アンチシンデレラコンプレックス

つまり自立して自我を確立しなければならない

という強迫観念に縛られ身動きできない人

と説明しているのです

 

食べること以外

何もすることができない時子は

大学に行くことも

外を歩くことも

カウンセリングに行くことも

億劫で無意味で恐ろしいと感じ

体重の増加に恐れながら

40㎏から60㎏を繰り返します

熱心に体重計に乗ることは

一日に何度も行う儀式になり

体重が少しでも減るように

身体をそらせて載ってみたり

つま先立ちで乗ってみたり

少ない数値を期待して毎日乗り続けるのです

 

食べるということ

健気でひたむきで

身体が求める真剣な食欲

食でも性でも睡眠でも

本能には、ややもすれば卑しい印象だけれど

決して恥ずべき行為ではないのに

生命の存続にとって必要だからこそ

本能なのに快楽を伴うとなると

途端に卑しくなる

だから時子は食に溺れる自分を卑しいと

嫌悪しているのです

1人で一日中家にこもっていると

アコルールなしではやりきれない

眠れない不安でたまらなくて

情けない気持ちで

「助けて、誰か助けて、お母さん」

と思いながら食べ物を探し続けるのです

家中の食べ物を食べつくし

冷蔵庫には

味噌・ケチャップ・マスタードなど

調味料しかないとわかると

流し台の下を開け

干し椎茸を口に入れるほど

心は飢えているのです

粉っぽいかび臭いにおいが

鼻へ抜けて慌てて吐き出してしまうのです

アルコールが足りず

みりんを全部飲み干し

口が曲がりそうに甘くて

慌てて

「吐かなくては!早く出さなくては!」

と急いでトイレで嘔吐するのです

 

太ってしまう恐怖で

無我夢中で嘔吐を繰り返すのです

「おー、うぉー」とうなりながら出した後は

下剤を飲むのです

1回2錠の下剤を4錠飲むと

いつも6時間から8時間後に

猛烈な下痢がやってくるのです

時子はこれを「嬉しいゲーム」と言い

自分の体をコントロールできる

喜びに満ち溢れるのです

食べ物を買う時は

羞恥心のせいで

お菓子やカップヌードルなどのインスタント食品を

同じ場所では買わず

日替わりで場所を変えるなど

1人で工夫をしているのです

 

これを

「一人芝居を演じる道化役者である」

と解説の川西政明氏は書いています

コンビニから帰ると

手を洗うのもそこそこに

乱暴に袋を破り

一口かみしめると

自分の存在意義を感じ

気持ちが落ち着くのです

40分後には

空き袋を目の前に何もすることがなくなり

手持無沙汰の自分を持て余すのです

 

これも同じく

「一人芝居を演じる道化役者である」

と言えるのだと思うのです

 

母親との関係

時子は常に

「母に愛されなかった自分は誰からも愛されないのではないだろうか」

という臆病な恐れを持っています

だから

恋人から「君は母親を憎んでる」

と指摘され心が痙攣するのです

 

時子は

母親の体の中で生命を得て

40週間体内で育まれ

膣を通って生まれてきたのだと考えます

そして

28日で子宮内膜は流れ

月の満ち欠け、潮の満ち引きと同じように

優しく絶対のリズムで繰り返されるのです

母親を求める気持ちは

子供の時よりも大人になった方がより強く

時子は、母に甘えたいと思うのです

「お母さんに会いたい、会いたい」と

手紙を書くのです

2人は会うのですが

結局

言い合いをして

喧嘩別れになってしまうのです

母親が、去って行く後ろ姿を見て

「待って、待って、待ってよ、お母さん、

待って、お願い、いかないで、私を置いていかないで」

声にならない言葉を繰り返すのです

そして母親がいなくなった後

過食の準備をするために

財布をポケットに入れ

コンビニへ向かうのです

 

孤独な魂が精一杯

弦を張っているような存在の時子

生命に支障がない程度に悲惨なのが

摂食障害なのです

やけ食いによって体重とともに

気持ちも重くして

キッチンの冷蔵庫の側の空間が

時子の安心して生きられる居住空間なのです

 

「その空間で現代人は、一人芝居を演じる道化役者であり

この認識がこの作品の脊髄である」と

解説の川西政明氏は書いています

道化役者であると自覚しつつ

一度はそういう自分を

破壊せずにはいられない

その空間の回路を通過しなくては

夜明けは来ないのである

空虚な時代の悲惨と栄光の中を疾走する女性を対象化する作品

 

解説 川西政明

最後に私が感じたこと

巨食症の明けない夜明け

この本は

リアルな摂食障害の世界を

知ることができる一冊となっています

摂食障害の生き辛さは

経験者にしかわかりません

 

筆者が

多くの摂食障害者を取材した結果

生まれた主人公の時子は

過食症、過食嘔吐症、拒食症を発症し

何回読んでもつらく悲しい気持ちになる本です

 

摂食障害は

完治することはありません

平均体重になって

周りはもう大丈夫と思っていても

本人の脳裏に刻まれた痩せたいという

強い執着は重い十字架となって

一生涯、背負い続けるのです

寛解を目指して再発を繰り返しながら

その生涯を終えるのです

 

第11回すばる文学賞受賞作

著者 松本侑子  発行者 若葉正  発行所 集英社 

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参照:「巨食症の明けない夜明け」松本侑

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